第9話 無事に終わったお茶会 マナーを学び義姉に迷惑を掛けないと義妹は改心した。
※残酷な描写があります。
時は、シャーロットが、殿下から観劇を誘われた日に遡る。
その日の夜。早速、無理難題を押しつけにやってきた者がいた。義母だ。
「シャーロット、女主人として、命令します。メロディの友達を招いてお茶会を開きます。貴方が招待状から、会場準備まで全てやりなさい。招待するリストはこの方々だ。一週間後やるよ!」
「え、そんな短い期間じゃ・・」
「ワガママ言うと、また、お仕置き部屋に押し込むよ!」
「はい・・女主人様」
このやり取りをジッとカゲから見ているメイドがいた。ミヤだ。
(一週間後ね・・)
☆☆☆お茶会当日
「キャーーーーイタい」
また、義妹のメロディが、私の前で、転んだ。そして・・
「まあ、どうされたのですか?」
「違うの・・・違うの、義姉様に、転ばされたのではないのーー」
「まあ、やっぱり、メロディ様をイジメている悪い虫がいるって本当なのね」チラ
「メロディお嬢様、庇うのは、時として、シャーロットお嬢様のためにはなりませんよ」
使用人まで、まるで、私が義妹を転ばしたように話を持ってく。
招待されているのは、メロディを、このスペンサー家の総領娘にしたい父方の親戚たちの子ばかりだ。
「お嬢様はそのようなことをなさるお方ではありません」と語尾は低くなりながらも唯一の味方、メイドのアンが、抗弁するが、大声で話す人々にかき消された。
「まあ、まあ、天使のように可愛いメロディ様に嫉妬する地味な令嬢はどなたかしら、クス」
「ええ、総領娘に相応しいのはどちらかしらね。イジメをする令嬢は修道院行きですわね。誰とは申しませんが」
「・・・・・・」
私は、下を向いてすり切れたスカートを掴む。お母様が亡くなってから私はすっかり自己否定の強い子になった。
「ええ、スペンサー家は、成り上がりの、精霊に取り憑かれた汚れた血、いっそのこと、新しい血に入れ替えた方が宜しくなくって」
これだけは、許せない。私は
「・・私の母上とご先祖様は、汚れた血なんかではないわ・・」
小さい声で、やっと、抗議した。
「まあ、誰とは言っていないのに・・あら、いたの地味すぎてわからなかったわ」
「キャハハハハ、ゴブリン焼き水を探すしか能のない探知魔法の家系が、貴族だなんておこがましい」
「ねえ、いっそのこと、メロディ様をここで、スペンサー家の新しい当主と宣言させましょうか?ねえ、貴女、拘束して・・」
「そうよ。メロディ様が転ばされましたわ。同じ目に合わせましょう。そこの貴方、何か固いものを、金槌ないかしら」
シャーロットを拘束して、金槌で脅して、メロディをスペンサー家当主と宣言させる作戦というよりは、嫌がらせをしようとしている。
「はい、ここに」
使用人は何の躊躇もなく、金槌を持って来た。
緊張が走る。
アンが、シャーロットの前に出て庇う。
シャーロットはアンの前に出ようとする。
「ねえ、メロディ様の代から、スペンサー家は、由緒正しき貴族になるの。貴女・・邪魔よ。精霊なんて迷信よね」
金槌を持った令嬢が、二人に、近づこうとしたとき。
その時、20代前半の新入りのメイド、ミヤが、人混みをかき分けてやって来た。やや青みがかった目に、黒髪で、黒髪はこの国では珍しい特徴だ。
「まあ、メロディ様、大丈夫ですか?こちらに美肌効果もあるポーションがございます。どうか私にかけさせて下さい。大事なお嬢様・・肌に傷があっては・・当家の損失です」
そう、使用人は仕方がない。誰に付くかでお給金が変るから、仕方ないのよね。
やっぱり、この家で私の味方になる者はアンだけね。
