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風に舞い散る勇者の如し  作者: いもたると
第四部

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157/206

サルは優越、釣り糸は垂れる

「俺、異世界のイカを釣ってみたいんだよ。な?あんたらだって食糧にイカを必要とするだろ?なんか、魚群マップみたいなの持ってないか?」

 ダンジョンにあるのは、海といってもあくまで異世界の海である。イカもアオリイカとかヤリイカなんかではなく、異世界のイカである。

 だとしたら、こんなところで油を売っていないで、とっとと異世界に行くべきであろう。イカ釣りだけでなく、日々の糧食を確保するためにも、釣りをする機会はたくさんあると思う。

 だがウチの盗賊曰く、「ここの漁場はここにしかないんだ!」ということで、それが「目の前にお宝があるってのに、みすみす引き下がってたんじゃ盗賊の名折れだ!」という、全然関係のないところに結びつき、「俺たちは何の為にダンジョンに潜るんだ?異世界に行ったときのスキルを身につけるためだろう。向こうじゃサバイバルに次ぐサバイバルの連続だ。魔王を倒す前に食糧の問題でのたれ死んでちゃ、本末転倒だぞ。ここで釣りの腕を磨いておくことが、異世界を救う道なんだ」と、小憎たらしいだけの三段論法によって本質的な本末転倒へと導かれた。

 釣りも屁理屈が加わると厄介になる。いや、屁理屈は何と結びついても厄介になる。森羅万象+屁理屈→厄介。これが屁理屈化合物の化学反応式だ。いや、ネズミ君のせいだろう。

「何でもかんでも聞けばわかるというものではないぞ。なんじゃ、あの最近のルーキーがドラフト会見で誰々先輩に聞きたいとか言うのは。昔は技術は先人がやるのを見て、自分で盗むものじゃった。そういうものじゃから、またその人オリジナルの技が生まれるのじゃ。今の若造は調べればどこかに答えがあると思っておる。じゃが、検索して見つけた答えが偏見によるものであったらどうするのじゃ?簡単に誰かの操り人形になってしまうぞ。それは知識を所有しているようでいて、実際は知識に所有されているのじゃ。よいか、真実とは、誰かが整理してくれた情報として与えられるものではない。混沌の中でもがき苦しみ、自らの肉体と精神を通して経験し、果てなき懊悩と葛藤の末にようやく一条の光を見出すといったような、そういうものなんじゃ。まったく、これだから最近の若いもんは…」

 とはいっても、おそらくこの老人も若い頃は当時の老人から、最近の若いもんはなっとらん、と言われていたのだろう。その当時の老人にしたって若い頃はなっとらんのであったのであり、それは何代でも遡ることができる。

 反対に、僕らが老人になったときにも、きっと若い人を見て、最近の若いもんはなっとらん、と言うのであろう。そしてそれは永遠に繰り返される。

 即ち人間は代を重ねるごとに、よりなっとらんのであり、ゆっくりと堕落へと進んでいくのである。ということはご先祖様になればなるほど、なっとらなくはないということになる。

 究極のご先祖様、つまりサルは人間に対して何を感じるか。優越感である。

「なあ、じーさん。言ってることはわかるよ。でも、こう見えて最近の若いもんだって昔のものを敬ってんだぜ。ネットで昔のアニメの動画とか見て、この頃はいい時代だったんだなぁ〜って、感慨にふけることもなきにしもあらずだ」

「ネット!アニメ!それこそ知を滅ぼす悪の二大巨頭ではないか。ネットで得た情報だけを真実と思い込み、漫画を読んだだけで賢くなったと勘違いしておる輩が、大所高所から軽蔑的な意見を吐いて自己満足しておる!じゃが真実とは、漫画のコマとコマとの間にある。ネットに書かれていない部分にこそある。そこに気づかねば、知識を得ても天狗になるだけじゃ」

 なんてことをブツクサ言いながらも、シルバーフィッシュは大体のことを教えてくれた。なんだかんだ言っても嬉しいのだろう。ここの図書館に学生が来ることなんて滅多にないのだ。可変性の高い顔がほころんでいる。

 それによると、地下二階はほぼ南北に分けられることがわかった。北半分は僕らがこれまでに経験したエリアだ。その西側は大きく分けて、便所キリンのいる南エリアと蛭狐丸たちがいる保育所の北エリアとに分けられる。地下二階東側はほとんどが海だ。

