魔法世界、そこで起きたこと
夢を、見た。
「…今まで話す機会なかったから言ってなかったけど、俺武術教わってるんだわ。だから、んなへろへろパンチ避ける価値すらねんだわ」
夢にしては鮮明な、自分自身がそこにいる感覚。
いや、夢ではない。きっと何かのきっかけで繋がったんだろう。
事実、入れ替わったという自覚はあるからな。
「黙れつってんの。てめぇに向かって言葉を発してんだよ。んなこともわからねぇのか?」
自分より明らかに年上の女に対して言葉を放つ。
…割と好き勝手言っていいよな?腹立つし。
…なーんて思ってたら、ドス黒い「暗黒」の感覚。
結局、あまり時間は経たないまま自分の出番は終わってしまったようだ。
自分が主役の芝居の役者にでもなった気分だった。
〜〜〜〜〜
夢を、見た。
意識が少しずつ覚醒していく感覚と共に、自分のいる場所を思い出す。
ここは、どこか暗い部屋。俺は質素な固いベッドの上で横になっていた。
「ん…」
俺がそこで眠っていると、何やらコツコツと足音が聞こえる。
「出て」
少女の声と同時に、ガラガラという重い音。開き切ると同時にガシャンという金属のぶつかる音が小さく暗い部屋にこだまする。
そう、今俺がいるのはまさに牢と言うべき場所である。
「…」
俺は無言で寝返りを打つ。
「出てよ、早く」
「んあー…」
「あーもうっ!早く出てよぉっ!ていうか、牢屋で寝るのはやめてっていつも言ってるでしょ!」
自分を促す、とても真剣な声。
から、いきなり可愛らしく怒り出す。
まぁ、無理もないだろう。寝てる場所が寝てる場所だから。
「いいじゃんよ…減るもんじゃないし…暗くて寝やすいから落ち着くんだよここ…」
ベッドは固いけど。
「むーっ!確かに減らないけど!牢屋で寝るのは流石にどうなのって話なの!」
部屋にいないとびっくりしちゃうの!探したんだからね!と言われつつ、入ってきた少女に体を大きく揺さぶられる。俺は少し呆れ気味に体を起こす。
「わかったよ、今起きる。だからあんまり怒らないでくれ…かわいい妹よ」
俺はそういうと同時に、少女の頭を撫でる。すると妹はニヘラッと笑う。
「えへへー」
「もしかして、最初機嫌悪かったのは布団に潜り込めなかったからか?んで、文句言うついでに起こしに来たのか?」
「うん!」
「まったく…」
屈託のない笑顔を浮かべる少女の頭をわしゃわしゃと撫でる。
…俺は別に幽閉されていたわけじゃない。
ただ、暗くて落ち着くし何より静か。ベッドが固いのが難点だけど。
まぁ、そんな牢屋で一夜を過ごしていた。それだけ。
なんなら、点検のついでってのもある。
そして、今俺が頭を撫でた少女は、俺の妹。名前は天田 流奈こと、【ルナ・イグニース】俺の1個下の14歳。
(そっか、俺には妹がいるんだ。でも、なんで俺は忘れていたんだろう…
…自分の意識が、断片的にだが追体験しているのを認識している。ある程度の補完なら、出来そうな感じだ)
「にぃさま、早くいこ。みんなにぃさま待ちだよ?」
流奈は俺のことをにぃさまと呼ぶ。
歳は一つしか変わらないのにな。かわいい。
「ん、わかった。一緒に行こうか」
そう言って俺は流奈とともに二人で屋敷の食堂へ。
魔法世界の俺は、なんていうか特殊な身分というかなんというか。
とにかく、父親が1つの領地を治めている程度には高い身分…なのかな。そこまで意識したことないから、よくわからない。
「やっぱ俺が最後だった?」
食堂へ向かうと、既に家族全員揃っていた。遅れた俺に対して父さんこと炎の聖戦士、【リージュ・イグニース】が話しかけてくる。
「また牢屋で寝てたのか?お前も好きだなぁ」
「だって、暗いところのほうが寝るとき落ち着くし…」
「はっはっは!暗いところが好きなのはやっぱりそっくりだな!」
豪快に笑う俺の父さん。父さんはこの街を治める領主であると同時に、高名な考古学者だ。母さんの【ミーチェ・イグニース】も同じ。だからこそ、二人はウマが合ったんだろうなと俺は思っている。
ちなみに、よく俺たちを置いて夫婦で遺跡発掘に向かったりしている。
