会合で語られる、衝撃の事実
時間は流れ、聖戦士の会合。
「さて、まずは…」
俺の父、リージュがあたりに目配せをする。
普段なら、現役の聖戦士。俺たちの親世代に当たる人達。本来はその人たちだけで進められるが、魔物の襲撃という事件があり、その事件に関わった…ということもあって、次代の聖戦士…若い世代の人間も全員参加している。
…今後、俺たちがこれを引き継ぐことになるだろうからその訓練も兼ねて、らしい。
「今回の事件について何かわかったことがあれば報告を」
「それじゃあ、魔物の殲滅に回った俺たちからいいか?」
フェイト兄が手を上げ、発言する。
「魔物や動物の種類に、特に特徴はなかった。強いて言うなら、このあたりで見ないような奴が少し紛れ込んでいた…程度だな」
「魔物たちの死骸を調べたが、闇属性の禁術の痕跡が発見された」
「捕縛を行った面々からの情報を踏まえ、暗黒教団の仕業ではないかと既に目星をつけている」
2人目にしゃべったのが【バリー・ソンブール】闇の聖戦士の一人だ。
3人目が【ビリー・ソンブール】彼も闇の聖戦士で、バリー兄とは双子であり、双方ともに23歳だ。
二人には俺と同い年の妹がいるが、これも後に紹介しようと思う。
「残りは犯人を捕縛した奴に聞いてみようか」
フェイト兄に目配せをされ、俺は立ち上がり発言する。
「…ビリー兄の言うように、今回のことは暗黒教団の仕業でした。まず、これが奴の持っていた魔装具です」
俺は厳重に封印を施された魔鳴り笛を取り出す。
「この封印は、この町に先日やってきた妖精族のルーファにやってもらいました」
俺はルーファを立たせる。今回の事件について詳しく解説してくれそうだから一緒にいてほしい、と俺の父に言われたため、同席している。
「は、はい!えっと、まずはこの魔鳴り笛なんですけど、まず音についてです。
これの音は、若い子…人間なら大体14歳くらいまでの子供しか聞き取れないほど高い音です。
それで、その音は魔物を操るために調整されている…というのが音についての説明です。でも、多数の魔物を操っているということで少し調べてみたら、これには禁術らしきものが施されていました」
ルーファは魔鳴り笛の説明をした後、魔鳴り笛に施されている禁術についての説明。
「詳しいことはわからないんですけど、「洗脳」と「本能増幅」…っぽいものが施されているのではないかと思いました」
「いや、ぽいって…」
その言葉に反応し、少しキレたルーファが言う。
「だから詳しいことはわからないんですって!私だって禁止魔術具は専門外なんだから!」
「あー、すまん。それはマギアの監察員に渡して厳重な調査と保管をお願いしよう。近いうちに到着するのだろう?」
「あ、はい。ギルド支部からそう聞きました」
「承知した。…それにしても、これで4回目か…」
「4回目?」
「あぁそうか、お前たちは知らなかったな。実は、イグニース以外にも暗黒教団が事件を起こしていてな。
イグニースで4回目だから、この会合で何か対策を練られないかと思っていたんだよ」
「…そう、ですか」
会合に少し暗雲が立ち込める。それを払いのけるように反応したのが…
「ふっふっふ…」
不敵な笑い声をあげる、マキュ姉こと、【マキュリー・ヴァッサー】だ。
彼女は水の聖戦士であり、若手聖戦士の中では最強の槍の使い手。俺や真菜、千春達…いや、若手の聖戦士達が束になっても勝つことのできないほどの実力者である。現実世界では如月学園の学園長だったな。
「マキュリー、何か策でもあるのか?」
「ふっふっふ…私は超名案を持ってきましたよー…!」
「…聞こう。その名案とは?」
「名付けて、科学の力を借りちゃおう作戦!」
「おい、まさか…!」
「その通り!これは成人組で前々から話していたことなんだけども…」
マキュ姉は少し真面目な顔になり、静かに言う。
「…もう、彼らに2つの世界のこと、話しちゃいませんか?」
「なっ…マキュリー!?」
「はっはっは…まさかそう来るとは…」
「…一本取られてしまった感がありますね…」
マキュ姉の言葉に驚く、聖戦士達。俺たち若者には、何を言ってるのかさっぱりだった。
「えっと、2つの世界って…?」
「…むぅ」
俺が質問を投げかけると、少し苦い顔になる。
「仕方ない…いずれ知ることだ」
ため息の後、そう言って父さんが話し出した。
「今我々が立っているこの世界とは別に、もう一つ、科学の力が発達した世界がある。地球と言う名前のな。
その世界には、東方の名を持つ火、風、氷、そして雷の4つの聖戦士…今ここにいるのは康治と真菜、千春だな。
この3人は、もう一人が別人としてその科学世界に存在している。そして、この事実は20歳を超えた聖戦士などは皆知っている」
もう一人、和名を持つ雷の聖戦士は…勿論面識はあるんだが、職業上の関係で現在ここにはいない。なにより今は紹介している余裕がない。俺もいろいろ混乱している。
「…ま、待って、三人!?俺と真菜と千春は、わかるよ。でも、流奈と由衣は?二人も東方の名前を持つ…俺の妹だろ!?」
俺は驚きと戸惑いを隠せなかった。真菜と千春…いや、それ以外の若者たちも驚いている。流奈と由衣は少し暗い顔になっている。
「実はな…むぅ、これは全員の前で話していいことなのか…?」
「うーん、どうなんでしょうか…」
「流奈、由衣、どうだ?」
「…話しても、いいと思う。にぃさまには知っておいてほしかったし…」
「…そうか。ならば、ここにいる全員に、今ここで告白させてもらう」
俺の父さんが、意を決したかのように言葉を紡ぐ。
「…科学世界の流奈と由衣は、もはやこの世にはいないと言っても、過言ではないのだ」
「…は?」
父さんの言葉に、俺は何も言えなくなる。既にこの世にはいないって…どういうこと?
