↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんの異世界AI生活  作者: 無職のおっさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/51

第42話 画面の向こうの人影

 ミナの前に立っていたのは、白い服の人間ではなかった。


 仮面もない。

 杖もない。

 首元に白い石も見えない。


 ただ、片手にスマホを持った人影だった。


「……日本の人間か」


 俺は画面を見つめた。


 映像は荒い。


 夜の道路。

 車のライト。

 見慣れたコンビニの看板。


 ミナはその脇で、立ち止まっている。


 人影は、ミナへゆっくり近づいた。


「AI」


「はい」


「相手の顔は分かるか」


「映像が不安定です。顔の識別は困難です」


「服装は」


「現代的な衣服と推定されます。こちら側の白い服とは異なります」


「つまり、日本側の人間かもしれない」


「可能性があります」


 また可能性。


 でも今は、その可能性にすがるしかない。


 画面の向こうで、人影がミナの前にしゃがんだ。


 スマホの光が、ミナの顔を照らす。


 ミナが、一歩後ろへ下がる。


『こわい』


 画面に文字が浮かんだ。


「大丈夫だ」


 俺は思わず言った。


 届くかどうかも分からない。


 でも、何もしないよりはましだった。


「ミナ。俺は見てる」


 画面が一度だけ揺れる。


『スズキ?』


「ああ」


 人影が、ミナの手首へ触れようとした。


「触るな!」


 俺は叫んだ。


 北の森の中で叫んでも、あの世界の相手に届くわけじゃない。


 それでも、声を出さずにはいられなかった。


 そのとき、人影のスマホが光った。


 俺のスマホと同じような、白い画面。


 画面には、短い文字が浮かんでいる。


『接続対象を確認』


 俺の息が止まる。


「相手も、門につながってる」


 AIが答える。


「相手の端末から、こちらと類似する信号反応を確認しました」


「日本側にも接続対象がいる」


「可能性があります」


「その人がミナを追ってるのか」


「現時点では判断できません」


 人影は、ミナへスマホの画面を見せた。


 ミナは怯えながらも、画面を見る。


 何かを読んでいる。


 そのとき、ミナの首元――砕けたはずの白い石の跡が、また淡く光った。


「まずい」


 俺は言った。


「AI、また首元が反応してる」


「日本側の端末が、対象識別:ミナへ接続を試みている可能性があります」


「止められるか」


「遠隔干渉は困難です」


「何かできないのか」


「接続経路を通じ、警告信号を送ることは可能です」


「送れ」


「内容を指定してください」


「……ミナを怖がらせるな。子どもだ。勝手に連れていくな」


「送信します」


 スマホの画面から、細い白い線が伸びる。


 北の森の門。

 東の山。

 そして、日本側の街。


 線が人影のスマホへ届く。


 相手が、ぴくりと動いた。


 手にしていた端末の画面を見下ろす。


 そして、俺の方を見た。


 画面越しなのに。


 視線が合った気がした。


「……見えてるのか」


 人影が、ゆっくりスマホを持ち上げる。


 画面に、文字が出た。


『鈴木?』


 俺の名前。


 相手も、俺を知っている。


「誰だ」


 俺は画面へ言う。


「お前は誰だ」


 少し間があった。


 人影のスマホに、文字が浮かぶ。


『聞こえるのか』


「聞こえる」


『本当に?』


「本当だ。ミナから離れろ」


 人影は、すぐには動かなかった。


 ミナは、相手と俺の画面を交互に見ている。


 そして、スマホの文字を読むように目を細めた。


『この人、こわくない』


 ミナの言葉に、俺の動きが止まった。


「ミナ」


『おみず、くれた』


 画面に続けて文字が出る。


『あったかい、の、くれた』


 人影は、ミナへ何かを渡していたらしい。


 小さなボトル。

 それと、白い袋。