…因みに両親共にまだ30代。大分若い時に俺が生まれたみたいだ。
少し前。
具体的には2週間前かな。両親が妹を連れて遠征に向かった。場所は詳しくは聞いていないが、何かしらの組織の拠点を潰しに行ったらしい。
そっから帰ってきて、これから紹介する下の妹共々かなり甘えてくるようになった…というよりも、雰囲気がめちゃくちゃ変わった。
「おはよ、お兄ちゃん…」
「ん、おはよう。由衣」
俺はもう一人の妹、由衣の頭を撫でる。
今頭を撫でたこの子が天田 由衣こと、【ユイ・イグニース】。俺のもう一人の妹で3歳年下の12歳。
そして、イグニース家の次女である。
イグニース。
それが、魔法世界での俺たちの姓だ。天田というのは、祖父が東方の出身で、そこから来た名前である。
(…と、いうのは恐らく建前。2つの世界で同調したときに、両方の名前を持ってた方が何かと面倒がないからだと思う)
それにあやかり、俺らは天田姓と、イグニース姓の二つを持っている。
ちなみに、俺のこっちの名前はジーク。【ジーク・イグニース】になる。ミドルネームで「天田・I・康治」、のような感じじゃないのは何か理由があるらしく、成人したら聞かされるらしい。
康治っていう名前を反対から読んでそれっぽい感じにした…とは両親の談。祖父の代から東方の血が濃く受け継がれているのもあり、本名のほうが天田になる。
基本的に、俺をジーク呼びする人はほとんどいない。まぁ、俺も康治で統一してるし、好都合。
実際、俺の両親は二人とも東方の名前があり、母は東方出身。
…つっても、最近はほぼ東方の名を使用することはないみたいだけど。
食卓に座り、俺も朝食を食べる。
そんな中、俺はさっき見た夢の話をする。
「そういやさ、なんか妙な夢を見たんだよね…」
「ほう、夢?」
「うん。…なんかこう、俺が学校の制服みたいなものを着て、ヒステリックなおばさんと対峙してるんだよね。
それで、周りにも同い年くらいの奴がいっぱいいて…なんかこう、「僕」に対していろいろ言ってたから、俺がキレちゃって…」
「あははっ!お兄ちゃんが「僕」だなんてらしくない!」
「ははっ、自分でもそう思うよ。…でも、なんか妙に実感あったなぁ。…父さん?」
「ん、あぁいや。そうか、変な夢だな、はっはっ」
「…?」
どこか誤魔化すような、父さんの態度。
なんか、心当たりでもあるのかね。まぁ、考古学やってるとそういう事はよくあるのだろうか。
(やっぱり、あの時は「俺」が乗り移ってたんだ。夢といった形で。時間のずれに関しては…よくわかんないや)
「さて、今日は何をするかわかってるだろうな?」
朝食を食べながら、父さんが言う。
「うん、確か今日は聖戦士の定期集会があるんだよね?」
「そうだ。だから今日は駅まで皆を迎えに行ってほしい。町の自警団や冒険者達とも、きちんと連携をとって町の人々に危険が及ばないようにな」
聖戦士の心配は全くしていない。彼らの実力を考えればまぁ、当然か。
「了解。まぁ、よっぽどのことがない限り大丈夫だとは思うけどね」
「うん。何せ聖戦士勢ぞろいだもん。天変地異でも起きない限り大丈夫だよね!」
「違いねぇや」
聖戦士。
聖戦士の説明をする前に。
俺たちの住む魔法世界には、当たり前のように魔法の力が存在していることを知るべきだろう。
〈地〉〈水〉〈火〉〈風〉〈氷〉〈雷〉〈光〉〈闇〉そして〈命〉の9つの属性。
命の属性ってのは、色んな創作物を見てきたが、あまり聞かないんじゃないかな。
属性に関しては書いて字のごとく。それぞれの自然の力を司る。
命属性は、命の名の通り傷を癒したり、毒などから来る体の異常を消し去ったり、命に関わる力を操る属性だ。
世界共通の法で対人戦闘での使用は禁じられてはいるが、「生命活動の停止」だってさせることが出来る。
主にきちんとした立ち会いの下、医療行為における安楽死の為に使用されている。
尚、停止した生命活動を再び行わせる死者の蘇生は、「不可能」であると結論が出ている。
たとえ出来たとして、意思の存在しないアンデッドが生まれるだけだと、過去の研究で明らかになっている。
なぜ明らかになったかって?
