出撃
いろいろと衝撃的な体験から数日後。
いや、たった数日後と言うべきかもしれない。
無事に……いや『ありえないことに』だ。
細川はレイガンを量産した。
おいおい。
ありえないだろ。
江戸時代の職人が蒸気機関を複製したのとはわけが違う。
いくら優秀な職人だからと言って、これはさすがに無理だ。
そしてもう一人。
「ぬおおおおお! 痛ッ! マジか! こんな痛いのか!!!」
吉田が悲鳴を上げた。
メイが俺の『煉獄』を吉田にコピーしたのだ。
人に移すときはそこまで痛いのか。
うーん不思議。
「おいおい。これくらいで悲鳴上げやがって、アゼルの操縦できるのか?」
俺は心配になって聞いた。
だって吉田が戦力になるかわからないし。
「シュミレータは死ぬほどやったから大丈夫だ。フフフ、この程度の痛みなど蚊ほどに感じぬ! 今日これから3年B組ロリコン先生の伝説が始まるのだ!!!」
吉田はムチャクチャなことを言っている。
ホント……こいつ酷い目に遭わないかな。
マッチ棒折れたりとか。
まあいいや。
今回の作戦は単純だ。
のこのこ歩いて出て行って攻撃されるなら、いっそ車両に載ればいいじゃない。
俺と吉田なら生き残ることができるだろう。
煉獄は行き当たりばったりだが。
あとは列車の運航日に上に乗っていけばいい。
よし!
と満足してた俺に
「ようし。煉獄を全員にコピーするぞ!」
「はい? 今なんて言った?」
「全員にコピーだが」
「全員って誰よ?」
「おい、吉田! 関係のないものは巻き込まない約束だろが!」
「いんや。巻き込む予定だ」
俺の背後で男の声がした。
サイガだ。
「領主代行として外の調査を命じた。抗生物質、消炎剤、解熱剤。どれも在庫が尽きかけている」
「おい! 俺の復讐に他人を巻き込むな!」
「だから言ってんだろうよ。お前の復讐じゃねえ。みんなのための調査だ。そのついでにお前は復讐でもしてろ」
そう言ってサイガはいつもの人の悪い皮肉を顔に貼り付けた。
「どうしてそこまでしてくれるんだよ?!」
俺は思わず怒鳴った。
だって俺にそこまでする価値はないだろが!
「だって友達だろ? 俺たちは」
そう言ってサイガは顔を背けた。
顔が真っ赤になっている。
恥ずかしかったらしい。
いやそこで恥ずかしがるなよ!
俺まで恥ずかしくなるだろ!!!
「それにアイツらも借りを返したいんだってよ」
「え?」
サイガが指をさした。
そこには屈強な男たちの姿。
それは闘技場の選手たち。
俺が倒した連中だった。
「タカムラさんよう。あの山岸がいたときは俺たちはおかしかった……俺たちは頭がおかしくなっていたんだ。お前さんのおかげで生き残ることができた。感謝するぜ」
そしてサイガはまた皮肉めいた顔で言った。
「全員、俺が買った。おっと無理強いはしてねえ。もう全員開放したぜ」
ここまで言われて断るのは男が廃る。
……ような気がする。
なんか吉田とサイガの手の内のような気がする。
「わかった。全員に煉獄をコピーする。出発まで闘技場で練習だ。医薬品を持ち帰るぜ!」
俺は背筋を伸ばし胸を張って宣言した。




