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第8話 公爵令嬢の調査

終業式が終わり。メロディ主催のお茶会の1日前、恒例の婚約者同士のお茶会がスペンサー家で行われる予定だった。


ガゼボで、シャーロットは3時間待つことになる。


「・・お嬢様」

精霊からセンパイと呼ばれるメイドのアンは、もう何杯目かわからない紅茶を入れようとする。

「フフフ、そんなにお茶を飲んだら、お花摘みに行かなければならないわ。もう、いいわ」


「はい・・」


「少し、魔法の練習をするわ。もし、ニコライが来たら・・呼んでね」


そういうと、シャーロットは、目を薄く閉じ、精神を集中して、体の魔力の流れを調え。

スペンサー家特有の魔法を練る。




☆アレクサンドル公爵家、書斎

「シャーロット様は、魔法の実技はC+ですの。その他はオールA+」


公爵令嬢イザベルは、シャーロットの成績表を、入手し、情報を解析していた。


・・わからないわね。あの計算機は、我国の魔導師では作れない。王城の魔道計算機は、ワンフロアを占拠しているわ。

これを作れる精霊に加護を与えるなんて・・・

シャーロット様の魔法の種別は「探知」火、水、雷、土、風の五大魔法ではないけれど・・探知も立派な魔法・・のはずよ。

魔力が弱い・・・いえ、そうは見えなかったわ。


『人が精霊に、または、人が人に加護を与えるなんて・・そのような事例は過去にありません』

公爵家お抱えの魔導師は言ったわね。


『魔法の実技は、判定不能なものだと、Cになる可能性があります。教師の前で、水を操るなど、目に見える成果を示せれば、加点されます。確かに魔力はあるが、成果が見えない。それは魔力あるだけと判定されCになります。その他・・爵位に対する加点があるのは否定出来ません』


とも言ったわ。


イザベルはスペンサー家の過去を調べた。

過去150年間の貴族年鑑を書物庫から出し。公爵家の書生やお抱えの学者に調べさせたが・・

しかし、具体的なことは何も書かれていない。

爵位を授かった理由もスペンサー村を良くまとめ。王国に貢献した・・

ありきたり過ぎて怪しいわね。


イザベルは更に

スペンサー伯爵の本領、スペンサー村について調べた。



「賎民!?」

スペンサー村の奥の森には誰も見向きもしない黒い沼がある。

燃える水、魔物、特にゴブリンの巣穴に流して、焼き殺すぐらいしか用途はないとされる。

通称、[ゴブリン焼き水]、取り扱う一族は賎民、汚れた血と差別された。


スペンサー家の始祖とされている者は、名は、サーク、スペンサー村の村長、ある日、黒髪の精霊と出会った?

黒髪の精霊は、サークの高潔な人格に感涙を流し、以後、何かあったら、直系の子孫を助ける。その代り、加護を与えてもらう・・・

やっと、見つけたスペンサー家に関する具体的な話は、王国民話集だった。


ある日、森で、ゴブリンを焼いていたサークは、魔物の盆地から、鉄の奇妙な乗り物に乗ってやってきた斑模様の服を着た黒髪の精霊から、理不尽な要求を受ける。

「そのゴブリン焼き水が湧き出る土地を寄越せ!お前たちは出て行け!」

「絶対に嫌だ。これは俺たちの土地だ、生業だ。その代り、俺が別の湧き出る土地を探してやるよ」


そして、サークはゴブリン焼き水が湧き出る沼を彼らに教え。黄金を贈ろうとした精霊を窘め。相場のお金しかもらわなかった。精霊は、サークの高潔な人格に・・


「100年前の帝国軍大侵攻のさい。精霊たちは、サークの子孫が王国にいるというだけの理由で、王国に加担し、帝国軍10万もの大軍を退け。いや、殲滅し、当時の王は、精霊を呼んだ功績で、サークの子孫を貴族に列することにした。帝国は未だに彼ら精霊に、恐怖を抱いている。その後も小競り合いがあるが、大規模な戦争にはなっていないのは、精霊のおかげだろね」


「殿下!」

イザベルが本を読んでいる背中から、第一王子が話しかけた。

イザベルの婚約者であり、学園は卒業している。


「それ以上は・・王妃教育で学ぶ・・最終でね。これを学ぶと後戻り出来ない。婚約が破棄しされたら、一生、王宮の貴族牢で暮らすことになる。僕から、婚約破棄なんて絶対にしないけどね。覚悟は出来たかな。私の愛しい人よ」


「そうね。これ以上は、まだ、早いわね。ウィリアム様も知らないのよね?」


「しかし、薄らと感じているよ。ウィリアムの魔法適性は探知、シャーロット嬢と相性は抜群だよ。王家に取り込みたいね。協力してくれるかい?」


「ええ、もちろんでございますわ」




☆スペンサー家、庭園、ガゼボ


ガゼボで、シャーロットの周りに薄らと、後光が差している。シャーロットは地面に手を当てた。


ジッとミヤは木の陰から見ている。

(伝承どおりね。シャーロットお嬢様のお母様と同じ力・・・推戴するに値する方・・しかし、まだ、敵がいる)




☆スペンサー家、メロディの部屋


その時、ニコライは、メロディの部屋で、「ウゥ」とうなっていた。


・・ケ、三回目かよ。そうだ。このシーツをシャーロットに見せようか?