…悪い奴っていうのは、どこにでもいるもんだから、さ。
更に最近の研究では、時間と空間を操る属性、〈時〉と〈空〉の属性が存在する。という研究結果が出ており、一部で魔導機による実用化がされている。
人による扱いが定まっていない属性として現在も研究が進められている。
魔術や属性については何百年も続く概念とは言え、まだまだ研究が続くってことだ。
尚、科学もそこそこ発展している。魔力を使用し、それを科学技術で反映させた「魔科学」と呼ばれるもの。
「駅」というからには、勿論鉄道も発達しており、世界全土に張り巡らされて…いるわけではなく、その計画が現在進行中、らしい。
少なくとも俺達の住む大陸は鉄道が通じている。
さっき言った「一部実用化された時間、空間属性の魔導機」は、この鉄道に深く関わっている。
詳しくは、そのうち。
魔科学ってのは魔力をただ消費するだけではなく、世界へ戻し循環させる機構を備えたものだ。エネルギーが無駄にならない。
今は一つの都市でのみ魔科学は研究されていることから、その都市だけ大きく近代化が進んでいる。
それ以外は、中世…ほどではないが、昔のような街並み。最近は建築様式も近代化が進んでいて、そこら辺にはそこそこ魔科学の産物がある。
どちらかと言うならば、舗装道路がない田舎のような。そんな感じがしっくり来るかな。
鉄道や魔科学は、ここ30年で急激に発達。世界的に近代化が進みつつある。
前置きが1000文字とかなーり長くなってしまったが本題の聖戦士。
聖戦士というのは、それぞれの属性で最も強い力を持つ血族に与えられる称号のようなものだ。その大きな力を持つ血筋で、「聖なる力」を大きく体に宿す者。それが聖戦士。
聖なる力っていうのは…まぁ簡単に言えば聖属性。この聖なる力の通称も〈聖属性〉だし。
勿論、これに反する力も存在する。それが、「邪の力」と言われているもの。これも、通称は〈邪属性〉だ。
一体どんな違いがあるのか、そうだな…属性のくくりが違ってくる…といった感じかな?
例えば、『聖なる力を宿した火属性』それに反するものが『邪の力を宿した火属性』…といった感じだ。もちろん、『火は氷と反する属性』っていう括りもある。
簡単に言えば、『聖と邪という大きな2個の箱』の中に、さらに細かくなった『9つの属性という玉』があるといえばわかりやすいだろうか?
この括りのおかげで聖なる闇、邪なる光なんてものもあるから、その手のものが好きな人にはたまらない。
正直、この括りを覚えるだけでも相当時間がかかる。故に義務教育の一環として世界中の人々が教わっている。
聖戦士っていうのはそれぞれの属性に存在している。
だから、現在聖戦士の家系は9つあるということだ。
そして、今日はその定期会合をこのイグニース領地でやる。
しかし、時と空については、研究段階ということもあり、現在それに特化した力を持つ人間は現れていない。
だが、大昔は命の属性が同じような扱いだったのもあり、今度必ず時と空属性の聖戦士は現れると言われているし、現れないとも言われている。学者達は日々研究と議論を重ねている。
そう言う情報は学者つながりからか、父さんがよく持ってくるし、目だけでも通しておけと常日頃から言われている。
解説ばっかりで飽きるし読みにくいだろうが、話はさらに変わる。
俺らが住んでいる〈グロウ・テーレ〉と呼ばれる大陸について。
俺たち聖戦士の中でも最も聖なる力…聖属性の力に長けた『聖王』の治める聖都グロウを中心に、9つの属性の聖戦士たちが分かれて領地を統治している。
世界での通称は「聖戦士大陸」だなんていわれている。
それぞれの治め方は聖戦士たちによって違っている。まぁ悪政を敷く聖戦士はいないのは当然だが、その中でもイグニースの領地はかなり特殊だと言われている。
まぁ、それに関しては見た方が速い。
「お、康治さんに、流奈さんに由衣さんじゃねえですか。今日は朝から飛ばしてますかい?」
流奈と由衣を連れて、町に出ると一人の屈強な男が話しかけてくる。彼はこの街の自警団の一人だ。
「ん?自警団なら聞いてないか?今日は大陸の聖戦士がここで会合やるって…」