「センパイ、シャーロットお嬢様はお加減悪そうです。お部屋にお連れしては如何ですか?」
センパイとは彼女の国では、職業や学業の先達を尊敬する意味と説明してくれた。
アンを尊敬してくれているのね。その気持ちで充分だわ。
このお茶会は私が招待状から業者まで用意したのよ。まるで、自分を殺すナイフを用意するようなものね。
最後には私たちが後片付けをしなければならない。
「シャーロット様、行きましょう」
「ええ」
こうして、私は今日も心を削っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・行ったか?」
「ギャハハハハッハ、行ったね。今日も泣きそうだったよ。地味令嬢、ウケる-」
「シャロイジメ、最高―――でも、まだ、イジメ足りないーー」
「そうだ、あいつらが掃除しているところを狙って散らかしまくるってどうだ」
「いいねーー」
シャーロットがいなくなると、一斉に使用人と令嬢達は笑い出した。
皆でイジメていたのだ。
シャロイジメと名前が付くまでに、日常化していた。
「さあ、お前、名前は何だっけ?さっさとポーションをかけなさい。気に入ったら、6人目の私付きのメイドにしてあげるからね♪」
「私は先月から雇われました。ミヤと申します。メロディ様、御足を失礼します」
ミヤと名乗るメイドはメロディの足をスカートから出して、ポーションをかけ始めた。
「うん。うん。中々、刺激が強いわね。温泉みた・・グギャァアアアアア、熱い、熱い溶けちゃう。溶けちゃうの、足が、足が、イタい。離して、離せ。グギャァアアアアアアアアア」
「あら、大変申訳ございません。〇酸とポーション間違えてしまいましたわ」
メロディはのたうち回る。皆は唖然としている。
「あら、本物のポーションはこちらにございます。申訳ございません。そんなに、ゴブリンのように動き回ると、足が・・あら、取れてしまいましたね」
「グハアアアアアアアアアアア」
「まあ、何故、私から逃げるのですか?本物のポーションでくっつけてあげようとしているのに」
「ヒィィイイイ」令嬢とメイド達は悲鳴を挙げ。
男の使用人は立ったまま何も出来ない。
「あら、大変申訳ございません。反対にくっつけてしまいました。斬ってくっつけ治して差し上げますわ。どなたかノコギリを持って来て下さらないかしら。御守刀はあるけど、・・その汚いもの斬りたくないの」
「グハアアアアア、止めて、誰か・・誰か・・助けて」
誰も動かないが、やっと使用人の一人が、ミヤを止めようと肩に手を掛けた。
パサッとミヤは、スカートの後ろから短刀を取り出し、使用人の右手を斬った。
「ギャアアアアアアーーーーーー」
「あら、うるさいわね。治療の邪魔ね」
「逃げろ、外道だ。メロディ様をイジメているぞ。騎士団に報告・・ギャ」
遠くからパンパンと音が響き、逃げようとした者たちの胸に穴が開いた。
ミヤがあらかじめ遠くに、狙撃手たちを配置していた。
「「「精霊の魔法か?」」」
「あら、精霊様がお怒りですわね。皆様、動くと精霊魔法が炸裂しますわ」
「は~い。精霊で~す。悪口が聞こえたので、精霊の国から来ちゃいました!」
林の中から、アキがやって来た。ミヤの妹、2の姫と称されている。
手には、自動小銃を持っている。この国の者には、奇妙な魔法杖にしか見えない。
「黒目、黒髪だと・・スペンサー家の伝説は本当だった!」
招待客と、使用人たちは動揺する。
「おい、地味令嬢を呼んでこい!こいつらをとめさ・・」
使用人が、話す途中で、パンと音が鳴る。
「「「死んでる!」」
「こんなに、簡単に人は死ぬものなの・・ヒィ、精霊魔法」
