↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんの異世界AI生活  作者: 無職のおっさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/52

第36話 村へ続く道

『代替経路候補を検出:村側』


 スマホの画面に浮かんだ文字を、俺は見つめた。


 村側。


 マリとナギがいる場所。

 サヨがいて、ハルキたちが帰る場所。

 薬草を乾かし、火を起こし、少しずつ「暮らし」を作ってきた場所。


 そこへ続く道が、あるという。


「AI」


「はい」


「村のどこだ」


「現時点では特定できません。複数の反応源が重なっているため、位置を確定できません」


「複数?」


「地下施設、北の森の門、東の山の祠、村近傍にある反応が、同じ系統で接続されている可能性があります」


「村の中に、門があるのか」


「門そのものとは断定できません。ただし、代替経路となる構造、媒介、または接続装置が存在する可能性があります」


 仮面の男が、初めてはっきり動揺した。


「村側?」


 白い仮面の下から、低い声が漏れる。


「あり得ない」


「何があり得ない」


 俺は聞く。


「村の近くに、何がある」


「あなたには関係ありません」


「今さらそれは通らないだろ」


 子どもたちの首元で、白い石が光っている。


 ユウは苦しそうに胸元を押さえ、鉄格子のそばに座り込んでいた。


「スズキ」


「いる」


「……いたい」


「分かってる」


 俺は画面へ目を落とす。


 接続対象の解除。

 その文字に触れれば、子どもたちの首飾りへの反応がさらに強くなるかもしれない。


 でも、何もしなければ、ここで一人だけ選ばされる。


「AI」


「はい」


「子どもたちの首飾りを、完全に止めなくていい。少しだけ反応を弱くできるか」


「一時的な干渉は可能性があります。ただし、白い石状の装置が接続維持に使用されている場合、対象者の意識や身体状態への影響を予測できません」


「要するに、やるなら危ない」


「はい」


「でも、何もしないよりはましだ」


 仮面の男が一歩前へ出る。


「やめなさい」


「お前に命令される理由はない」


「候補たちの接続を乱せば、記憶と身体機能に回復不能な影響が出ます」


「それを今までやってきたのは誰だ」


「我々は維持している」


「閉じ込めて、怖がらせて、選ばせてか」


 仮面の男は答えなかった。


 その沈黙で、俺は決めた。


「AI」


「はい」


「一番弱い干渉でいい。まず、ユウだけ」


「対象識別:ユウを優先します。最小出力で試行します」


「ユウ」


 俺は鉄格子の前へ寄る。


「少しだけ我慢できるか」


「……こわい」


「俺も怖い」


「でも、する?」


「ここから出る方法を作るために」


 ユウは涙を浮かべたまま、少しだけ頷いた。


「……うん」


「実行します」


 スマホの画面が、淡い青色に変わった。


 ユウの首飾りが、一度だけ強く光る。


「うっ」


 ユウが目を閉じる。


「ユウ!」


「……だいじょうぶ」


 白い石の光が、少しだけ弱まった。


 同時に、壁に浮かんでいた図形の一部が消える。

 鉄格子の中央に埋め込まれていた白い留め具も、明滅を始めた。


「留め具の反応が低下しています」


 AIが言う。


「物理的な解除が可能になるかもしれません」


「ハルキ!」


 俺は地上へ続く石段の方へ叫んだ。


「聞こえるか!」


 返事はすぐにはなかった。


 代わりに、上の方で何かが倒れる音がする。


 がんっ。


「スズキ!」


 ハルキの声。


「無事か!」


「こっちにいる!」


「白い連中を押し返した! 今から降りる!」


 胸の奥が、少しだけ熱くなる。


「レオもいる!」


「いるぞ!」


 レオの声が続く。


「だが、後ろからまだ来る!」


 石段の上で、白い光が揺れた。


 白い服の人間たちが、追ってきているのかもしれない。


「急げ!」


 俺が叫ぶ。


 仮面の男が、初めて声を荒げた。