「おー!そういやそうでした!俺様としたことがつい忘れちまったぜ!」
「頼むぜホント…」
とまぁ、少し話しただけではわかりにくいと思うけど…ぶっちゃけ住んでる人達のガラが悪い。故に、俺たち炎の領地は「イグニースは荒くれの集う町」とも言われている。
だが、それには少し語弊がある。正確に言うならば「『元賊』の集う町」の方が正しい。
荒くれよりもタチ悪りぃか。
イグニースの守りの要である自警団。ここに所属する連中は、職を失い賊になってしまった人や、行き場を失ったどこかの町や村の人々。
そして、父さんや俺が外を出歩いてるときに、賊に襲撃されたのを撃退し、その賊に対して「行き場がないなら町の自警団に入らないか?」「行く当てがないのならばイグニースに来ないか?」「賊やってるよりか遥かに楽で人に感謝されるし気持ちいいぞ?」と勧誘した人ばかり。
とはいえ、俺も父さんもとある場所…要は牢獄に引き渡すべきかどうかきちんと見極めた上で声をかけている。
無論、引き渡すべき人間だと判断したら容赦なく引き渡しているし、処断も行うことがある。
そして、彼らは「俺らを拾ってくれたあなた達には恩義を感じている」と、態度で示してくれている。
だからこそ、今自警団の連中は正義感、そして義理人情に溢れる好漢ばかりだと、自信を持って言える。
…あっ、女性もちゃんといるよ?基本的に性格荒かったり、気が強かったりするのばっかだけど。みんな気のいい、優しいやつ。
とまぁそんな感じで、イグニースの領地は相当特殊だと他の人達は言っている。
でも、こんな連中ばかりだからこそ経験を通じて、賊に遭遇した時の対応や、賊に襲われないための対策を町の商人や旅人たちに伝授しているし、要請があれば護衛任務だってこなす。
その話を聞くためにわざわざイグニース領地までやってくる旅人や商人も少なくはないことから、信頼されていることがわかるだろう。
特殊だと言われはするものの、否定したり、疎まれたりするようなことはない。…だからこそ、聖戦士のみんなも自警団たちに信頼を置いてここで会合を行うなんてことが出来るのだ。
俺たち3人は今話しかけてきた荒くれを伴い、自警団の詰め所へ。
「あ、アニキー!」
俺たちが中へ入ると、一人の女の子が俺に声をかける。金色のショートヘアーで、どこかボーイッシュさを感じさせるが、まだあどけなさを若干残している。
「なんだ、ロゼも来てたのか。呼びに行く手間が省けて助かったよ」
彼女は【ロゼリア・リンドブルム】。ここからかなり北へ行った地にある雪国、グラン・イスベルグ帝国。そこで一番の騎士の家系の出身…だった。
ある事件を境に帝国に追われる身となり、流れに流れて俺たちの住むイグニースへたどり着いた…というわけだ。
そして、このロゼリアを俺はロゼって呼んでいる。
彼女は、由衣の護衛騎士、という名の友達だ。由衣と同じ年齢だから、そこそこウマが合うようで、よく2人で遊んだり剣の訓練をしていたりする。
なぜ彼女が俺のことをアニキと呼んでいるのかは、話すととても長い。いずれ来る時が来た時に話そうと思う。
…因みに彼女はそこそこのお嬢様。
イグニースに来てから、意識して口調を変えたそうだ。
「うん、昨日由衣に直接こっちに来といたほうがいいって言われたから。今日、この町で聖戦士の会合やるんでしょ?」
「なんだ、由衣が話しといたのか。それじゃあ…」
俺はこの自警団で一番の実力者である、ロゼの父親に話しかける。
「オスカーさん」
「ええ、話は分かってますよ」
彼がロゼの父親で、かつて帝国内で雷光の騎士と呼ばれていた【オスカー・リンドブルム】。
ロゼの時にも言ったように、とある事件があってから帝国を追われ、父娘共々ここにやってきた。
雷光の騎士とも言われた程の実力は、自警団どころか大陸、いや世界でトップクラスとも。なぜ帝国がこんな手練れを手放すような真似をしたのか理解できない。
と、色々な人から言われている。
そんな彼の実力と人間性を知っているから、自警団の連中や町の人々、そして聖戦士からも厚い信頼を受けているし、彼もそれに応えてくれている。