「おい、そこの金槌女、お前だけは許せない!シャーロット様とセンパイを殺そうとしたな!」
「ヒィ、これは、でなくって、脅かそうとしただけなの。余興なの!」
金槌女と呼ばれた令嬢は、アキにグサッと銃剣で胸を貫かれた。
「はあ、はあ、お前が無様に、死ぬ様が余興だ・・」
彼女は倒れ、まるで、陸に上がった魚のように、ビクン、ビクンとのたうち回り、やがて、動かなくなった。
「キャアハハハ、面白ーい。お前ら、これが余興だ!」
「アキちゃん。そこまで、皆を見張っていてね。半数は残して、恐怖を伝染させるのよ」
「はい、姉様!」
一方、ミヤは、暴れるメロディを足で踏みつけ暴れないように固定した。
「メロディお嬢様、今、足を治して差し上げますわ」
「クウハ、クウハ・・ハア、ハア」
ミヤは「エイ」とメロディの足を斬り、くっつけようとしたが
「ねえ、皆様、痛くないのに、痛いフリをする悪い足は、斬ったままにした方が・・良いかしらね。皆様、如何思われますか・・?あ、これ、メロディお嬢様のことではなく・・一般論でお願いします・・」
「はい、はーい。そのとおりだと思いまーす!」
「「「・・・・・・・・・・・」」」
「アキ以外はダンマリですね。まあ、いいですわ。私はスペンサー家に来て、日が浅いので教えて頂けませんか?メロディお嬢様、スペンサー伯爵家の総領娘はシャーロット様でお間違いないですよね」
「ヒーヒー」
「ヒーヒーじゃわかりませんわ」
「そうですか・・でないと、手元が狂いそうで・・あら、間違って、異常のない方の足を斬ってしまいましたわ。申訳ございません」
「ギャアアアアアア、お義姉様が、総領娘でギャ、グフ、間違いない。間違いないから」
「ところで、メロディお嬢様のスペンサー家のお立場は?」
「義妹です!義妹、義妹だから痛くしないで、早くくっつけてーーーーー」
「ダメね。もっと具体的に、切実に説明してくれないと、使用人として間違いを犯しそうですわ。一般論で、他家に無理矢理入り込んで、居候している身分の方を何て言いますか?」
「居候!居候でいいから・・・」
「あら、今度は間違って手を斬りそうですわ」
「ギャアアアーーーーー」
☆一時間後
「グスン、グヘ、グスン、ゲボ・・・私は寄生虫です・・せめて居候になれるように・・ゲボ、行儀作法・・学びます・・ゲボ・・」
「まあ、そこまで正確に、自己分析をしなくても・・・あら、そろそろシャーロット様とセンパイが来られる時間だわ。皆で、後片付けをするのよ。良いわね。出ないと精霊様のお怒りで胸に穴が開くかもしれないわね。死体はこの袋に入れなさい」
ガクガクブルブルと震えながらも、生き残った令嬢たちと使用人たちは
「「「はい!!」」」
と空元気に返事をした。
・・・・・・・・
シャーロットとアンが後片付けにやって来た。
「あれ、皆は」
「はい、後片付けは終わりました。皆様、お帰りになられました」
「えっと、ミヤ、有難う」
「お嬢様、お礼は不要です。いえ、と~ても、と~ても嬉しいのですけど・・どうか、これからは、後片付けは使用人にお任せ下さい。それが使用人の仕事です」
「ううん。私、決めたの。何かしてくれたら、立場に関係なく御礼を言おうと・・」
「まあー」とミヤは両手を頬にあて、悶絶した。
「??ところで、ミヤ、メロディは?」
「生きておりますよ」
「え?」
「さあ、シャーロットお嬢様と・・センパイ・・お食事の時間まで、ごゆるりとお過ごし下さい。外のことは私にお任せを・・・」
こうして、使用人5人、参加者のほぼ半数の令嬢12名が病死と発表されたが、お茶会は無事に終わった。
最後までお読み頂き有難うございました。




