移動する遺失物P⑩まだ騎士団希望中
雄叫びを上げながらエッジがゴブリンの群れに突っ込んでいく。
反撃に備えてジェイドも双剣を握り、店主も構えた。
ゴブリンたちにとっては奇襲だったはずだが、さすがは魔物。先程の可愛らしい姿から一変して牙をむき出しにして攻撃態勢に入る。
「俺はッ! 騎士団長になる男だァーーー!」
一斉に襲い掛かるゴブリンたちをエッジが剣を振り回して蹴散らしていく。
「いやお前冒険者だろ!」
背後からエッジを狙うゴブリンをジェイドが双剣で斬り捨てる。
穴から逃げ出したゴブリンを店主が捕まえ風魔法で斬っていく。
ゴブリンたちも深層にいるだけあって身体が頑丈だ。一度や二度の攻撃で倒れてはくれない。
鋭い牙と鋭い爪を振りかざし、身体の小ささを生かしてすばしっこく飛び回り、上から下からと襲い掛かってくる。
ジェイドがエッジの傍で闘おうとするがでたらめに振り回す剣が危なくて近づけない。
「お前もうちょっと考えて動けよ」
だが必死になっているエッジには届かない。
「お前下の奴だけやっとけ」
しかたなくジェイドが天井付近にいるゴブリンを双剣の連続攻撃で地面に叩き落とした。
落ちてきたゴブリンをエッジが突き刺していく。
ジェイドはとても面倒見のいいリーダーだ。
「ちょっと意外」
「そうですか? 彼はもともとああいう人ですよ」
店主は少し離れたところで僕を風魔法で守りながらサポートをする。
二十体程いたゴブリンは、その数をどんどん減らしていった。
これなら無事、パンツを回収できそうだ。
エッジが床に落ちた、伸びきったパンツに手を伸ばす。
その瞬間、素早い動きで一体のゴブリンがパンツをエッジの手から奪い去った。
「ちょっと待て!」
エッジは追いかけるが動きが速くて追いつけない。
ゴブリンはまるでわざと見せつけるかのようにパンツを振り回しながら走り回る。
遊んでいるようにも煽っているようにも見える。
「この野郎!」
エッジがゴブリンに斬りかかろうとしたその時。
どすん、と地面が大きく揺れた。
状況を確かめる間もなく、エッジの前にいたゴブリンが毛むくじゃらの大きな手に捕らえられる。
ゴブリンはその手から逃れようと必死に抵抗するがびくともしない。
手は洞窟の壁を突き破って生えている。
「これはまずい……」
ジェイドが動きを止めた。
洞窟の壁が大きな音を立てて崩れる。壁だけでなく天井も崩れていく。
大きな石がかたまりになって落ちてくる。
このままじゃ生き埋めになる。
ジェイドがエッジの首根っこを掴むと、店主の方に走ってやってきた。
「ここは崩れる。脱出するぞ!」
「はい。行きましょうバルムンク!」
店主も珍しく焦っている。その視線はこの崩落の原因を作った巨大な魔物に向けられている。