「さて、今回の任務は聖戦士の警護です。聖戦士が町を訪れるということは、それを狙ったテロや、襲撃が起きる可能性があるということです。
聖戦士の警護も重要ですが、力を持たない町の人たちを守るのも、我々の仕事です。冒険者や、イグニースの警備兵たちとも連携を取り、町や自警団から誰も犠牲を出さないようにしましょう。
想定外というものは、いつだって起きるものです。臨機応変に、対応が出来るように努めていきましょう」
『おぉー!』
とまぁ、オスカーさんはすんごい真面目。普通の荒くれなら、真面目一徹な人は嫌うもんだろう。しかし、ここの連中はそんな真面目一徹なオスカーさんに文句も言わずついていく。なぜなら…
「そんで、今日の仕事が終わったらいつも通り酒場で酒盛りじゃあっ!てめぇら絶対に手ぇ抜くんじゃねぇぞぉ!」
『おおおぉぉぉぉーーーーー!』
この人、かなりの酒豪。毎日のように仕事終わりに酒を飲んで、それで翌日ケロっとした顔で来るという。オスカーさんに酒で勝てた人は俺が知る限り誰もいない。肝臓が心配だ。
荒くれの連中は、酒飲みの場でのオスカーさんの人となりを知っている。だからこそ彼についていくし、彼の一人娘であるロゼにもかなり気をかけている。
ちなみに、さっき叫んだような口調が素らしい。俺たちや父さんに敬語なのは、自分と娘の命を救ってくれた恩人だから…だそうだ。
…まぁでも、騎士が目上の人に対して話すときって、あーいうもんじゃないの?と俺は思っている。
で、後から聞いたんだけども。今回部下たちに真面目口調になったのは後から酒が美味くなるかなーと思って試してみただけらしい。
「それじゃ、そろそろ布陣についてもらおうかな。予定ではそろそろ鉄道が到着―――」
カーンカーンカーン!カーンカーンカーン!
突然響く3回繰り返される鐘の音。これは、町に危険が迫ってるときの合図である。
「…3回の繰り返し…!外で何かあったか!様子を見てくる!
団長のオスカーさんは一緒に来てくれ!自警団の動きを指示する!自警団は緊急配備!町の人達の避難準備最優先だ!」
「わかった。おめぇら聞いたな!反撃は考えるな!まずは町の人たちの避難が最優先!」
『イエス、キャプテン!』
「流奈、由衣、あとは…ロゼ!付いてきてくれ!」
俺たちは5人で町の入り口付近にある見張り台へ。
「どうした!」
「大移動ではない魔物の大群がこっちに向かってきてます!」
「あぁ!? 双眼鏡を貸してくれ!」
見張りの兵から双眼鏡を受け取り、兵の指さす方向へ。
そこを見ると、巨大な土煙とこちらに向かって突進してくる魔物の大群の姿。
普段見かける、大移動の感じじゃない…なんだろう、何かに統率されているのか…?
…今の自警団の戦力じゃ迎撃は難しいだろうと、俺は判断する。
「こいつは…!『危険度最大、緊急避難開始』鳴らせ!」
「わかりました!」
俺は合図を出すよう指示をし、下で待たせている人間に声をかける。
「魔物の大群だ!何かに統率されてるような動きを見せている!スタンピードとも違いそうだ!
自警団は手筈通り町の人間の避難を最優先!現時点での戦力じゃ迎撃は難しい!
由衣!ロゼと一緒にギルドに行っていつもの連中を駅に連れてきてくれ!そのあとは自警団への伝令係だ!流奈は俺と一緒に駅に先に向かって聖戦士に助力を頼もう!」
「承知!」「うん!」「了解!」「わかった!」
オスカーさんは目にもとまらぬ速さで町へ駆けていく。由衣とロゼも同じだ。俺は見張り台から飛び降り、流奈を連れて鉄道の到着する駅へ。
「さすが、聖戦士。こういう時は対応が早い!」
駅に到着すると、既に聖戦士を乗せた列車が到着していて、聖戦士達は降りて待機をしている。もちろん、一般の人も降りて待機している。
「一般の人たちは自警団の指示に従って避難をお願いします!頼んだぞ!」
「承知!さぁ、こっちに!」
ロゼが連れて来た自警団のメンバーに先導され、一般の乗客の避難が行われる。
ある意味回想回。
この時は意識だけ追想してる感覚で、主人公は別の人間が見ていることを認識していないです。




