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十龍のとあるアパートにて

その日の夜。


セキエイ

「…外が騒がしいな」


セキエイはベッドから体を動かして、病室の窓のカーテンを半開きにして外を眺めていた。そして、セキエイは再びゆっくりと瞼を閉じた。


セキエイ

「テレビをつけろ?わかった。」


セキエイはテレパシーを受けて、病室の端にうずくまっているテレビの電源を入れた。


会話の相手はアンだった。


セキエイ

「ふーん、派手にやってんな。反対派デモか。そういやあのガキ、どうした?」


セキエイはテレビのニュースを見ながら、頭の中でアンと会話をした。


もうお日様も布団に潜った、夜の9時。綾港の夜は、これからといっても過言ではなかった。とはいえ、この辺りはいつも以上に騒がしかった。


アン

「ルチルは今家にいる。とてもじゃないが帰せられない。親御さんには了解済みだ。」


その頃、アンは十龍にある関家に泊まっていた。セキエイとテレパシーで会話をしながら、慣れた手つきで皿を洗う。


セキエイ

「その方がいい。すまんな、アン。こっちもまだ外がサイレンまみれだ。お前は仕事は平気なのか?」


アン

「…外の騒動の原因は僕だから…」


アンは蛇口を止めて、手をタオルで拭いた。


尖沙西の騒動の原因は、政治家ハンが発見されたことだった。嫁の経営する会社の資金を盗み逃走したハンは反政府派から一大支持があった大物。その人々がこの一帯で対立をしていた。


そのハンとは、ゴーの依頼でアンが居場所を透視した人物だった。


セキエイ

「なるほどね。そういう依頼があったのか。」


…お前はもう、そんな大物を相手にするほどになったのか。セキエイは思った。それと同時に、アンの身の心配もした。


エスパーの「何でも屋さん」は別に、今に始まったわけではない。けれども彼らの末路はマトモではない…アンもセキエイも、その最期をいくつも見てきた。


アン

「ヒスイ、ルチル、順番にシャワーを浴びてきなさい。」


アンは狭い居間でテレビを見ていた2人に声をかけた。


ヒスイ

「先いいよ。そこ、トイレの横だよ。」


ルチル

「あぁ、すまんな。」


この家のことを1番知っているヒスイは、ルチルにタオルを渡した。


ヒスイ

「ママ、ちょっと宿題をやりたいけど、テーブル使っていい?」


ヒスイはアンがいる台所まで、ゆっくりと歩いて来た。


アン

「いいよ。もう片付けたから。ちょっとルチルの服を探してくるよ。」


ヒスイ

「…パパと何をお話ししてるの?」


アン

「…」


…こんなテレパシーも聞き取れるのか!?


ヒスイの新たな能力を発見して、アンも唖然とした。アンは、その場に立ち尽くした。


セキエイ

「ヒスイ、話がある。」


アンから事情を聞いたセキエイは、ついにテレパシーでヒスイと会話を始めた。


ヒスイ

「えっ…でも」


セキエイ

「いや別に、怒ってはいないよ。でも、いつか、必ずわからなきゃいけないことなんだ。」


ヒスイの心の声は動揺しているのか、オドオドしていた。セキエイはすぐにわかった。


…そうか。ヒスイ。

セキエイは窓の外の喧騒を眺めながら、ため息をついた。


お前も俺たちと同じ道を行くのか。それだけは避けたかったのに…


ルチル

「出たぞ~…?」


ルチルはアンが用意してくれた服を着た後、タオルで髪を乾かしながら台所へと歩いて行った。ホカホカ体から湯気を出していたのに、ヒンヤリとした家の中にいるためか髪はだんだんと冷たくなっていった。


アン

「ルチル、ごめんな。こっちは今ヒスイが勉強しているんだ。布団を用意するから、テレビを観ていてくれ。」


ルチル

「あ、はい。」


ルチルは台所を離れて居間へ向かった。何だ、なんか時化た雰囲気だったなー。勉強難しいのか?と思いつつ、ルチルはテレビのリモコンを手にした。こんなもの、ルチルの家にはない。家賃が高騰している綾港では、アパートに住むだけでもかなり金がかかった。


生きるのには金がかかる。しかし、皮肉にも人々は平等ではない。平等なのは、時間だけなのだろうか、残念ながらエスパーの手にかかればそれすらも平等ではなかった。綾港の人々にもきっちりと格差があった。


下の中にいるルチルは、幼いながらも関家でそれを感じていた。


ルチルはリモコンを手にしてチャンネルを替え、子供騙しのバラエティーを観ていた。





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