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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
2章 北限の聖域

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【幕間:南からの使者、そして……】

北の聖域、アルドのログハウス。


 西の龍皇城から戻った翌日の昼下がり、リビングにはいつものように穏やかな時間が流れていた。


 アルドが丁寧に淹れたお茶を飲みながら、リナがふと、彼の横顔をまじまじと見つめて首を傾げた。


「ねぇ、そういえばお兄さん。……お兄さんって、私たちが初めて会った時から、全然見た目が変わらないよね?」


「えっ? そうかな。自分じゃあんまり分からないけど」


 アルドがのんびりと答えるが、リナは真剣な表情で指を折って数え始める。


「出会ってからもう五年以上経つのに、シワ一つ増えてないし、背が伸びた感じもしない……。やっぱり、この前龍皇様が言っていた『龍の因子』が関係してるのかな。……お兄さん、もしかしてずっとそのままなの?」


 龍の因子。


食べた魔力を己の不滅の力へと変える特異体質。


それがアルドの時をも止めているのだとしたら。


「ははは。もしそうなら、リナやカイルが大人になっても、俺だけずっと『お兄さん』のままでいられるね。それはそれで、悪くないかもしれないな」


 アルドが優しく微笑むと、その言葉に反応したのはカイルだった。


「よーし! だったら俺も、これから毎日トカゲの肉を山ほど食べるぞ!!」


 カイルはガタリと椅子を鳴らして立ち上がり、拳を握りしめた。


「お兄さんみたいに強くなって、ずっとずっとこの家を守れるようになるんだ! 先生シオンに稽古をつけてもらって、トカゲも自分で狩って……俺、絶対にお兄さんみたいな『無敵の男』になってみせるよ!」


 少年の瞳には、かつてないほど強い決意の光が宿っていた。


 アルドは、そんなカイルの頭を「期待してるよ」と優しく撫でる。


 そんな、どこまでも平和で尊い光景が続いていた、その時。


 コンコンッ、控えめにログハウスの扉をノックする音が聞こえた。


 扉を開き現れたのは、いつもより少しだけ頬の赤い、どこか誇らしげな表情を浮かべたミラだった。


「アルド様 ……お客様がいらしてますの。」


「ミラさん? どうしたの、それにお客様って……」


「南の霊樹皇国から、王太子の使いの方が参られましたわ。」


 ミラの背後から、見覚えのある紋章を纏った騎士が、緊張の面持ちで一歩前へ出た。


その手には、豪華な装飾が施された招待状が握られている。


「……北の賢者、アルド殿とお見受けする。私は南の王太子殿下の名代として参った。……先日の『御教授』、殿下は深く感銘を受けられ……ぜひ一度、アルド殿とそのご家族を、我が国の『霊樹の祭典』に国賓としてお招きしたいとの仰せだ!」


 南の王太子。


先日、アルドが「リナの婚約者」の見極め(肉体言語)でボコボコ……いえ、稽古をつけた相手である。



 どうやらあの時のアルドの規格外の力は、南の国で「伝説の賢者」の再臨として解釈されてしまったらしい。


「ええっ!? 俺が、国賓……?」



 アルドが目を丸くする。


「お兄さん?『ご教授』って?王太子様に何かしたの?」


 リナが、ベラドンナのような威圧がある笑顔でアルドに問いかける。


「あははっ……えっと……それは、」


アルドはリナへの言い訳を必死に考える。


笑顔まで(ベラドンナ)に似なくてもいいのにと、思いながら。



ミラは扇で口元を隠して


「ふふふ、これこそワタクシの描いた『全土統一』への完璧なシナリオですわ……」と密かに野望を燃やしている。


 アルドは少し困ったように頬をかきながら、リナや、カイルの顔を見て、使者団に告げた。


「……皆で行ってみようか。……南の国へ!」


「あーー!お兄さん、誤魔化した!」


リナの苦言が木霊する。


北の雪解けと共に、一家の物語は次なる舞台――緑豊かな南の大地へと向けて動き出す。


 不変の兄と、成長を誓う勇者。


そして恋する魔王と聖女たちの旅路は、次の物語へと続いていくのだった。



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