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山の上のマンション 〜うさぎの管理人と、ひとり暮らしの瞳さん〜  作者: まーサンタ


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15/19

第15話


昼を少し過ぎた頃。


私は食器を片づけ、テーブルの上を整えた。


窓の外を見る。


朝よりも日差しが高くなり、山の木々が明るく見える。


今日は祝日。


急ぐ予定もない。


それでも、冷蔵庫の中を思い出してみると、いくつか買っておきたいものがあった。


私は小さなバッグを持った。


財布を入れて、玄関へ向かう。


靴を履き、部屋を出る。


廊下には静かな空気が流れていた。


私はエレベーターの前に立ち、ボタンを押した。


やがて扉が開く。


中へ入り、一階のボタンを押す。


扉が閉まる。


エレベーターがゆっくりと下へ向かい始めた。


十五階から、十四階。


十三階。


窓のないエレベーターの中では、階数の表示だけが静かに変わっていく。


三階で、扉が開いた。


「あら、瞳さん」


そこに立っていたのは、猫の小林さんだった。


「こんにちは、小林さん」


「こんにちは」


小林さんが乗り込む。


「これからお買い物ですか?」


「ええ。瞳さんも?」


「はい。少し買っておきたいものがあって」


小林さんは持っていたバッグを見せた。


「私も今日は買い物です」


「昨日、百貨店へ行かれると言っていましたね」


「そうなんですよ」


小林さんが笑った。


「昨日は少し離れた百貨店まで行ったでしょう? 今日は近くのお店だけです」


「そうでしたか」


「昨日は思ったより人が多くて疲れちゃいました」


「祝日でしたからね」


「そうなんです」


小林さんは少し肩をすくめた。


「でも、見たいものはちゃんと見てきましたよ」


「それならよかったですね」


「ええ」


エレベーターは静かに下りていく。


「瞳さんは、今日は何を買うんです?」


「食材を少し。それから、お茶も見ようと思っています」


「やっぱりお茶ですね」


「なくなると困りますから」


「瞳さんらしいです」


小林さんが笑う。


私もつられて笑った。


「小林さんは?」


「今日は日用品です。それと……」


少し考えてから、小林さんが続ける。


「何か甘いものを買おうかなと思っています」


「まあ」


「最近、少し甘いものが欲しくなるんですよ」


「秋ですからね」


「それ、関係あります?」


「どうでしょう」


二人で笑った。


エレベーターが二階を通過する。


あと一階。


小林さんがふと思い出したように言った。


「そういえば、今日は管理人さん、朝から忙しそうでしたね」


「いなばさんですか?」


「ええ。祝日でもいつも通りですよね」


「そうですね」


「少し休めばいいのに」


小林さんは呆れたように言った。


私は思わず頷いた。


「私も、そう思います」


「でしょう?」


「でも、言っても聞かないんですよね」


「そうなんですよ」


二人とも、同じことを考えていたらしい。


エレベーターの中で、また笑った。


一階に到着する。


扉が開く。


エントランスには、昼の光が差し込んでいた。


「では、行きましょうか」


「ええ」


私たちは一緒に外へ出た。


マンションの前で、歩く方向が分かれる。


「私は駅のほうへ行きます」


「私は反対側のお店へ」


「では、また」


「はい。お気をつけて」


小林さんが手を振る。


私も軽く手を振り返した。


そして、それぞれの道へ歩き出した。


少し歩いてから、私は振り返った。


小林さんも同じように振り返っていた。


目が合う。


小林さんが笑う。


私も笑った。


ほんの数分のことだった。


けれど、こういう何気ない時間が、最近は少し嬉しい。


同じマンションに住んでいる。


ただそれだけなのに、顔を合わせれば自然に言葉を交わせる。


私は再び歩き出した。


買い物を済ませたら、家へ戻ってお茶を淹れよう。


今日は、どんなお茶にしようか。


そんなことを考えながら、私は秋の街を歩いていった。

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