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そうだ。ミシェルのお母さん!


オーロラはジルのほうへ向き直った。


「ジル様がクロワッサンを食べたらこんなに元気になられるのなら、今度うちに来られませんか?」


「え?」


「うちに来たらもっといっぱい焼きたてのパンがありますよ。焼きたてはもっとふかふかでジューシーなんです」


何とかこの男の子を元気にしてあげたい。

前世で母を亡くし悲しんでいたこの男の子がその後どうなったのかは知らないけれど、きっとあの状態じゃ早世しているに違いない。

けれど、今ここで服毒していると知ったのも何かの縁だ。

どうにかして解毒してあげて元気にしてあげたい。


ジルの目が輝き始めた。


「母上、食べたい」


「ジル?」


「奥様もぜひ食べてみてください。クロワッサン以外にもいっぱいあるんです」


「わぁ…行きたいよ。母上」


「そ、そうね……」


その時部屋の扉がノックされ、「失礼します」と侍女が入室してきた。


「奥様。ご令嬢の母君がいらっしゃいました」


「そう。お通ししなさい」


「かしこまりました」


それからしばらくして母のベラが血相を変えて入室してきた。


「も、申し訳ございません。オーロラがご迷惑を……」


オーロラが起き上がっているのを見て、ほっと安堵の表情を見せながらも貴族のお屋敷だとわかっているのか、かなり低姿勢だ。

その場に跪き、頭を垂れている。

平民が貴族に太刀打ちできるわけはない。

迷惑をかけたせいで何をされるかわかったものではないのだから。


「お母様!」


「オーロラ……」


「ご婦人。ご迷惑をかけたのはこちらなのよ。顔をあげてちょうだい」


「いえ、ですが……」


「いいのよ。今オーロラ嬢にそちらのお店にお誘いいただいていたの。お伺いしてもいいかしら?」


「え?お店……ですか?」


母は驚き顔を上げた。


「クロワッサン以外にもっとおいしい焼きたてのパンをご用意いただけるって」


「お母様いいわよね。ジル様がクロワッサンを食べたら元気になれるっておっしゃるの」


なんとか母にOKと言わせなければ。


「そ、そうなのですか?」


「息子もぜひにと言っているわ。お願い。ね?」


「かしこまりました。焼きたてのパンをたくさんご用意しておきます」


ジルが店に来ることが決まった。

貴族をもてなさなければならない母には大変な思いをさせることになるけれど、許してね。ジルを助けるためなの。

なんとかその場所でぬかりなくやらなくちゃ。

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