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尖沙西のスラム街・その2

チン

「あの女殺し屋、やるじゃない。ついでにスラムの乞食共も、皆殺しにすればいいわ。」


女達は黒塗りの高級車からスラムの喧騒を眺めていた。


悍ましい言葉を発する女の顔は笑顔だった。運転手と、助手席に乗っていた秘書はミラー越しに女を見ては、チラチラと気づかれないように目を合わせていた。どうやら、お互い思う事は同じようだ。悪魔がすぐそばにいる、そう感じたようだ。


チン

「支払いは済ませたの?」


女ことチンが尋ねると秘書はすぐに答えた。


秘書

「はい。明日付で済んでいます。もちろん、ゴー様にも」


チン

「ありがとう。あれ、でもこのスラム、3年前にも政府主管で盗賊集団を取っちめてるわよね?まぁ、本当ゴキブリはすぐに沸いて出るわね~」


まだまだスラム街の暴動は、治まってはいなかった。サイレンはミラーボールのように夜の街を照らし、街の所々からは煙がもくもくとあがっている。燃やされた旗、割れたガラス瓶の死体、流れて乾き始めた血液、押しかける人々の表情は怒と哀はあっても喜と楽はどこにもない。


運転手

「はい、その時の人物と今回チン様が依頼した人物は同じです。」


秘書と運転手は、一歩下がってこの暴動を眺めていた。


正直、2人はもう帰りたくて仕方がなかった。いつ火の玉がこちらに飛んでくるか、ボンネットに誰かが飛び乗ってくるか、自分のいるところが爆発するかわからないという恐怖に晒されていた。


冗談じゃねぇよ、まだ死にたくないよと誰しもが思うだろう。深夜になってもまだ罵声を時々耳にすることができた。色で言うと、赤だろう。


頭おかしいだろこの女、2人は目を合わせて声に出さない声で会話をしていた。


チン

「ふーん、大した女ね。その女のこと、詳しくわかるかしら?」


秘書

「は、はい、その殺し屋のことですか?」


秘書はふと我に帰り、とっさに振り返ってチンを見た。


チン

「当たり前じゃない、聞いてたの?でも、他の人は断られちゃったわー。」


チンはジロリと鏡越しに秘書達を睨んだ。


運転手

「情報はほとんどないですね。ただ、唯一わかるのが、理事長が狙っている子の隣に写っていた大人の男と共に、3年前にこのスラム街を潰したことぐらいです。」


その話を聞くとチンは改めて、ふふふと口元を捻らせて不気味に笑った。暗がりに笑うその姿は、まるで魔女のそれだった。


チン

「仲間は狙わないってやつ?あら、可愛いところあるじゃない~ねぇ?こんなにえげつないことをしておいて。」


オホホホホ、とチンは声を高くして笑った。


チン

「セキ・ショーヨム・ヒスイ君ね。この前理事長室で話したけど、とても可愛らしくて素敵な子よ。こんな形になってしまうのは残念ね~、まぁ断られちゃったなら、別のやり方しかないわね~。」


チンの高笑いは、しばらくは止まらなかった。




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