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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
2章 北限の聖域

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【幕間:龍皇の戦慄と神への階梯】

西の大地、雲を突くようにそびえ立つ龍皇城。


邪神の魔圧で瓦解していたその城も、今は復興の槌音が響き、穏やかな空気に包まれていた。


「よくぞ来てくれた。ミラ殿、そして……アルド殿。此度は余の城へ、客人として迎えられることを誇りに思う」


 玉座から降りて出迎えた龍皇の瞳に、かつての狂気はない。


その纏う空気は、まるで長年連れ添った隣人のような、温和で好々爺としたものへと変わっていた。


 一行は応接室へと通され、ゼクスが事の経緯を説明する。


アルドがドラゴン(トカゲ)を食すことで力を得ているという推測を聞き、龍皇は深く頷いた。



「……なるほど、アルド殿の力の源ですな。確かにドラゴンは魔力の結晶。それを糧とする者が現れても不思議ではない。……だが」


 龍皇は、穏やかながらも鋭い眼差しをアルドに向けた。


「少し、アルド殿の中(魔力)を、覗かせてもらってもいいだろうか? 余の龍眼ならば、魂の奥底に眠る因子の正体が見えるかもしれん」


「ええ、構いませんよ。どうぞ」


 アルドが屈託のない笑顔で答える。


龍皇は一つ頷くと、その瞳を黄金色に輝かせ、アルドの精神の深淵へと意識を潜らせた。


 ――瞬間。


「…………っ!!?」


 バチッ、という火花が散るような音と共に、龍皇が激しくのけぞった。


彼は自らの頭を両手で押さえ、荒い息をつきながら膝をつく。


「龍皇さん!? どうしたんですか、大丈夫ですか!?」


 アルドが慌てて駆け寄るが、龍皇は戦慄に震える手でそれを制した。


「……リジェクト(拒絶)された……。余としたことが、恐れ多い……。魔力抵抗値があまりに強すぎて、余の力では底までは覗けなんだ。……あれは、深淵どころではない。宇宙をそのまま飲み込んだような絶大な『無』だ……」


 龍皇は冷や汗を拭い、ようやく顔を上げた。


その顔には、隠しきれない敬畏の色が浮かんでいる。


「だが、垣間見えたものもある。……確かにアルド殿には、龍の因子が魂の根幹にまで深く結びついているようだ。アルド殿の力には、単なる魔力以外にも、その『龍因』が大きく影響している」


「龍の因子……。やっぱりトカゲを食べすぎたせいかなぁ」


アルドが困ったように頬をかく。


龍皇は苦笑しながら続けた。


「体に悪影響はない。むしろ、その因子がアルド殿を不滅に近い存在へと押し上げている。……もしかすると、アルド殿も『龍人』……いや、その先にある『龍神』へと変身できるかもしれんな」


「ええっ! お兄さん、変身できるの!? 格好いい! おとぎ話の主人公みたいだ!」


 カイルが目をキラキラさせてアルドの袖を引く。


「ははは、変身かぁ。そんな大層なことができるのかな……。でも、カイルがそんなに喜んでくれるなら、今度頑張って変身の練習でもしてみようかな?」


 アルドがのんびりと発したその言葉に、ミラと四天王たちは一斉に硬直した。


「(……ま、待って。今でも世界を『一掃』できるのに、これ以上変身なんてされたら、この星自体がアルド様の色に塗り替えられてしまいますわ!)」


 ミラは戦慄し、ベラドンナとゼクスは「更なる高みがあるのか……」と絶望にも似た驚嘆を覚える。


ゴルドに至っては「アルド殿が龍になったら、俺様の筋肉じゃ一生勝てねぇじゃねぇか!」と笑いながらも震えていた。


 シオンだけは、「さすがはマスター。某の想像を遥かに超えておられる……」と、その尊大すぎる師の背中に、より一層深い崇拝を捧げている。



「やっぱり、お兄さんは素敵だな」


 リナは、一人だけ純粋な敬愛の気持ちを瞳に宿し、アルドの腕に抱きついた。


 アルド本人は、自分の体質の恐ろしさなど一向に気に留めず、「龍皇さん、お礼に今度うちで美味しいトカゲ料理をご馳走しますね」と提案し、龍皇を(同族を食べるという意味で)複雑な表情にさせるのだった。


剣聖の秘密。


それは、家族にとっての「安心」と、魔王たちにとっての「恐怖」、そして勇者にとっての「憧れ」を乗せて、さらなる未知の領域へと続いていく。



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