第四章 第三節【斡旋大作戦】
約二時間のアライアル号の見学が終わると、ターナ、カルザス、ジョシュアのために、ローラはサンドイッチとレモンティーを軽い昼食として用意した。間もなく正午を迎える社長室には、作りたての昼食の温かな香りが立ち込めていた。
ターナは、紅茶の好みについてローラと楽しげに語り、ジョシュアが汎大陸中の茶葉の産地について博識を披露すると、会話はさらに盛り上がった。
食事の皿が空いた頃、ローラがひとつ提案を持ちかけた。
「カルザスはさ、このあとターナ様をお連れして、プランタで遊覧飛行と洒落込んだらどうかしら?」
「へ?」と若い貿易商は話を振られて目を丸くする。
「うってつけの飛行日和じゃない。日頃の悩みも、全部吹っ飛ぶわよ。ねえ、ターナ様」
「いいわね! 開放的な気分になれるかしら? ねえ、カルザス、行こうよ!」
ターナは期待に胸を膨らませる。
「え、あの、うけ……」と狼狽えるばかりで、言葉にならない。
「どうしたの? 何言ってんのか、わかんないわよ」とローラは畳みかける。「そうねえ、海のほうにでも行ってきたら? 二人っきりで。羨ましいわねえ。そのための二人乗りプランタだもんねー」
「え? 二人乗りって、女子を乗せるためだったの? お前、下心丸出しじゃねえか」とジョシュアが口を挟む。
「違いますって! そんな見え透いた……」
「そんな見え透いた動機だったとは……。もうちょいスマートに行かないと、女子に気持ち悪がられるぜ、カーリー」
「だから『カーリー』はやめてって!」
にこにこと耳を傾けていたターナは、カルザスの左肘を右手でそっと摘まむ。
「じゃあ、プランタ取りに行こ。どこに連れてってくれるのかしら?」
ターナはそう促すと、プランタが仮置きされている格納庫へと向かった。
二人の後ろ姿を、ローラとジョシュアは、にまにまと笑みを浮かべて見送った。
「いいんですか、ローラさん。二人っきりにしたら、どうなっちゃうの? 盛り上がっちゃうの?」
「まあ、カルザスはどうせ奥手だし、ターナ様も身持ちは固いから、間違いは起こらないでしょうね」
「あれ? それじゃあ、いまいち面白みに欠けるんでない?」
「焦るんじゃないわよ。今すぐキャッキャウフフな展開になるわけ、ないじゃない。まだまだ初心だもん」
「そりゃそうか。まあ、カルザスが暴走したら、それはそれで笑えるんだけどな」
「笑えないわよ。王室スキャンダルじゃない」とローラは戯けた。「ちょっとだけ距離が近づけば、十分よ。その成果を、夕方に見せてもらうつもり」
「え? まだ何かあんの? すげーな」
「どっちにしても、いい暇潰しになるでしょ。長い映画を見るような気分で、のんびり楽しみましょうよ」