「メロディ、結婚してくれ!」


「ええ、でも、義姉様がいるでしょう~」

オイ、こっちはもっと高位の貴族様、狙ってんだい。だから、乙女はあげてない。ママから、乙女を失わずに、サルの相手をする方法を教えてもらったんだい。


「大丈夫、作戦を練るから、僕、シャーロットに婚約破棄を突きつけるよ!」


「え~メロディ~嬉しいけど、お義姉様が」

チ、まあ、いいか。婚約だけすればパパは喜ぶし


「僕が守るよ」

ガシィとメロディを抱いた。

これがどのような結果になるか、ニコライは想像すらしていない。




☆再びガゼボ


「ふう。今日はもう離れに帰りましょう」

「はい、お嬢様。私が後片付けをしますから、先に」

「いいわよ。一緒にやれば早く終わるわよ」


「フフフ、まるで姉妹みたい・・写真撮りたいわね」


まるで、ストーカーのようなミヤであったが、微笑ましい光景は義母の一声で打ち消された。


「シャーロット、何をしているんだい。お茶会の準備はすんだのかい?全く、ノロマだね」


屋敷内では、ミヤとアンしかシャーロットの言うことを聞く者はいない。

明日は、人気のないスペンサー家の離れ、林の近くでメロディ主催のお茶会を開くので・・男手がいるから、業者に資材搬入を依頼していた。


「・・すみません。女主人様・・」


ミヤは素早く、

「甲、ミヤ、プランゴルフ(G)ガゼボ緊急」

とどこかに魔道具で知らせる。


すぐに、人相の悪いゴロツキどもが、ゾロゾロ10人くらいやってきた。


「キャ、ゴロツキさん?何故、ここに」

「ヒィ、シャーロット様、私の後ろに!」

「ダメよ。主人が使用人を守るのよ!」

とシャーロットとアンはお互いを抱き合い庇う。


「な、なんだい。あんたたち、あたしぁ伯爵夫人だよ!」


(しまったわ。主人を怖がらせたわ。メイド失格よ。この作戦は修正が必要だわ)

ミヤは心の中で反省しながら、颯爽と現れ。

「お嬢様、センパイ、さあ、今のうちに」と撤退を促す。


ゴロツキどもは、シャーロットたちに目をくれず。義母にカラむ。

次々とゲスな言葉を義母に投げかける。


「へへへへへ、いい女だぜ。今晩どうでい!」

「ヒヒヒヒ、お茶しなーい。密室で!」

「グヒヒィ、俺、ババ専!」



「あんたたちは誰だい!門番は何やってたんだい!あたしはね。あんたらよりももっと強い男の知り合いがいるんだい!イセ商会というゴロツキの親分とあたしは知り合いだい!」

義母は精一杯に啖呵を切ったが、


ゴロツキどもは笑いながら答えた。


「へへへ、俺たちがそのイセ商会よ!」

「ヒヒヒ、今日は、明日のお茶会会場の設置で呼ばれたんだよ。きちんとした商会だぜ!」

「疲れたから相手してくれよーお前、アマンダだろ。酒場でいけないことをして、稼いでいただろ。小部屋のアマンダで有名だよ。知ってるよ」

「門番は、ごちゃごちゃ言ってたから、殺、いや、じっくり話したらわかってもらったぜ!」


「「「ヒヒヒヒヒィ」」」


義母は、ハッタリで、ゴロツキの巣窟と名高いイセ商会の名を出したが、彼ら本人だった。


「ほら、ほら、あっちにあたしよりも若い女が、い、いない。助けて~~~」

シャーロットとセンパイはミヤに連れられて、とっくに避難していた。


義母は転びながら逃げて行った。


・・

「なあ、『ゴロツキさん?』だって、シャーロット様は可愛いな-」

「センパイも必死にシャーロット様を庇って、俺、涙出てきたよ」

「しかし、怖がらせてしまった」

「だな。ミヤお嬢に意見具申するか」

「何だよ。俺たちシャーロット様の前に出ちゃだめか。ガッカリだぜ」

「遠くから見守ろうぜ!」



むさくるしい男たちは、まるで、乙女のようにシャーロットとセンパイの愛らしさを語り会うのだった。





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