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移動する遺失物P⑫なんでも一つ言うことを聞いてあげます

とにかくパンツを守りながらこのでかくて凶暴なスイートハニーベアを倒す必要がある。

それには広い場所が必要だ。この一本道は戦うには狭すぎる。


「何か策はあるのか?」

「とりあえず場所を確保しましょう」

「場所ってお前、この先はあの狭い隙間だぞ」

「ええ。ですから、戻りましょう」

「戻るってさっきの場所に!?」


この道は両側が岩に囲まれた狭い一本道だ。

広い場所に出るには、この先の人一人が通るのがやっとの狭い隙間を通るしかない。

でもそんなところを通っていたらベアに追いつかれてしまう。


店主が言っているのはゴブリンたちが遊んでいたあの広い場所のことだ。

でもそこに行くにはベアと向かい合い、交差しなければならない。

すれ違う幅もないこの道で自ら凶暴な魔物に近づいて行くことはもはや自殺行為だ。


「ジェイドならできますよね? 双剣も力を貸してくれるはずです」

「俺か? まあ、なんとかできるかもしれねえが……」

「え? 嫌よ!」

「私たちは繊細なんだから大事に扱ってちょうだい!」

「ミランダ、メリンダ。帰ったら一つ、なんでも言うことを聞いてあげます」

「……しかたないわね」

「やってあげるわ」


嫌がる双剣も説得し、ジェイドが双剣を構えた。


「じゃあ、行きますよ!」


店主がベアの後ろ足を魔法で氷漬けにした。後ろ足だけ動けなくなったベアの動きが止まる。

その瞬間、ジェイドが双剣を両側の岩に突き立て、交互に手足を動かし天井に上る。

上まで登りきると、ジェイドが天井から弾みをつけて飛んだ。

ジェイドはベアの頭上を飛び越え背後に着地する。

そしてそのまま双剣でベアの尻を斬りつけた。

唸り声を上げてベアが向きを変えようとする。

後ろ足の氷にひびが入る。それだけ力が強いのだ。

魔法をかけ続けないと氷がすぐに壊されてしまう。店主が魔力を強め氷を維持した。


後ろ足が固定されたままのベアが二本足で立ち上がった。前脚を高く上げ、僕たちを威嚇する。


「いまです!」


店主が叫び、僕とエッジが走る。


巨大なスイートハニーベアの股の間をすり抜ける。

僕たちが無事に通過したのを確認したジェイドは、双剣でさらに深く肉を抉った。

店主が後ろ足にかけ続けていた魔法を止める。

途端にものすごい力によって氷にひびが入りはじめる。


ジェイドがベアの股の間から店主に手を伸ばした。


「急げ!」


店主がその手を掴むとジェイドが思い切り引っ張った。

バランスを崩して倒れ込んだ店主をジェイドがそのまま肩に担ぐと、僕たちは走って道を引き返した。


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