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「ええ。来られているけれど……」
「なんだい?内緒で連れて来たのかい?」
「だって。本当に苦しそうだったし、先生なら治してくれるかなと思ったから……お母様のパンを食べにこないかってお誘いしたの」
しゅんとして言うと、「ふう」とマーガレットはため息をついた。
「わかったよ。わたしがちゃんと話すから。こちらに呼んでくれるかい?オーロラ」
「はい」
マーガレットがなんとかうまく説明してくれることを願って、オーロラは奥様を呼びにいった。
静かな店舗の奥の小さなリビングでふたりの笑い声が聞こえてきてほっとする。
「まぁオーロラ。このクロワッサン絶品ね。すごくおいしいくってわたしも元気になったわ」
奥様も心なしかいつもより血色がいい気がする。
「奥様。ジル様のことで……こちらに来ていただけませんか?」
「え?」
「どうしたんだい?オーロラ」
「お母様も一緒に」
不思議そうな顔をしている奥様は侍女をひとりと護衛騎士をひとり連れて来ている。
当然の如く奥様に着いていくこのふたりを見てオーロラはふと思った。
この侍女と護衛騎士は信用できるのだろうか?
もしこのふたりのうちどちらかが毒を盛っているとしたら……。
考えたオーロラは部屋に入る直前になって突然その侍女の前に倒れこんだ。
「わー」
「きゃっ」
侍女が慌てて退く。
「ごめんなさい。おばさん。スカートがやぶけちゃった」
さきほど部屋を出るときにそこにあったフォークを手に取り、倒れるときに思い切りスカートに刺しこんだのだ。
「ま、まぁ大変」
自分のスカートが破けた侍女は大慌てだ。下につけている下着が丸見えになってしまっているのだから。
「マ、マリ殿!大変です」
「きゃ、きゃー」
部屋の外は大わらわ。
そのうちに先生はちゃんと説明をしてくれているはずだ。
このふたりが万が一悪者だったとしても聞くことはないはず。
「おばさん。こっち来て。すぐに直せばなんとかなるわ。ほら、騎士さん手伝って!」
「お、おばさん?」
「ええ、ちがうの?」
顔を真っ赤にして怒っている。ちょうどいい」
「こっちこっち」
元の部屋まで戻り、手の届かないところにある裁縫道具を騎士に手伝ってもらってとってもらい、オーロラは侍女に自分で縫うよう言ったのだが……。
侍女はあまりに下手くそで、オーロラはため息をはくと仕方なく糸と針を奪い取り、器用に侍女のスカートを縫い付けた。
「あら、あなたうまいわね」
前世では何でもやった。
服もろくに買えなかったからこうやってよく手直ししたものだ。
「ええ。おばさん、こんなこともできないのに侍女やってるの?」
「は、はぁ?なんなのよ、この子」
「まぁまぁ、マリさん」
護衛騎士に慰められている。
そんなドタバタ劇を演じている間にどうやら向こうの部屋では話が終わったらしい。
ジルと奥様、そして母のベラが出て来た。




