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帰り道はみんなで② 厄介な星と遺失物

長い階段を抜けると、先ほどと代わり映えのない光景が広がる。

明るい吹き抜けのある空間で、やはり天井には無数の星。

だがよく見ると星の表面には鋭利な刃物がいくつもついている。


「星の殺傷力が増しましたね」

「なんかちょっと陰湿だね、このダンジョン」

「もっと陰湿なダンジョンはたくさんありますよ」


話をしている間にも星が落下する。


手のひらほどの大きさのピンクと紫の縞模様の星が、刃物を回転させながら落ちてくる。


咄嗟に避けるが、星が急に方向転換をした。


「え! こっちに来る!」

「これはまた面倒ですね」


猛スピードで向かってくる星をなんとかよけると、後ろの壁にぶつかってキィンっと甲高い音を立てて壁に突き刺さる。


だが止まることはない。


刺さったまま小刻みに震えると、壁から刃物が抜ける。


そしてそれが再びこちらに向かってくる。


「なるほど。この星はすべて魔物とみなした方がよさそうですね」

「え! だとしたらさっきの扉から行った方が安全だった?」

「どうでしょうか」


店主は飛んできた星を風魔法で包むと粉砕した。


「いまのところは問題ないですよ。さあ早く遺失物を見つけて帰りましょう」


僕はさっき気配を感じた場所まで歩き出した。


「多分この辺だと思う」

「手分けして探しましょうか。ですが、必ず私から見える範囲にいてくださいね」

「わかった」


僕は店主から離れて遺失物を探した。

声も聞こえないからどんな遺失物なのかもわからない。

大きいのか、小さいのか。

どんな色で、どんな形をしているのか。


ダンジョンは明るくて視界がいい。

通路もシンプルなつくりで、もし遺失物があれば簡単に見つかるはずだ。


「おかしいな」


それなのに、どんなに探しても見つからない。


指輪やピアスなどの小さなものが入り込むような隙間もないし、視界を遮るような障害物もない。


「ここじゃないのかな」


感じた気配が間違っていたのかもしれない。

どんどん自信がなくなっていく。


「店主、見つかった?」


遠くに見える店主に声をかける。


「いいえ、こちらにはなさそうです」

「僕も見つけられないよ」


もう一度探そうと店主のそばに戻る。


再び集中して目を閉じる。


「やっぱりこの近くだと思うんだけど……」


どうしてだろうと首を傾げながら店主を見ると、いつもの余裕のある笑顔で、人差し指を立てた。


「まだ、探していない場所がありますよ」


その伸びた指は天井を指している。


星か。


僕は上を見上げた。

かなり遠くに見える星の中に遺失物があるのかどうか、ここからではわからない。


「でもどうやって探すの、あんなところ」

「待っていれば自然に落ちてくるのでは?」

「えぇ……」


店主の理屈はわかるが、それだとどのくらい時間がかかるのか見当もつかない。


「とはいえ早く帰らないと、ミランダとメリンダが怒ります。彼女たちが怒ると、何をされるかわかりませんからね」


ふふっとやわらかい声を漏らして、店主が手のひらを上に向けた。


「全部一気に落としちゃうの?」

「さすがにそれは対処しきれないので、とりあえず軽く風を送って揺らしてみます。うまくいくといいのですが。バルムンクは私の後ろに隠れていてくださいね」


店主の掌から柔らかい光が放たれる。

そしてそよ風のような強さの風が、吹き抜けの空間一杯に満ちていく。


店主の髪がゆるやかにそよぐのを僕は後ろから見ていた。


星はざわざわと揺れだして隣の星とぶつかり、金属が当たる音が響きはじめる。


「まるで音楽のようですね」


いくつか落下してくる星を粉砕しながら優雅に耳を澄ませる。


「もう、店主はのんきなんだから」

「そんなことはないですよ」

「本当?」

「はい、本当です」


機嫌がいいのか鼻歌まで歌いだした店主に、ダンジョンの中にいるという緊張感はまるでない。


その時、急に気配が強くなった。


「あ」


声を上げた僕に振り返った店主はすぐに魔法を止めた。


「うまくいったようですね」


僕は気配を頼りに遺失物のところに駆け寄る。


少し離れた通路の上に、粉々になった星が散らばっていて、そのすぐ横に何かが落ちていた。


手のひらほどの大きさの、金属でできた平べったいもの。

表面にはなにやらたくさんの文字が書かれた紙が貼られている。

これが探していた遺失物で間違いなさそうだ。


僕はその遺失物に手を伸ばす。


その時、少し離れた場所にいた店主が、目を大きく開き、珍しく焦った顔をした。



「バルムンク、触ってはいけませんっ!」




その遺失物を拾い上げた瞬間、僕の身体が音もなく消えた。


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