 ダンジョンは地下六階建て。一つの階は15m四方を1ブロックとして、それが東西南北に21個ずつ並べて造られている。上から見れば一辺が315m四方の正方形だ。天井の高さは5mである。

 地下一階から二階へ下りる階段は東と西に二つ。ここで南西の角を(東.北)の座標で(1.1)と表せば、西の階段は(3.13)の位置にある。南西の角から数えて東に3ブロック、北に13ブロックという意味だ。

 その階段から下りたところの扉を開けて北へ進むと、そこ(3.14)からは便所キリンが生息するトイレ回廊である。このトイレ回廊という名前はネズミ君が適当に付けたもので、僕は相応しいとは思わないが、改めて別の名前を付けるのも面倒なので、そう呼んでいる。

 この便所キリンというのは、一見するとただの便器が床から生えているように見えるのだが、近づくと全長5mはあろうかというキリンの首が出現するという、恐ろしいモンスターだ。今ふと思ったが、彼らのエサは何だろう。深く考えないことにする。

 逆L字型のトイレ回廊をキリンの攻撃をかいくぐって進むと、終点に東向きの扉がついている(6.15)。

 ここから出ると今度はL字型の通路だ(7.15)。すぐ北隣(7.16)には、西に行ける扉があって、先日僕らはそこから奥へと侵入した。扉の向こうは玄室で、さらに奥に行ける扉があるのだが、ここをロピックという電子系のモンスターが守っていた。

 僕らはロピックを動かそうと四苦八苦していたのだが、実はこれが罠で。警報を鳴らされて蛭狐丸たちに捕まってしまったのであった。

 そのときはどうにかこうにかシルバーフィッシュに助け出されたことは、前述の通りである。

 もうロピックはいないだろうし、その先にはどうやら宝箱があるようなのだが、それを取っていくことを蛭孤丸はよく思っていないようだったので、ここは諦めることにする。

 どうせ中に入っているのはお金である。お金なんて、天下のまわりものなのだ。自分のお金なんてものは、どこにも存在しない。ほんの一時、僕の元に来ては、また誰かの元に去っていく。そういうものだ。だからお金には執着しない。

 なんてのが、人生でお金を手にしたことのほとんどない、僕のお金に対する見解である。実に信憑性が心許ない。

(7.16)には、実は北に行ける隠し扉がある。扉は魔法で隠してあって、本来生徒たちは入っていけないようになっているのだが、そこから先にあるのが蛭孤丸はじめダンジョン生まれの二世たちを育てるための保育所エリアである。

 その中は、たくさんある小さな部屋を扉で繋いでいるような感じであったが、詳しいマップは不明だ。

 北に行かずに(7.15)から通路を逆に進めば、一つ南で東に折れて4ブロックで行き止まり(10.15)。ここの北扉を開けると南北2ブロックだけの通路がある。ここにも北向きに扉があるので、開ければまた同じ南北2ブロックの通路。

 今度は東に扉があるから、開けて進めば東西に3ブロック分の通路がある。一番西まで行くと桟橋が備えられており、船着場となっている(13.18)。先日僕らはシルバーフィッシュに連れられて、ここから船に乗って帰ったのであった。

 ちなみに東の端のブロックの北側には、やはりここも魔法で隠された扉がある。僕らが保育所から出て来た扉だ。

 で、さっきも言ったように、地下二階北東エリアは大体海。シルバーフィッシュに見せてもらった海図では、詳しい座標までは分からないが、地下二階北東四分の一は、ほぼ海だと考えていい。海の西側と南側は、一直線に壁が連なっていて、他のエリアとを完全に隔てていた。

 この海に行くのに一番簡単な方法は、地下一階東側にある階段(16.15)を下りることだ。するとそこは海の真ん中にある船着場である。階段を起点にしてトの字型に4ブロック足場があり、トの横棒のところには桟橋がある。先週シルバーフィッシュに率いられた僕たちは、ここから無事に帰って来れたのであった。

 以上が、地下二階北部のざっとした説明である。

 だから階段の周りでは、よく釣り糸を垂れている釣り人の姿が見受けられるわけで。

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