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帰り道はみんなで① 星降る島の探し物

「バルムンク、気配は感じますか」

「んー、近くにいるとは思うんだけど」


僕たちはいま、ダンジョンの中にいる。


『星降る島』という、湖の中に浮かぶ、月の形を模した人工島のダンジョンだ。

名前だけはロマンチックな場所だが、実際は天井に無数につるされた重さの違う球体がランダムに落ちてくるという、当たったら致命傷になるスリリングなつくりになっている。

そのかわり魔物の強さは比較的弱い。

そういう意味ではバランスが取れている。


店主が遺失物の気配がすると言い出したのは数時間ほど前のこと。

僕にも声は聞こえなかったが、言われてみれば確かに何かの気配を感じた。


ダンジョンは深層になればなるほど敵の強さが増していく。

でも今回は比較的ダンジョンの浅い場所に気配があったから、僕は店主とふたりでやってきたのだ。



「頭、気を付けてくださいね」


天井を見上げると、色とりどりの幾何学模様が描かれた大小さまざまな球体が糸のようなもので吊るされている。


それらの『星』は、大きさによって重さが比例するわけではない。

巨大な星が指の上に載せられるほど軽かったり、こぶし大の小さな星が、地面にめり込むほど重かったりする。


先程も人の頭くらいの大きさの水玉模様の星が、すぐ近くに落下した。

どのタイミングで落ちてくるのかわからないのが地味に怖い。


「店主こそ気をつけてね。僕はぶつかっても怪我することはないんだからさ」

「ありがとうございます」


店主は微笑むと、天井から降りてきた魔物・スパイダーアシダカを、風魔法ですぱっと切り裂いた。


「それにしても、ここまできてまだ声が聞こえないなんてどうしてだろう」


遺失物には意思がある。

たとえどんな思いを抱いていたとしても、その思いを伝えようと心の声を発している。

店主はその声を聞くことができる。

もちろん、同じ遺失物である僕も。


「そうですね、自分の意思で話さないようにしているか、あるいは……話せないようにされているか」

「話せないように?」

「まあ、そういうケースもあるということです」


店主は散歩でもしているようにのんびりとダンジョン内を進み、時々降ってくる星を風魔法でよけながら歩いた。


「このあたりだと思うんですが。バルムンク、何か感じませんか?」

「うーん、ちょっと待ってて」


僕は目を閉じて集中する。

声を頼りにすることはできないから、微かに感じられる気配で場所を特定するしかない。

広いダンジョン内で闇雲に探し回ることはできない。


少しの気配でもわかれば——。


僕が集中できるように、店主が頭上から降ってくる星から僕を守ってくれている。


きみはどこ?

どこにいるの。

早く一緒に家に帰ろう。


僕は遺失物に心で呼びかける。


ふと、遠くの方に微かな気配を感じた。


「見つかりました?」


肩についた砕いた星の破片を払いながら店主が訊ねた。


「うん、多分この下の層にいるよ」

「上出来です」


店主は僕の頭をなでると、褒めるように目を細めた。



僕らは階段で下の階に向かった。

階段の踊り場になっている場所に、一つの扉があった。

まるで非常口のような、壁と一体化した無機質な扉だった。


「え、開けるの!?」

「すみません、つい」


ダンジョンには罠もたくさん仕掛けられている。

罠かもしれないから慎重に行動しないといけないのに、平然と扉を開いた店主につい口を出すと、店主は眉を下げて「何があるのか気になって」と笑った。


確かに、ボタンや扉は好奇心を刺激するものだ。でも罠だったらびっくりするからやめてほしい。


隙間から扉の中をのぞく。

中は天井が低く、星はぶら下がっていなかった。

そのかわり、魔物が何体か見えた。

割と強そうな魔物だ。


「なるほど。星がない道を進むこともできるけれど、その場合は魔物のレベルが上がるんですね」


突然上から落ちてくる星がある道を選ぶか、星はないが魔物が強い道を選ぶか。


「どっちも嫌だけど、近道は多分星のある方だよ」

「では、このまま階段で進みましょう」


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