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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第3章:南の霊樹、神至る深淵

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第1話:黄金の国への招待

北の聖域から南へと向かう旅路。


それは、これまでの雪景色とは対照的な、生命の色彩に満ちたものだった。


 南の大陸へ足を踏み入れた瞬間、一行を包み込んだのは、むせ返るような緑の匂いと、肌をなでる温かな湿気だ。


見上げる空を隠すほどに高くそびえる巨木たちが、陽光をして黄金色の木漏れ日を地面に落としている。


「わぁ……。お兄さん見て! お花が、私の顔より大きいよ!」


「本当だね、リナ。……なんだか、空気がすごく濃い気がするよ」


 アルドは深呼吸をし、聖剣『星凪』の柄に軽く手を置いた。


彼にとってこの「濃い空気」は、単なる湿気ではなく、この大地に満ちる膨大な魔力――世界樹の息吹だと感じ取っていた。


 一行の前方に、一団の騎兵が現れた。中央に立つのは、見覚えのある金髪の青年。


 先日、アルドの「抜き打ち稽古」を受けた南の王太子が、正装に身を包んで待ち構えていた。


「よくぞ……よくぞ来てくれた、アルド殿! 貴公という方を我が国に迎えられること、これ以上の誉れはない!」


 王太子は馬から降りるなり、アルドの手を固く握りしめた。


その掌には、アルドとの稽古でついたマメがまだ残っている。


「王太子さん。わざわざお迎えありがとうございます。……あの、体のほうはもう大丈夫ですか?」


「ははは! 貴公の『御教授』のおかげで、以前より遥かに体のキレが良い。……さあ、母上(霊樹皇)も首を長くしてお待ちだ。我が王都『ルミナス』へ案内しよう」


 アルドたちが歩き出す中、ミラは扇で顔を半分隠しながら、潤んだ瞳でアルドの背中を追っていた。


「(……いよいよ、南の国。リナの縁談が上手くいけば、次はいよいよワタクシとアルド様の……モゴモゴ)」


 南の情熱的な気候のせいか、ミラの妄想は北にいた時よりもさらにヒートアップしており、一人で顔を真っ赤にして口を動かしている。


「……ミラ様。先ほどから何をブツブツと仰っているのです。熱中症ですか?」


「な、何でもありませんわ、ゼクス! それより見てご覧なさい、あの木々を。……美しいけれど、少しだけ、元気がないように見えませんこと?」


 ミラの鋭い指摘に、ゼクスも眼鏡の奥の瞳を細めた。


 王都へ向かう街道の両脇。


一見、豊かな緑に見えるが、葉の先端は微かに枯れ、風に揺れる音もどこか乾いている。


 アルドもまた、歩きながら周囲の木々にそっと手を触れた。


「……みんな。なんだか、木が『助けて』って泣いている気がするんだ」


 アルドのその呟きが、これから始まる未曾有の危機の予兆であることを、まだ誰も知らなかった。


 一行を歓迎するはずの王都ルミナスの城門には、王太子の笑顔とは裏腹に、杖を突き、険しい顔で待ち構える「ハイエルフの長老たち」の姿があった。


「……王太子殿下。よもや、このような『異端の者』を、霊樹が病むこの時期に招き入れるとは。……此度の災厄、この者たちが持ち込んだ不浄によるものではないと、誰が証明できましょうや」


 アルドの南の大陸での第一歩は、歓迎の宴ではなく、冷ややかな糾弾の声から始まった。



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