十龍のカジノにて・その2
おかしい。
ルーレット台を片付けながら、セキエイはソワソワしていた。あまりにも気になったため、セキエイは合間を見てカジノの扉を開け、ヒスイがいつも待つカフェへ出向いた。
店員
「私も思ったのよ!ヒスイ君、遅いわよね?」
セキエイはいつもヒスイと仲良く話す、カフェの店員達に尋ねた。答えは誰も同じだった。
店員
「間違えて、病院にいるんじゃないの?電話は?」
セキエイ
「いや、ない。」
セキエイは咄嗟に首を横に振った。もうとっくに日も暮れて、セキエイの仕事も終わる頃だった。
ヒスイの姿が見えない。
店員
「十龍医薬科センターでしょ?私電話するから、奥さんに電話したら?」
セキエイ
「ありがとうございます」
セキエイは慌ててアンに連絡した。ヒスイにテレパシーを飛ばすが、ちっともわからない。
何やってんだ、あいつは!?
セキエイの顔に、焦りが出ていた。
店員
「来てないって。」
店員は電話を終えて、セキエイに声をかけた。
セキエイ
「ありがとうございます、嫁も学校も、わからないって言ってました…」
店員
「早く探した方がいいですよ!最近、物騒だし…学校にかけても、いないんでしょ!?家は?!あれなら私たち、まだいるから見てますよ?」
セキエイ
「すいません、ありがとうございます!」
セキエイは慌ててカジノを飛び出した。とにかく、ヒスイがいつも通る道を向かう。
アン
「エイジ、僕だ。」
セキエイ
「…」
セキエイは駆け足で賑やかな街を抜けながら、アンのテレパシーに耳を澄ました。
アン
「時間を止めようか?僕も、ヒスイを掴めない。」
セキエイ
「頼む。」
セキエイが頭の中で言うと、街は一瞬で写真のように時を止めた。
足踏み、車の排気ガス、舞い散る花びら、すべて時を止めて、セキエイの乱暴な息遣いだけが夜空に輝く。
…くそ、ヒスイが掴めない。どこだよ!!
アン
「エイジ!」
セキエイの目の前に、アンが現れた。
2人が出会ったのは、綾港で1番大きなスクランブル交差点のど真ん中。
通行人はそれぞれアスファルトに足をねじ込み目的地へ向かう最中だった。
アン
「家にお邪魔したらいなかったよ。友達は?遊ぶとは、言ってなかったか?」
アンは涙目だった。無理もない。セキエイも泣きそうだった。
セキエイ
「それはない。そうしたら、あいつは必ず友達とカジノか病院に顔を出す。今日はクラブ活動のバドミントンもない。」
アン
「友達の家には行くか?仲良いのは誰だ?」
セキエイ
「一応行く。アンは俺の家の周りを見てくれないか。一通り見たら、またここで落ち合おう。疲れたら俺が時間を止めるから言え。」
アン
「了解。」
セキエイとアンは、一旦別れた。




