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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
2章 北限の聖域

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【幕間:剣聖の秘密、龍の因子】

北の聖域の夜は、いつも通りの賑やかな団欒に包まれていた。



 テーブルの中央には、アルド特製の「トカゲ(飛龍)の肉と冬野菜のクリーム煮」が湯気を上げている。


「ふぅ……。今日も美味しいなぁ。お兄さんの料理を食べると、なんだか体が熱くなって、力が湧いてくる気がするよ」


 カイルが幸せそうに喉を鳴らし、ふと、素朴な疑問を口にした。


「……ねぇ、お兄さん。お兄さんって、いつからそんなに強いの?」


 その問いに、食卓の空気が一瞬だけ止まった。


 ミラが優雅にフォークを置き、カイルの代わりに口を開く。


「カイルとリナがワタクシたちと出会う二年前、アルド様はすでに今の……『お掃除・・』の力を持ってらっしゃいましたわ」


「えっ、二年前!? じゃあ、お兄さんは生まれた時からずっと無敵だったの?」


 アルドは「うーん」と首を捻り、煮込み料理のトカゲ肉を頬張りながら記憶を辿る。


「いや、そんなことないよ。最初は結構弱かったんだ。ただの村人だったし、森で大きなトカゲに追いかけ回されたこともあったよ。……ああ、でも。そういえば、そのトカゲの肉を食べるようになってからかな。魔力っていうのかな、周りの空気がよく見えるようになった気がするんだ」


 その言葉に、それまで黙々と食べていたゼクスが、カタリとスプーンを止めた。


「……アルド殿。今、『トカゲの肉を食べてから』と仰いましたか?」


「うん。この辺りのトカゲ、硬いけどじっくり煮込むと美味しいんだよ」


 ゼクスが、眼鏡を指で押し上げた。


その瞳には、学究的な熱が宿っている。


「……考察します。通常、ドラゴン種の肉体には生存活動を維持するために大量の魔力が蓄積されています。人間がそれを摂取した場合、大抵は魔力に当てられて体調を崩すか、あるいは微量に魔力が向上するカイル殿やリナ殿のような体質の人もいると聞きますが……」


 ゼクスは立ち上がり、アルドの周りをゆっくりと歩きながら、まるで未知の魔導書を読み解くような視線を向けた。


「……アルド殿。貴殿の体は、恐らく摂取した魔力源を100%の効率で……いえ、それ以上の倍率で己の力に変換してしまう『究極の特異体質』なのではないでしょうか。おとぎ話に語られる『龍を喰らって神に至る者』そのものではないかと」


「ガハハ! 喰ったら強くなるって、そりゃあ夢のある話だなゼクス! じゃあ俺様を喰ったら、アルド殿はもっとムキムキになんのか?」


 ゴルドが豪快に笑い飛ばすが、ベラドンナは真面目な顔でアルドを見つめた。


「……ワタシもゼクスの意見に賛成よ。アルド殿、貴方のその力はあまりにも規格外すぎるわ。一度しっかり検査というか、調べておいた方が良いと思うの。心配だわ」


「マスター。……某も、その意見に同意いたします。マスターが健康であることは、我ら家族の願いゆえ」


 シオンも、師を想う真剣な眼差しで頷く。


 当のアルドは、「えー、ただの食事なんだけどなぁ」と困ったように笑うが、ミラがキッパリと宣言した。


「決まりですわ。近いうちに、西の王……龍皇に聞きに行きましょう。彼ならば、ドラゴン種の魔力循環について、この世界の誰よりも詳しいはずですから」


 「トカゲの肉を美味しく食べていただけ」というアルドの無自覚な習慣が、世界の理を覆す秘密に繋がっているのかもしれない。


 家族の温かな心配と、ミラが抱く密かな確信。


物語は、アルドの「起源」へと少しずつ歩みを進めていく。


「……龍皇さんに聞くのはいいけど、お土産は何がいいかな? やっぱりトカゲの干物?」


「アルド様! それだけは、絶対に持っていってはいけませんわよ!!」


 ミラの叫びが響く中、剣聖の秘密に迫る「家族旅行」の準備が始まった。



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