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風に舞い散る勇者の如し  作者: いもたると
第三部

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130/206

女子は強がり、意地を張る

 いつの間に!?どうして?

「へへっ、秘密兵器ってわけじゃないぜ、こいつは」

 ジャラッと得意そうに見せてくれたのは、十徳ナイフ。

 そうだった、そうだった。ネズミ君は附属中学の出身だから、洗礼の短刀を持ってるけど、本来盗賊科の初期装備は十徳ナイフだ。この人、ちゃんとそっちも持ってたんだ。

「こっちは俺に任せろ。お前はウーパールーパーを頼むわ。鉄子だけじゃ手に負えん」

 ネズミ君は続いて妙子のロープを解きにかかった。

「へ、変なところ触らないでくださいよぉ!?」

「まだなんもしてないら!」

「きさん、また破廉恥なことしよっとか!」

 新たな女性の敵の登場に女戦士の注意が削がれる。今は痴漢より両生類との戦いに集中してほしいのだが。

「さっきは俺も縛られてんのに、お前の縄を先に切ったからだろーが!」

 結局、触ったことは触ったわけか。

「ちょっとぉ、大したことのない下衆のくせしてエロ盛り上がりしないでくれる?チョー憎しなんだからぁ!」

 桃尻ルーパーがイラついてドンドンと足を踏み鳴らす。まあ、平安貴族から見りゃ一般人はみんな下衆だけど。

「ゲスはネズミ一匹で十分じゃああ!」

 鉄子は竹竿を振りかぶって、えいやっとばかりに敵の胴体部分に叩きつけた。

 ジャストミート!

 ううっと、脇腹を押さえて体を折るウーパールーパー。これは相当なダメージを与えたか?

「あっ、何すんのよ!」

 だが、声を上げたのは鉄子の方だった。ウーパールーパーは片方の手で、ガシッと竹竿を掴んだ。そのまま鉄子ごと振り回す。

「はっ、離しんしゃい!きゃあっ」

 身の丈に合わないかわいい悲鳴をあげて、ドウッと放り投げられる鉄子。敵に竹竿をもぎ取られてしまった。

「フ、フンだ!ぜーんぜん痛くないもん、こんなのっ」

 強がるなぁ。打たれたところ赤くなってるけど。

「竹バットなんか、どーせただの練習用なんだからねっ!試合じゃ使えやしないわよっ。こんな下衆が使うようなバット、こうしてやる!」

 バキッ!ウーパールーパーは膝を立てて竹竿を折ってしまった。

 うえ〜、凄い怪力。

「く、悔しかったらアオダモのバットで来なさいよっ。でも下衆のアンタたちまで回ってこないでしょうけど?最近じゃ希少になってるから、貴族だって上達部かんだちめクラスじゃないと手に入らないんだからねっ!」

 でも痛そうに膝をさすっているのが別の意味で痛いというか。やっぱり赤くなってるし。

「な、なんばしよっとぉ!」

「どこの方言よ、それ。田舎くさい」

「博多弁は女子が使ってばりかわいい方言ランキングNo. 1たい!」

「福岡なんて都落ちして行くところよっ」

「天神様を侮辱しよっとか!外国のナウいもんは全部太宰府から入ってきとっと!」

「なによ、中国かぶれ!国風文化舐めんじゃないわよ」

 女子2人が意地の張り合いをしている間に、僕ら他の3人は何もしなかったわけではない。

「おい、おっさん、おっさん!いつまで寝てんだよ。今こそアンタの出番じゃないのか」

「た、隊長!起きてくださいよぉ!」

「ミュウ〜」

 ネズミ君と妙子、及びゲンちゃんは、この物語の主人公を物語に戻そうと必死になっていた。

 考えてみれば、別にウーパールーパーと戦わなくともガマグチ隊長が芸を仕込んでくれればこの話は終わるんだよなぁ。しかし隊長はゲコーゲコーと高いびきをかいたまま、一向に起きる気配がない。

 僕は荷物のところまで駆け寄ると、デメキンのハンマーを手にした。

「だからァ、宮中以外は文明社会と言わないのよっ」

「田舎を馬鹿にする奴は許さん!」

 戦いの舞台の中心では相変わらず、京都対福岡の泥仕合が行われていた。

 現代ではあるいは福岡の方が上回るかもしれないが、平安時代にあってはどうしたって京都に軍配が上がる。自然と攻める京都に防戦一方の福岡である。それでも地元愛の強い女子高生の獅子奮迅の活躍によって、押しつ押されついい勝負となっていた。

 しかし注釈をつけねばなるまい。彼女の地元は推定()()である。

 それとウーパールーパーの原産地はメキシコである。

「こん貴族趣味がぁ!お高く止まりおって」

「なによ、田舎もん!」

「元、都のくせして!」

「都になってもない奴に言われたくないわよ!」

「邪馬台国は北九州だわよ!」

「近畿説に決まってるでしょ!」

「北九州!」

「近畿!」

「北九州!」

「近畿!」

 そしてどうでもいい方向に向かっていく。そうなのだ。ケンカをしたって、そこから生まれるものは不毛なものだけなのだ。

 ちなみに僕は九州説を支持している。最近は宮崎平野という説もあるので、北九州かどうかはわからない。鉄子には悪いがそっちの方がありそうな気がする。

 でも近畿はちょっと無理があるんじゃないかな。だって卑弥呼が女王になる前は倭国大乱でしょ?男の王が治めようとしてもうまくいかなかったという。

 ってことは、邪馬台国は武力が弱い。もし近畿説を採るとすると、関西から北九州にかけての瀬戸内海沿岸地域一帯を治めていたことになる。でなければ、魏と交流することはできない。

 仮にそれだけの広大な範囲を治めるとなれば、それ相応の武力が必要だ。それこそ大和朝廷並みのものが必要になる。

 だが邪馬台国は武力で戦乱を平定できなかったのだ。九州の小国家群の雄だったと考えた方が妥当だ。

 それに卑弥呼は占いによって国を治めていた。これは現代で言ったら情報で統治していたということになる。

 当時、情報が伝わるスピードは人が移動する速度と同じ。近畿説では広すぎる。伝言ゲームではないが、関西を出発した情報が九州に伝わる前に変質してしまうだろう。

 よって、邪馬台国は九州のどこかにあった。証明終わり。Q.E.D.

 いや、証明ではないな。仮説だ。いや、単なる作文か。

 それより早くこの戦闘を終わらせねば。

 僕はデメキンのハンマーを両手で持つと、ウーパールーパーの赤くなった膝に狙いをつけた。

 ちょっと卑怯かと思ったけど、甘酒に睡眠薬を盛るようなやつに言われたくはない。

「でいやっ」

「あ、痛っ!」

 ボインと、デメキンは狙ったところを打った。片膝をつくウーパールーパーである。


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