表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/136

129. 禁忌

 玲の部屋で、


「これ、こっちではカミツレって言うんだけど、カモミールティー。好きだったろ?」


 ハーブティーを湯飲みに注いで、玲が私に渡してくれた。私はありがとうと笑って、一口いただく。


「おいしいね!」


 私が笑うと、玲もほっとしたように微笑んだ。それを見て、私は気になっていたさっきの夢の話を切り出した。


「……さっきの話、どんな夢だったの?」


 玲は、少し視線を逸らして。


「去年の今頃、なんかちょっとぎくしゃくしてたっておまえが言ってたこと、あったろ?」


 私は頷く。ちょうど一年くらい前、私はゴールデンウィークに玲と幸せな時間を過ごしたつもりだった。でもその後、なぜか玲が一歩引いたような感じになって、私は自分が何か無意識にいやなことをしたのだろうか、お別れと言われたらどうしよう、と思っていた時期があったのだ。


「あの頃、……正確に言うと、五月の連休の後くらいから……俺がおまえをこっちに連れて帰ってきたら、おまえが刺客にやられるって夢見てて……まあ実際、翡翠は西軍の刺客に狙われたことが過去に何度かあって、それは想定される危険だったんだけど……それで、実はおまえに対する態度が一歩引いてたんだ」


 初めて言われて私は驚く。 玲は続けた。


「それで、今朝の夢は……もう戦はなくなったから刺客じゃなくて、おまえが風狼(カゼオオカミ)にやられて……。それで、目が覚めて嫌な予感がして、速水の家に行ったらいなかったから……」


 私と目を合わせずに、玲ができるだけ軽い感じで言おうとしていることが伝わって、でも、その手が、肩が何か微かに震えてるような感じがした。

 私は思わず、玲をそっと抱きしめていた。玲は私の肩に頭を預けるようにして、ふと息をつく。


「だいじょうぶだよ、私、ここにいるから」


 私の声に、うん、と玲は頷いた。



     ◇



 身体を離して、私はもう一度カモミールティーを飲み、少し二人で沈黙していた。

 そこで、不意に玲が言った。


「でも、もう、おまえのことも泣かせないし、俺も大丈夫にする、から」


「どういうこと?」


 きょとんとする私に、そこの台の上に置いてる扇を取って、と玲が言う。

 私は、舞の時に玲が使っていた扇、ベッド脇の台の上に畳んで載せられていたそれを、彼に手渡した。


「こうしたらいいって、さっき風呂に入ってて気付いたんだ」


 玲、さらっと開いた扇で、自分の腕の傷跡……私が操られて傷つけたそれを一~二度なぞる。

 すると、その傷はうっすらとした細い線を残して、ふうっと消えた……。まるで魔法みたいに。

 あまりにも驚いて、数秒間沈黙した後で、私は言った。


「なっなんで? どうして消えたの? いま」


 呆然と呟く私に、玲はかすれた声で呟く。


「魔を祓う力を、……舞のときの……それを、今、傷に流したから……もう、おまえは何も、気にしなくて……」


 言いかけて、だらりと力が抜けて……目の前にいた私にもたれかかるようにして、玲は意識を失った……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