~お茶を飲みながら~
疾風の言葉に和馬は面白いくらい動揺を露わにした。
その様子をみて竜馬は笑い出すのを堪えるように唇をキュッと噛み締める。
「好き」と言われたセレスティアはといえば、特に動揺した様子も無く目を瞬かせて自分を見てニコニコ笑っている疾風を見返していた。
「まあ、ありがとうございます。私もハヤテ様が好きですわ」
「ティア様!?」
「お友達として、これからも仲良くしてくださいませ」
「こちらこそぉ、大将共々よろしくねぇ」
お互いニコニコを笑いながら言い、その横で和馬一人が焦ったりホッとしたりしている様子を見て、堪え切れなかったのか竜馬は小さく笑いを零した。
「ふ、ふふ…二人と仲良くしてもらえると、私も嬉しい」
「父上」
「ふふ…ごめんごめん」
笑い出した父親を和馬は軽く睨んだが、竜馬は気にした様子も無くクスクスと笑い続けた。
「統領はぁ、大将が大好きなんだぁ」
疾風はそんな二人を見てセレスティアの耳元で小さく教えた。
それを聞いてセレスティアも疾風の耳元に唇を寄せると同じく小さく囁いた。
「わかりますわ。お二人ともお互いが大切なんですのね」
「そぉそぉ。大将はぁ、素直じゃないけどねぇ」
疾風はそう言って柔らかく笑った。
「どうだったぁ?」
「はい?」
唐突に放たれた疾風の言葉にセレスティアはコテンと首を傾げた。
「隠密衆の屋敷の仕掛けぇ」
「こう言っては何ですが…楽しかったですわ。スリリングで」
セレスティアは屋敷の仕掛けを思い出し小さく笑った。
それを見て疾風は不思議そうに言った。
「怖くなかったのぉ?」
「カズマ様が守って下さいましたので、怖くありませんでしたわ」
「ふぅん…お嬢さんはぁ、肝が据わってるねぇ」
中には『死』に繋がるであろう罠もあっただろうに、目の前の少女は「スリル」だったと言い切った。
疾風はそんなセレスティアを面白そうに眺め、ニッコリ笑った。
そして耳元に口を寄せると「お嬢さんはぁ、大将のことぉ、好きぃ?」と聞いた。
セレスティアはその言葉に顔を赤くさせ、未だにじゃれ合っている百鬼親子に気付かれないように小さく頷いた。
それを見た疾風の顔は、パァッと明るくなり更に内緒話をするように耳元で言った。
「大将もぉ、お嬢さんのこと気に入ってるみたいだからぁ…頑張ってねぇ」
「そ、そうでしょうか?」
「…大将、案外分かりやすいと思うけどぉ?」
そんな素振りを見せているであろうに、セレスティアが気付いてないのはどうしてだろうと疾風は首を傾げ考えると、ピンと来た。
「あ、わかったぁ。鈴のことでしょぉ」
「っ!?」
自身の憂いを言い当てられてセレスティアは息を呑んだ。
そんな様子を見て疾風は腕を組んで頷いた。
「鈴は小さい頃から大将の事がぁ、大好きだからねぇ」
「そ、うなんですの…」
疾風の言葉にセレスティアは俯いた。
そんなセレスティアを見て疾風は慌てて言った。
「あ、でもぉ、大将は鈴のこと何とも思ってないからぁ。妹分としか見てないからぁ、安心してぇ?」
「そうなんですか…?」
セレスティアの不安そうな顔を見て疾風は安心させるように頷いた。
そして疾風は未だに言葉の応酬をしている和馬達を振り返って言った。
「ねぇ、大将はぁ、鈴の事好きぃ?」
「は? 何だいきなり」
「いいからぁ、答えてよぉ」
和馬は首を傾げながら「鈴は幼馴染だ。妹みたいに思ってるが…?」と答えた。
その答えを聞いて疾風は満足したのかにっこり笑った。
「ねぇ?」
疾風はセレスティアを見て笑みを深めた。
そんな疾風にセレスティアは頷きを返した。
「ありがとございます。ハヤテ様」
「どういたしましてぇ」
「二人で何の話をしているんだ?」
「大将には内緒ぉ」
疾風はそう言って人差し指を唇に当ててニッコリと笑う。
その仕草をセレスティアもマネをして二人で顔を見合わせて『シーっ』と言って笑った。