「鍵を確保しろ!」


 鉄格子の奥にいた白い服の者たちが動く。


 それまで壁際に立っていただけだった二人が、こちらへ近づいてくる。


 子どもたちの前に立ち、ユウを後ろへ下げようとする。


「触るな!」


 俺は鉄格子を掴んだ。


 白い留め具は、まだ完全には消えていない。

 でも、さっきよりも光が弱い。


「AI、留め具を開けるには」


「白い石の内部に、可動部らしき構造があります。右側へ押し込み、同時に下へ動かすと解除される可能性があります」


「普通に開けられるようになってるじゃないか」


「一時的な反応低下によるものと思われます」


 俺は指を鉄格子の隙間へ入れる。


 留め具は冷たかった。


 石のように見えるが、触ると少しだけ柔らかい。


「右へ、下」


 力を入れる。


 動かない。


「もっとだ」


 俺は歯を食いしばる。


 白い服の男が、格子の向こうからこちらへ手を伸ばす。


「やめろ」


「嫌だ」


「候補を移送する」


「だから嫌だって言ってる」


 もう一度、留め具を押す。


 がちっ。


 小さな音がした。


 白い石が、右へずれた。


「外れた!」


 鉄格子が少しだけ揺れる。


「ユウ、下がってろ!」


「うん!」


 俺は格子を引いた。


 ぎい、と鈍い音。


 鉄格子が、ほんの少し開く。


 でも、人が通るには狭い。


「ハルキ!」


「来た!」


 石段を駆け下りてきたハルキが、俺の横へ滑り込む。


 後ろにはレオ。


「何をしてる」


「子どもを出す」


「見れば分かる!」


 ハルキは格子へ手をかけた。


「レオ、後ろを頼む!」


「任せろ!」


 レオが石段側へ向き、投石袋を握る。


 ハルキと俺が同時に格子を引く。


 ぎぎぎ、と音がする。


 あと少し。


 白い服の男が、格子の奥で子どもたちへ手を伸ばす。


「候補を確保しろ!」


「ユウ!」


 俺が叫ぶ。


「こっちへ来い!」


 ユウが、震えながら走ってくる。


 開いた隙間は、子ども一人なら通れそうだった。


「スズキ!」


 ユウが格子の前に来る。


「手を出せ!」


 ユウが小さな手を伸ばす。


 俺は、その手を掴んだ。


 その瞬間。


 地下全体が、大きく揺れた。


 ごおおおおおんっ。


 壁の模様が、一斉に白く光る。


「まずい!」


 AIの声が、少しだけ歪んだ。


「接続網全体で異常反応。村側の代替経路候補が活性化しています」


「村?」


「はい。東の山の施設と村近傍の反応が同期を開始」


 白い壁の図形が変わる。


 北の森。

 東の山。

 そして、村側。


 村に近い位置にある印が、急速に明るくなる。


「何があるんだ」


 俺が言うと、仮面の男が後ずさった。


「まさか……」


「知ってるのか!」


「それは、封鎖された経路だ」


「どこだ!」


「村の中心ではない」


 仮面の男が、白い壁を見つめたまま言う。


「村の外れ。水の流れる場所。古い石が沈んだ場所」


 俺の頭に、ひとつの場所が浮かんだ。


 川。


 最初に魚を取った川。

 マリと歩いた川。

 水を汲み、罠を仕掛け、薬草を探した場所。


「川か」


「川そのものではない」


 仮面の男が言う。


「川の上流。岩と倒木の近く――」


 息が止まった。


 俺たちの拠点。


 最初に目を覚ました場所。

 焚き火を起こした岩陰。

 マリを拾った、あの場所。


「……拠点」


 俺が呟いた瞬間。


 スマホの画面が大きく震えた。


『代替経路候補:活性化』


『接続地点:岩と倒木の拠点』


『接続開始まで:00:09:59』


 九分五十九秒。


 村から東の山まで、今から戻って間に合う距離じゃない。


 ユウの手を掴んだまま、俺は画面を見つめた。


 十分後。


 俺たちが最初に暮らし始めた場所で、何かが開く。

原案・構想

無職のおっさん


物語構成・本文作成

Perplexity


校正・文体調整

ChatGPT

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。