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「やっと見つけたわ。こんなところに潜んでいたなんて」


「エンジェル?」


六年ぶりだろうか。あの時オーロラの出奔を手助けしてくれたのは妹である彼女だ。

夜の闇に紛れて王宮を出たオーロラに粗末な馬車と護衛騎士をひとり用意しておいてくれたのだ。


「おかあさま?」


隣でおびえたようにスカートのすそをつかんだ、まだ五歳の息子のイヴァンをあわてて抱き寄せる。


「まぁ。そんな子どもを産んでいたの?いったい誰の子なの?」


妹のエンジェルとはあの後一度も連絡をとらなかった。

出奔する前に最後に会ったきりだ。

あの時は、いつもみたいな優しい顔だった。だが、今はどうだろう?まるで般若の顔だ。


「逃げる時にわかりやすいように南に向かうよう手配してやったのに北にいたとは。見つかるはずないわね。結局六年もかかっちゃったじゃないの。あの護衛騎士め」


あの時一緒に来てくれた護衛騎士が北に逃げるように言ったのだ。

だから昔母と住んでいたこの地に息を潜めて暮らしていたのだが……。


エンジェルが実は自分の味方じゃなく、敵だったというのは今このやりとりでだんだんわかってきた。

仲のいい妹だと思っていた。

自分と同じ境遇の理解者だと。

六年間、彼女は元気だろうかと考えながら慎ましい生活をしていたというのに……。


それにしても今になってエンジェルは何しにここに来たのだろう?


「ああ、怖い怖い。赤髪とその金色の瞳がわたしと同じだってことに反吐がでるわ。なんせ闇魔術の使い手だもの」


闇魔術という言葉がぐさりと胸につきささる。

そうだ。

自分はこの世界で最も忌まれる闇の魔術を操ることができる。

闇の魔術とはなんでも殺せる魔術のことだ。

そのことがわかったせいでソードノーズ王国の公爵である父はオーロラを殺さんばかりに怒った。

だが、オーロラは闇魔術の使い手だ。下手をしたら自分の方が殺される。

だから手を出せずにいたのだ。

それでもしきりに王太子妃を辞退するように圧力をかけてきていた。


「お父様も嘆かれていたわ。公爵家の象徴である赤髪とゴールドの瞳が汚されたってね」


父にはまったく思いはない。だが、父から同じくらいひどい扱いを受けていたエンジェルとは何度もお互い涙を流しながら慰め合った。同志だと思っていた。仲のいい姉妹だと思っていた。

だがそれはすべて間違いだったと今わかった。


「まぁでもいいわ。結局見つかったのだし。ほんとは王宮まで連れて行ってダノン広場の大観衆の前で処刑してやりたかったんだけど抵抗されたら怖いからここでやっちゃいましょうか」


「処刑?」


思わず声が出た。

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