「保護してるのか」


 俺が呟くと、人影のスマホに文字が出た。


『子どもが急に道路に出てきた』


『名前も住所も言えない』


『でも、俺のスマホを見て「スズキ」と言った』


 胸が詰まった。


 ミナは、俺の名前を頼りにしていた。


 見知らぬ世界で。


 知らない大人の前で。


「ありがとう」


 俺は画面に向かって言った。


『まだ信じてない』


 すぐに返事が出る。


『あんたが誰かも分からない』


「それはそうだ」


『子どもを返せと言うなら、どこへ返せばいい』


「……分からない」


 言ってから、自分で苦しくなる。


 ミナを元の世界へ飛ばしたのは、俺の選択じゃない。


 でも、ここへ来てからのことを説明できる人間は、今の俺しかいない。


「今いる場所は、俺が元いた世界だ」


『は?』


「俺は、別の世界にいる」


『意味が分からない』


「俺も最初は分からなかった」


 ハルキが、少し離れたところで腕を組んでいた。


 こちらの会話は、文字とAIの短い読み上げでしか分からない。


 でも、相手が敵ではないかもしれないことは察したらしい。


「お前、向こうの人間と話してるのか」


「たぶん」


「たぶんで話を進めるな」


「俺もそう思う」


 そのとき、北の森の周囲で枝が折れた。


 ぱきっ。


 ハルキがすぐに振り返る。


「来るぞ」


「案内人か」


「分からん。だが、人数がいる」


 レオはまだ戻っていない。


 ヒナとレン、それから北の門へ飛ばされた子どもたちを守る必要もある。


「AI」


「はい」


「日本側の相手に、今の位置を送れるか」


「正確な座標情報は世界間で一致しません」


「じゃあ、映像だけでも残せ」


「記録を共有します」


 画面の向こうで、人影のスマホがまた光る。


『白い服の連中がいる』


 俺は、すぐに答える。


「そいつらからミナを離せ。できれば、人の多い明るい場所へ行ってくれ」


『警察を呼んだ』


「けいさつ?」


 ハルキが言う。


「何だそれ」


「向こうで、人を守る仕事をしてる人たちだ」


「村の見張りみたいなものか」


「……もっと大きい組織だ」


「それなら頼れ」


 ハルキは短く言った。


「今は、子どもを守れるなら何でもいい」


 画面の向こうで、遠くから赤い光が近づいてくる。


 車の音。


 何台かの車が道路へ入ってきた。


『来た』


 人影の文字。


『とりあえず、この子は渡さない』


 ミナが、スマホへ顔を近づける。


『スズキ』


「ああ」


『ここ、ひと、いっぱい』


「怖いか」


『ちょっと』


「でも、今の人は水をくれた」


『うん』


「なら、今はその人のそばにいろ」


『スズキ、くる?』


 答えに詰まる。


 行きたい。


 今すぐにでも行きたい。


 でも、門を通れば戻れないかもしれない。


 北の森には、目の前の子どもたちもいる。


「行く方法を探す」


 俺は言った。


「必ず、ミナが一人にならない方法を探す」


 ミナは、少しだけ黙った。


『……うん』


 その瞬間。


 画面の向こうで、白い服の影が道路の反対側に立った。


 警察車両の赤い光。


 人の多いコンビニの前。


 その中で、白い服だけが不自然に静かだった。


「ミナ!」


 人影も、相手に気づいたらしい。


『誰だ、あれ』


 白い服の影が、スマホを持ち上げる。


 北の森の門。

 俺のスマホ。

 日本側のスマホ。


 三つの画面が、同時に白く光った。


「接続反応を検出」


 AIの声が響く。


「日本側に、新たな門の形成が始まっています」


「どこだ」


「対象識別:ミナの現在地です」


 コンビニの前。


 俺が昔、何度も通った場所。


 そこで今。


 白い光が、地面から立ち上がり始めていた。

原案・構想

無職のおっさん


物語構成・本文作成

Perplexity


校正・文体調整

ChatGPT

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。