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風に舞い散る勇者の如し  作者: いもたると
第三部

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155/206

とにかく青春は浪費される

 週の残りはダラダラと過ぎていった。特にやることもない僕は、図書館(ダンジョンのではなく、学園の図書館だ)から借りてきた本を、自室にこもって、読むともなしに読んでいた。

 これで5月が終了。新しいエリアに踏み込むのは、新しい月になってからだ。

 なに、そんなに急ぐことはあるまい。

 こうしているうちにも救いを待っている異世界の人たちは、闇の大魔王の脅威に脅かされて暗い日々を送っていることと思うが、今すぐ僕らが行ったところで力にはなれない。

 退屈に本のページをめくっていると、この部屋で筋肉猫と一緒に徹夜でドンジャラをやったときのことを思い出した。

 あんなものに何の意味があるのかといえば、何の意味もない。

 ただただ純然たるエネルギーの浪費と青春の無駄遣いがあるだけである。

 けれど振り返ってみると、あれはあれで充実していたようにも思える。

 つい2カ月前まで縁もゆかりもなかったような人たちと、一つのドンジャラ卓を囲んで切った捨てたと熱くなる。

 あんなことができるのも、僕らが青春時代という特別な時間の流れの中にいるからであり、学生という隔離された身分を有しているからであろう。

 これが現実社会に出てしまった後になると、馬鹿げたことに貴重な人生の時間を費やすことはできなくなる。

 だからといって、もう一度彼らとドンジャラをしようとは思わない。

 だからといって、他に有用な時間の使い方を知っているわけでもない。

 でも青春とはそういうものではないだろうか。

 何かしたいエネルギーはあっても、それを何に使ったらいいかわからず、無駄に消費されていく。

 だとしたら、ボディビルに取り憑かれた猫と一晩中牌を取り合うというのは、正しい青春の過ごし方だと言えなくはないか。

 老荘思想風に言えば、無駄なものこそ有用なものなのだ。

 ここ半月ばかり、僕らは無駄なものに巻き込まれてきた。

 ダンジョンの図書館なんて本来訪れる必要はない。保育所にも行かなくてもいい。

 ネズミ君がエレベーターの鍵を開けれていれば、とっとと下の階まで行けていたのだ。

 でも回り道をしたおかげで、逃げる宝箱からたっぷりゴールドを獲得できて、生活の心配をせずに飲み食いしている。

 本の中の主人公と一緒に冒険したりもした。

 知られざるダンジョンの秘密についても、その一端を垣間見ることができた。

 そんなもの知らなくていいといえばその通りなのだが、まだ先は長い。異世界にはどうせそのうち行くことになるのだ。

 いや、行けるかな?いやいや、行くでしょう。うん、きっと行くさ。だってそのためにこの学園に入ったのだから。

 ちょっとぐらい回り道したって、構うまい。

 どうせ人生なんて、長い回り道みたいなものなんだから。


第3部(完)

第4部に続く

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