「な…!?どういうことだ!」
俺の代弁をするかのような風の聖戦士、【ゲイル・ヴェント】の言葉。
「向こうの世界の流奈と由衣が、暗黒教団に浚われてしまったのは知っているだろう?」
「あぁ、確か向こうの康治の記憶がなくなった原因の一つだろう?」
『…俺の記憶は、二人が浚われたときに、そのショックで消えちまったのか…』
その言葉に――俺は現実世界と言うことにするが、とにかく向こうの俺が驚いている。まぁ、無理もないか。俺もかなり驚いたし。
「1ヶ月ほど前に、2人の居所を発見してな。
その場所は、暗黒教団の支部だった。…発見した流奈と由衣は、衰弱がとても激しくて、最早助かりようがなかった…!」
父さんは拳を握りながら話している。…つまり、発見したときにはもうダメだったということか…
「だから、この子たちを助けるために既にこの子たちには事情を話し、私の独断で2つの世界の肉体を同調させた。何も相談しなかったのは悪かったと思っている、だが、最早これしか方法がなかったんだ…!」
聖戦士達は静かに父さんの言葉を聞いている。
「なるほどな…」
「ふむ…」
「マキュリー」
各々が、何やら納得のいった様子で頷く中、水の聖戦士がマキュ姉に話しかける。
「おまえ、これを知っていたのか?」
「…いや、完全に初耳。現実世界で見つかったとは聞いていたけど…まさか…」
マキュ姉は唇を噛みしめる。怒りをギリギリのところで抑えているようだ。
マキュ姉の行動を見て、頷いた後、意を決したように、水の聖戦士【ヴォーダ・ヴァッサー】が、俺の父さんに話しかける。
「なぁ、リージュ。きっとこれも運命だろう」
「…」
「お前の判断は間違ってはいないさ。ここにいる聖戦士達が保証する。あちらの流奈と由衣の命が助かった。それでいいじゃないか。
それに、こいつらは今回の襲撃をいとも簡単に解決して見せたじゃないか。…ならば、委ねてみようじゃないか」
現代の聖戦士達が立ち上がり、父さんの下へ。そして、若手の聖戦士達に向けてこう言った。
「…若手の聖戦士達、数日後に水の領地へと集まって貰えるだろうか?」
「お父さん、それじゃあ…!」
「時期は早まったが、向こうがそこまでやったんだ。最早なりふりは構っていられんだろう。
…奴らが我々を目の敵にしているのは知っていたが、流奈と由衣の命を奪うとは思わなんだ。このままでは真菜、千春、そして康治とその仲間たちの命も危ない。
何より、科学世界の人間の観点なら新たな事実も見えてきそうだ」
「故に、数日後に水の領地で、4年早いが同調の儀式を執り行う。炎の聖戦士のメンツもかかっているしな」
「…すまない、感謝する」
「あ、じゃあ段取りとかは私達に任せてほしいな!4月で、康治くんも16歳でしょう?だったら如月学園の入学式が近いから、聖戦士総力を挙げて、面白い入学式にしちゃおう!」
その後、マギアからやってきた大使により、暗黒教団の男が勾留されるのを確認。
この男、マギアから禁術書を盗み出した大罪人だったらしく、マギアの大使から大きく感謝をされた。
だが、この男の持っていた禁術具、魔鳴り笛。これが予想をはるかに超えたものであったことを、俺たちはあとで知らされる。
しかし、この辺りは今は語らないでおこう。
その数日後、俺たちは仲間を連れて水の聖戦士の領地に向かう。
途中、聖都グロウに寄り、聖王への謁見を果たす。その時に、この魔鳴り笛の予想外の正体に大きく驚かされた。
…あぁ、やっぱりそろそろ追憶の魔術の効果が切れそうだ。
さらにその数日後行われる如月学園の入学式に、オリエンテーションという名で体の慣らしをさせるから、仕込みを手伝ってほしい…
そういわれて、全員でノリノリで準備を手伝った。イルを案内役にさせようと企んだのは、実は俺。
んで、イル達を地下に送ったのは準備が間に合っておらず、時間稼ぎのため。地下の案内役は、アル姉急遽ドッキリを思いついたみたいで。
…裏目に出たみたいだけど。
最後が少し駆け足になってしまったが…迷宮で俺が俺という存在を認識したところで、意識が完全に覚醒。時間切れだ。
その辺りの顛末は、話せる時が来た時にでも話そう。




