↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王女は、業に抗った  作者: 一石千月
第四章 愉快な仲間との長い一日
PR
30/107

第四章 第四節【二人で空へ】

 グラフ飛行艇製造の工場敷地内には、飛行艇の離着陸用ポートが備わっている。芝に覆われたその広大なスペースは、アライアル号のようなヴァレリも対応可能だ。考えてみれば、ターナが故障したプランタの緊急着陸を成功させたのも、この敷地に十分なゆとりがあったからかもしれない。

 カルザスは自分のプランタを格納庫からポート中央まで引いてきた。遮るもののない陽射しが、首筋をじんわりと熱している。

 車輪を格納すると、交換したばかりのBSカートリッジとともに、主水槽とタービンを目視で確認した。

「何か、プロっぽいね」と後ろに手を組んだターナが、素朴な感想を口にする。

「へ?」とカルザスは一瞬きょとんとしたが、すぐに笑顔で答えた。「まあね。飛行中にローターが止まったら、洒落にならないから。操縦は仕事の一環だし、こだわりはあるのかもしれないね」

「なるほど。『プロ』そのものってことね」


 カルザスは、後部座席左側に備えられたジャックに、ヘッドセットのプラグを挿し込んだ。操縦席にも、同様の端子がある。

「私も、これ着けるの?」

「うん。飛行中は、これがないと会話できないんだ。こっちのトグルスイッチで、無線と同乗者の切り替えができる」

「そうか! 耳元で怒鳴るわけにもいかないもんね。こういうのは、二人乗りならではだなあ」

「音の通りは意外といいから、絶叫すると相手の鼓膜がやられるかも」

「え、それは怖い! じゃあ、墜落しそうになっても、叫んじゃだめなのね」

「ちなみに、独り言も結構聞こえるから、それはそれで要注意だよ」

「ははっ。それって、叫び声より致命的かも」

 カルザスは、厚手の紺色の長袖Tシャツに、カーキのカーゴパンツという装いだった。仕事でも私生活でも、だいたいこのスタイルで通している。

 一方のターナは、朝と変わらぬワークウェア姿だ。安全優先のため、思ったようなおしゃれは難しい。ダークブラウンのトレッキングブーツを、あえてローズピンクのシューレースでまとめているのが、精一杯の主張だった。


 カルザスが操縦席に、ターナが背中合わせの後部座席に収まった。二人ともヘッドセットとゴーグルを装着し、四点式のシートベルトを締める。

 カルザスが電源レバーを「起動」側に倒すと、機体の電気系統が一斉に通電した。同時に、炉筒内壁の励起子から共鳴場が発生し、BSカートリッジが加熱を始めた。徐々にゲルのオレンジ色が濃く変化する。

「じゃあ、出発するね」と主水槽の蒸気圧を確認したカルザスが声をかける。

「うわっ、めっちゃ聞こえる!」とターナは感嘆する。「あ、ごめん。声量、絞るね」

「飛行中は、それくらいでちょうどいいよ。風切音と混ざるしね」

「OK。いつでもどうぞ!」

 カルザスがスロットルバルブをゆっくり開けると、タービンに蒸気が送り込まれる。ほどなく頭上のローターが風を切り始めた。機体が小刻みに震える。その回転が安定したところで、座席左横の揚力レバーを引き上げると、プランタはふわりと浮き上がった。方位ペダルで機首のブレを安定させる。

「じゃ、行くよ」

 カルザスは、操縦桿と揚力レバーを慣れた手つきで操作する。そして、プランタは吸い込まれるように空へと上昇した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。