移動する遺失物P⑭今日の記念に
遺失物センターに戻ってきた僕たちは、店主に渡されたタオルで全身を拭き少し綺麗になった。
カウンターに座ると、いつの間にか着替えてきた店主がシミひとつない黄色いエプロンを付けて機嫌よく珈琲を淹れる。
エッジは大事そうに取り戻したパンツを両手で包んでいる。
「お前そんな汚ねえもんさっさとしまえよ」
「いやっす!」
「君、出禁にしますよ?」
「これは大事なもんなんすよ! このパンツを取り戻すために心を一つにした仲じゃないすか。そんなツレナイこと言わないでくださいよ」
エッジのパンツはもう用途が分からない程に原形をとどめていない。
「それどうするの?」
「どうすっかなぁ」
さすがに履くことは諦めているらしい。替えの下着が無いと言っていたが今日はどうするのだろうとふと思ったが聞かないでおく。
エッジが「あ!」と何かを閃いたように声を上げた。
「今日の記念に、これを切ってみんなにプレゼントするっす! 店主さん、大事にしてくださいね!」
「出禁ですね。ジェイド早く連れて帰ってください」
「なんでっすか! 思い出になるじゃないっすか!」
「ほら帰るぞ。あんまり店主を怒らせるとお前もああなるからな」
さっきの熊の魔物の最期が浮かぶ。
「人聞き悪いこと言わないでください」
「わりぃ、わりぃ」
「また来るっす、店主さん! また一緒にダンジョン行きましょうねー!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながらジェイドに引きずられてエッジは帰っていった。
ちなみに双剣にした約束、「何か一つ言うことを聞く」は割とすぐに実行されたが、それはまた別の話だ。




