自宅にて、幼馴染達と妹と
俺たちは家に着き、そのまま両親は聖戦士同士で話を行うみたいだ。
俺は…案内するところもないので一緒に来た子たちを俺の部屋に案内する。
「…ふぅ」
「あれ、ため息なんかついてどうかした?」
ため息をつく俺に話しかけるティアナ。
「なんか、いきなり非日常に放り込まれたなーって思っている自分と、ついにレーヴァテインが見つかるのかーって思ってる自分がいてさ。…何とも言えないんだよ、この感情。多分まだめちゃくちゃ混乱してる」
…それに、女の子を部屋に上げるとは思ってもみなかったため、部屋は結構散らかってる。
「まぁ、仕方ないですよ。私だって今自分が別の世界にいるだなんて思えないですし…」
窓から外を見るフェミリィ。この辺りは都会とは言えないとはいっても、住宅街。
魔法世界の俺たちの住む国なんかとは大違いの光景に、何とも言えない表情をしている。
「そうね、私も同じだわ。イルもそうでしょ?」
「んー、まぁ…ボクはある程度下見させられてたし、あんまり感動はないかなー」
「あはは…」
そんな会話をよそに、俺は二人の妹、流奈と由衣を見る。
「な、二人とも。久々に帰ってきた感覚…と言っていいのかな。実際、どんな気分?」
既にこちら側の肉体を衰弱によって失っている流奈と由衣。だから、帰ってきた…と言っていいのか、なんとも言い難い表情をしている。
「…正直、誘拐されたのは10年以上も前だし、もう覚えてない。ただ、あの時はずーっとにぃさまに会いたいって気持ちが大きかったの」
「うん。お父さんとお母さんがいつか探し出してくれて…お兄ちゃんにも会えるって思ってたの。
でも、少し前に用済みになったのかな。食事も与えられなくなって…ずーっと放置されてたの」
「っ…!」
「つまり、二人は…」
餓死した、ということか…!
俺はそんな二人をゆっくりと抱きしめる。
「…こっちの俺はそんなことも知らねぇで呑気に暮らしてたんだな…ごめんな、何にもしてやれなくて…!」
「ううん、いいの。…2週間前、向こうの世界でいっぱい抱きしめてくれたでしょ?」
「なにより、お兄ちゃんがそう思ってくれただけで満足だよ…」
…遠征から帰ってきた二人が、脈絡なく俺に泣きついてきたのはこれが理由なんだろうな…二人の小さな笑顔を見て、俺は誓った。何が何でも、妹だけは守ってみせる。この命を懸けてでも、この二人は守って見せると…!
「でも、にぃさまこそ大丈夫なの…?」
「…何がだ?」
「ちょっとだけ、聞いたの。中学の頃、すごいいじめを受けてたって…」
「えっ…!?」
その言葉に反応を見せたのは真菜。
「まぁ、ね。卒業式前後にもいろいろあって確かに復讐とかお礼参りとか怖いけどさ」
黙ってみんなは話を聞いている。
「ま、師匠から武術使用のお墨付きも貰ったし、今の俺には…」
俺はサッと武器を出す。…見つかったら銃刀法違反だ。
「こいつもあるしな。魔法世界で培った武器術。その気になればその辺の枝や小石さえも武器に出来る」
魔法世界の俺は剣術を主としているが、趣味なのもあって、いろいろな武器に精通しようと日々努力している。
まぁ、ぶっちゃけ武器が好きでその知識集めてたら振ってみたくなって振ってたらいつの間にか上達してたーってのが本音。
他のみんなからは「才能自慢かコノヤロー」的ないじりを受けていた。
そして、魔法世界では習得しなかった徒手格闘術…銘苅流拳闘術も今はある。
「…そうだね」
真菜が同じようにして弓を取り出す。氷を模した飾りのついた真菜の大きさに合った弓。
氷の神器、アルテミス。
先日、継承の儀式を受けたようだ。
「私だって、こっちの私と違う。だからきっと、大丈夫だよね…」
どこか悲壮な決意を真菜から感じる。俺はその言葉に被せるように反応した。
「大丈夫、何があっても俺が守ってみせるから。ずっと一緒だって約束しただろ?」
「…うん、ありがと。ね、私も抱き着いてもいーい?流奈と由衣みたいにさ」
「…いいよ。みんないるけど」
「はぁ、相変わらず熱いわね全く…」
千春が同じように、風を模した文様の描かれた鞭を取り出す。
風の神器、シルフィード。
千春も真菜と同じ日に継承を受けたらしい。
「でもまぁ、私も概ね同じ気持ちよ。こっちの世界とは違うんだから、きっと…」
『うんうん!きっと大丈夫よ!私たちだってついてるんだから!』
『うん。僕もみんなと同じ』
武器から聞こえる2つの声。この声が、神器にのみ宿ると言われている精霊の声だ。
「ミスティ…」
「フィー…」
アルテミスの精霊が【ミスティ】
シルフィードの精霊が【フィー】という名前。
「心配しなくたって、なるようにはなるわよ。だから、気負わないでね」
みんなを安心させるティアナの一言。
そして、今ここにいるメンバーが、全員武器を取り出し、その武器たちの先端をそれぞれ合わせる。
「きっと、大丈夫さ。なんか、みんなと一緒にいるとそう思えるんだ。それにさ…」
「ん?」
「なんか、予感がしてるんだ。俺たちはもしかしたらもうここには戻ってこないんじゃないかっていう予感」
「うーん…なんか悪い意味に聞こえるけど…そうじゃないのよね?」
俺の言葉に反応する千春。言葉通りに受け取らないあたり、やっぱり警戒心が強いと言えるのだろうか。
「悪い予感じゃないのは確かだよ。そう、言うなれば…新天地を見つける、そんな感じ」
―――今思えば、俺はその言葉がまさか現実になるなんて、この時はそう、思ってもみなかった。
その後は特に変わったこともなく、翌日を迎える。
真菜と千春は家に帰り、ティアナ、フェミリィ、イルの3人は真菜の家に泊まるみたいだ。
余談。
「そういや、真菜って隣に引っ越してきたんだ?前と同じ家みたいだけど」
「うん。本当は入学式前に会いに行きたかったんだけどね。父さんが入学式まで接触しないほうがいいかもって言ってたから会いに行けなかったけど」
入学式まで接触しないほうがいいっていうのは、おじさんたちは事前に俺のいじめについて聞いていたからだろう。
俺と接触して、高校入学前に巻き込まれてほしくなかったんだと思う。
「俺は春休みは師匠の言いつけで道場で寝泊まりしていたからなぁ。全く気付かなかったよ」
今思えば、師匠によって仕組まれていたのかもしれない。あの人意外とサプライズ好きだし。
「あ、そうなんだ。道場って、この近くにあるの?」
「うん、そうだよ。だから歩いて通ってるんだ。ところで、千春はどうなんだ?」
「私は相変わらず両親が多忙なのよね。だから真菜の家に居候させてもらう形になるわ」
千春の両親の多忙…恐らく、魔法世界のことだろう。風の領地は行商人が集う、貿易の要だからな。その関連の忙しさなんだろう。
「そっか。ならこれからは一緒に学校に行ったりできるな」
「えへへ、そうだね!」
真菜の喜ぶ顔を見ると、俺も嬉しくなる。
流奈と由衣はここが帰る場所だ。
何のためにあるかわからなかった部屋で、俺もほとんど足を踏み入れなかった部屋。
そこが、流奈と由衣二人の住む部屋であり、帰ってくる場所だ。




