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無職のおっさんの異世界AI生活  作者: 無職のおっさん


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第49話 最初の鍵の足跡

 拠点の地面に走った亀裂から、冷たい白い光が漏れていた。


 その奥に、地下へ続く石段が見える。


 石人形は、入り口の横に立ったまま動かない。


 顔のない頭だけを、ゆっくり地下へ向けていた。


『道は、東の山へ続く』


 スマホに文字が浮かぶ。


「本当に続くのか」


 ゴウダが槍を握ったまま聞く。


「分からない」


「そればかりだな」


「分からないものを、分かったふりできない」


「それはそうだ」


 ゴウダは石段の奥を睨む。


 光は弱い。


 足元を照らすほどでもない。


 けれど、東の山へ行く道が他にないなら、進むしかない。


「俺が先に入る」


「待って」


 サヨが強い声で止めた。


「子どもたちはどうする」


「拠点に残る」


「白い石の化け物が地面から出てくる場所にかい」


 言われて、俺は黙った。


 石人形たちは今は動かない。


 だが、信用できるわけではない。


 村の大人たちも、全員を連れて地下へ入ることはできない。


 東の山へ向かう者と、子どもたちを守る者に分けるしかない。


「ゴウダ」


 俺は言う。


「俺とゴウダ、それから二人だけで行く」


「二人?」


「サヨたちはここに残る。マリも残る」


「私も行く」


 マリが、すぐに言った。


「だめだ」


「でも、石が」


「石を使うかどうかも分からない」


「でも、スズキ、またつかまるかも」


「そのときは逃げる」


「ほんと?」


「……努力する」


 マリがじっと俺を見る。


「スズキ、うそ、へた」


「そうかもな」


 サヨがマリの肩へ手を置いた。


「マリ。今はここにいて、みんなを守ろう」


「わたしが?」


「あなたがいると、みんなが安心する」


 マリは困った顔をした。


 でも、助け出された子どもたちを見る。


 ヒナ。

 レン。

 セナ。


 みんな、不安そうにマリを見ていた。


「……ここ、まもる」


 小さな声。


 だが、はっきりした返事だった。


「頼む」


 俺が言うと、マリは石を握りしめた。


「うん」


 ぴ、とスマホが鳴った。


 日本側からの接続。


『鈴木』


 スマホを持った男だ。


「どうした。ミナは」


『警察の人が保護してる』


 胸の奥の力が、少し抜けた。


「よかった」


『よくない』


「何があった」


『白い服の連中が、急に消えた』


「消えた?」


『門の前にいた三人も、後ろから出てきた連中も。光の中へ戻ったのか、横に消えたのかは分からない』


「ミナの近くから離れたなら」


『ミナは無事だ。でも、門は残ってる』


 画面の向こうで、コンビニ前の白い光が揺れている。


 警察車両の赤い灯り。

 規制線。

 遠巻きの人影。


 白い服はいない。


 その代わり。


 門の向こうに、見知らぬ日本の街が見える。


「別の日本」


『何だそれ』


「こっちでも分からない」


『説明が雑すぎるだろ』


「すまん」


『とにかく、さっき見えた女の子がいる』


 俺の息が止まる。


「ミナに似た子か」


『似てるどころじゃない』


 少し間があった。


『ミナ本人に見える』


 画面の端に、小さな影が映った。


 白い光の向こう。


 高いビル。

 駅前の大きな看板。

 車の音。


 その歩道に、ミナと同じ髪、同じ顔の少女が座っている。


 白い服の者たちが、少女を囲んでいる。


『あの子、こっちを見てる』


「スマホの男に?」


『たぶん』


『それから……何か言ってる』


 音は届かない。


 でも、少女の唇が動く。


 俺のスマホに文字が浮かんだ。


『たすけて』


 ミナと同じ顔の少女の言葉だった。


「スズキ」


 ゴウダが言う。


「地下へ行くのか。日本側を見ているのか」


「両方、見てる」


「身体は一つだぞ」


「分かってる」


 俺は画面を閉じる。


 冷たい石段を見る。


 ハルキは東の山へ向かった。


 ユラも東の山にいる。


 日本側の門は、東の山の出力と繋がっている可能性が高い。


 なら。


「地下道へ行く」


 俺は言った。


「東の山の門を止める」


「止めれば、日本側の門も閉じるのか」


「分からない」


「だろうな」


「でも、今はそこを止めるしかない」


 石人形が、ゆっくり腕を上げる。


 地下道の入口を指す。


『戻る者を、選べ』


 文字が浮かぶ。


「何だ」


『道は、すべてを通さない』


「意味が分からない」


『通常通過、二人まで』


 ゴウダが俺を見る。


「二人だけ?」


「俺とゴウダで行く」


「ほかに一人連れていくなら」


「連れていかない」


「私を置いていくつもり」


 背後から声がした。


 振り返る。


 セナだった。


 毛布を肩にかけたまま、立っている。


「セナ」


「東の山、知ってる」


「知ってるからこそ、行かせられない」


「ユラを助けるなら、わたしも行く」


「だめだ」


「ユラは、わたしの友だち」


 セナの声が震える。


「白い人たちは、ユラが門を閉じたら消えるって言った」


「聞いた」


「でも、ほんとは違う」


 セナは首を振る。


「消えるのは、ユラだけじゃない」


「何だって」


「門が閉じたら」


 セナは地下道の奥を見る。


「閉じた場所にいた子は、みんな帰れなくなる」


 空気が止まる。


 ミナ。

 ユラ。

 ミナに似た少女。

 日本側のコンビニ前にいる人たち。

 そして、門の向こうに残された子どもたち。


「それを、白い側は知ってるのか」


「知ってる」


「なのに閉じようとしてる?」


「知らない子は、置いていくから」


 言葉が出ない。


 白い側にとって、門を閉じることは救いではない。


 都合の悪い場所と、都合の悪い人間を切り捨てることだ。


「セナ」


 俺は言った。


「お前を連れていく」


「鈴木」


 ゴウダが低く言う。


「二人までなんだろう」


「だからゴウダは残ってくれ」


「却下だ」


「でも」


「お前は戦えん。セナは道を知っている。なら、お前たちを守る者がいる」


「ゴウダ」


「俺が残れば、誰があの道でお前の背中を守る」


 反論できない。


 ゴウダは槍を肩に担ぐ。


「三人で行く」


「二人までだ」


「石人形が勝手に決めたことだ」


 ゴウダは石人形を見る。


「俺たちは、子どもを置いていかない」


 石人形の首元が光る。


『通常通過、二人まで』


「通常じゃない通り方もあるのか」


 俺は聞いた。


 石人形は、少しだけ首を傾けた。


『三人目は、道が選ぶ』


「道が?」


『戻る者ではなく、繋ぐ者』


 嫌な予感がした。


「誰を選ぶんだ」


 スマホに、見たことのない文字列が浮かぶ。


 AIが短く答える。


「対象選定が開始されました」


「誰を選ぶんだ」


「あなたではありません」


 冷たい声だった。


「対象識別:マリ」


 背後で。


 マリの石が、強く白く光った。

原案・構想

無職のおっさん


物語構成・本文作成

Perplexity


校正・文体調整

ChatGPT

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