友人たちとの、短い話
それからのことは、あまり話したくないことばかりだ。
まぁ、あんな「特別推薦枠」なんてものをもらったんだ。
「不正だ」「裏金だ」「認めない」「ありえない」
などという罵りを受ける羽目になるのは必然だと思う。
僕は特別推薦枠のことは隠していたんだけど、どこかから情報が漏れたらしい。
…まぁ、僕自身かなり胡散臭いものだって思ってるし、その罵りは当然と言えば当然だとは思う。
学校での扱いは、今までよりひどくなった。3年間で最悪と言えるくらいには。
担任以外の教師からの暴言や誹謗中傷も増え、もう一切の遠慮がなくなったように思える。
幸いなのが、下級生はこれにドン引きしていて、まともな感性を持っているのがわかるということ。
進路のことを気にしなくても良くなったからか、以前ほど思いつめることはなくなったけど、それでも大人からの理不尽な詰め寄りは、やはり心に響く。
心配になった麗姉が直接学園長に聞きに行ったらしいが、はっきりと「大丈夫、心配いらないよ!絶対、絶対入学させるから。何があっても」と力強く言われたために、心配はしないでいいと言われた。
そんな時、僕は別のクラスにいる数少ない友人の一人から空き教室に呼び出されることとなる。
「なぁなぁ、ちょっといいか?」
今は昼休み。止まないいじめにうんざりしていたところに話しかけてきたのは、僕の友人である川田 真二
一人になった瞬間を狙って、ササっと話しかけてきた。
「…なに?」
「ちょーっとここじゃ話しにくいから…こっちこっち」
「えー…でもあんまりここにもいたくないし、行くよ」
そう言われて、人目に付かないように付いていくと、空き教室には僕の数少ない、信頼している友人たちが勢ぞろいしていた。
「…よし、ほかに人はいないよな?」
「いないいない。先生のお墨付きだ」
そう言って真二は教室の鍵を閉める。
「…なに?ついにみんなまで僕を糾弾するつもり…?」
「あー、ごめん。そんなつもりじゃないの」
手を振りながらそういったのは、僕らの女友達の松川 三奈
「…その、如月学園の特別推薦枠だけど…」
三奈がそういうのとほぼ同時に、三奈が僕のもらったものと同じものを取り出した。
「はっ、えっ?」
僕はそれにただただ驚いた。まさか、同じものをもらっているなんて思わないから。
「実は私も同じもの、もらったの。特別推薦枠ってことで入学を認めますって」
「だからさ、お前がもらったって話聞いて、いてもたってもいられなくなったんだよ。
だってよ、これもらってるのお前と三奈だけだぜ?」
そういうのは僕のもうひとりの友人、空乃 正明
「…一応、私も友達だと思ってたから、ちょっと嬉しいかな。これもらったの知ったとき」
「確かに。僕の友人だからって一緒に遊んだりしてたけど」
先に言葉を発したのが、木下 歩美で、後に言葉を発したのが水上 智也
この二人、中学生にして既に男女の付き合いとかいう羨ましい限りのリア充。
ここにいるメンバーは小学生の頃から一緒に遊んだりしてる、親友関係。特に三奈は空手をやっていて、僕のいる道場にもたまに来て組手をしたりしてる。一緒に遊んでいるのは、そんな縁からか。
ほかの友人は、僕の趣味であるテレビゲーム関連で知り合ったようなもので、集まった時はその話ばかりしている。
歩美は、智明と付き合いだしたあたり…もう1年前くらいか。そのあたりからの友人関係。三奈とはかなり仲がいい。
「んでさ、お前あのクソババア…ってか学年中から相当嫌われてるだろ?だから人目につかないとこで話しとこうかなって」
「先生に相談したら空き教室使わせてくれたんだ」
僕の友人は全員別のクラス。僕はみんなに気を使って、あまり自分と関わらないようにしてほしい…なんて言ってるけど、そんなのお構いなしに話しかけて、絡んでくる。
クラスの連中からの罵声からは庇ってくれるし、出来るだけ一緒にいてくれようとしたり。いい友人を持ったと、僕はいつも感謝している。
「…よかった。本当によかった」
「まぁ、あんな感じじゃあ誰だって勘違いするよね…あんたならなおさらよ」
「だけど、俺はこの特別推薦枠ってもんが少し妙に思えて…だってよ、去年まではこんなもの全くなかったらしいんだぜ?なんで今年になって突然こんなもんを…」
「なんだっていいでしょ?みんな同じ学校にいくんだから。高校に入れば、康治の幼い頃の記憶だってきっかけくらいはあるかも知れないでしょ?」
実はここにいる全員が如月学園への入学を希望している。というよりも、この学校からも結構な割合が如月学園の入学試験を受けるらしい。
「…根拠は?」
「ほら、如月学園って県外からも人が来るでしょ?それで、あなたが昔別れた女の子、なんかにも会えるかも知れないじゃない?」
昔別れた女の子。僕が唯一覚えていた…のかどうかは判断に困るが。
とにかく、僕は昔「大きくなったらまた会おう」って約束してた女の子が居る。それだけは確か。
何故かはわからないが、この想いだけははっきりと覚えていた。
まぁ、このことは友達にしか話してない。さすがにこれを話したら学校全体から痛い子扱いされかねない。…とはいっても、おそらくバレてはいるだろう。
その後僕たちは話もそこそこに、教室に戻ることになる。…あんまり戻りたくはなかったけど、昼休みだったし、午後の授業もあるから仕方ない。
午後の授業も、相変わらず僕に対する糾弾会。
特に教師陣は、願書の提出を拒んで僕の進路を妨害するつもりだったらしく、その苛立ちを隠そうともしない。
「お前みたいな奴は中卒で充分なんだがなぁ!?生意気にも進学を考えやがって!」
「特別推薦枠?いくら積んだらそんな枠が貰えるんだぁ?」
等、言葉を選ばない暴言ばかり。
体育会系の教師なんかは「根性を叩き直す!」といった名目で暴力を振るう。
同級生もほとんどが僕に「裏口入学」「恥晒し」「とっとと死ねばいいのに」など、もう理由なくただ言いたい放題なだけにも思える。
僕の友人達も、教師の根回しで僕に近づけないようにしているらしく、僕は言いたい放題されていた。
こんなところ、早くおさらばしたい。
なんて考えながら、月日は流れていき…




