第28話 瞬時に結成された、美少女たちのキャイキャイ同盟
一歩足を踏み入れた小屋の中は、まさに「掘立て小屋」という言葉がぴったりなほど簡素な造りだった。
床は板張りですらなく、むき出しの土がそのまま広がっている。
昔、歴史の教科書か何かで見た原始時代の竪穴式住居の内装を思い出し、「確かこんな感じだったよな……」と場違いな既視感を覚えるほどだ。
部屋の中央には、台所と言うべきか、囲炉裏と言うべきか、地面を少し掘っただけの、ただの焚き火のようなスペースから細い煙がゆらゆらと上がっていた。
「ほんとご迷惑をおかけいたします。すぐに帰りますので……」
俺が恐縮しながらそう言うと、部屋の奥の薄暗い仕切りの向こうから、一人の女の子がひょこっと顔を出した。
(ほう。これまたなかなか……)
母親によく似た、整った顔立ちをした子だ。
派手さはない。目鼻立ちもどちらかといえば控えめだけど、不思議と目を引く。
まだ蕾のままの花のような、そんな可愛らしさがあった。
女性は女の子の頭に優しく手を置き、少し寂しげに微笑んだ。
「こんなところで暮らしていると、この子が寂しがって。同じくらいの年の子が来てくれると喜びますので、どうぞ気にしないでくださいね」
(ふーん。ということは、つまり俺はお呼びでないってことね、はいはい)
そんな俺の内心の拗ねを置き去りにして、コミュ力モンスターのユキホがさっそく動く。
「こんにちは! お名前は?」
「ツムギ……」
女の子は、ユキホの勢いに少し圧倒されたのか、もじもじと照れながら消え入るような声で答えた。
「へー、ツムギちゃんっていうんだ! 私はユキホ、こっちがカヨね!」
ユキホが満面の笑みでカヨを紹介すると、ツムギちゃんの表情が一瞬にしてパッと明るくなった。
子供同士、通じ合うものがあったのだろう。すぐに三人はキャイキャイと楽しそうに戯れ始めた。
(おいユキホよ。確かぬいぐるみはもう一個手に入っていたと思うが、まだ出すのは早いからな。順番ってものがあるからな……)
心の中で釘を刺しつつ、俺は一歩前に出て居住まいを正した。
「あっ、すみません。先にお子さんに名乗らせてしまって。私、『佐藤平太』と申します。今は上宿のほうでご厄介になっています」
俺が改めて頭を下げると、女性は少し緊張を解いたように表情を緩めた。
「いえいえ、ご丁寧に。私は『大井志乃』と申します」
改めて女性を見てみると、やはりかなり痩せこけている。それはさっきのツムギちゃんも同じだった。
だが、その言葉遣いや立ち振る舞いには、どこか隠しきれない気品のようなものを感じる。
よく見ると、着物もあちこちボロボロになってはいるが、もともとはかなり上等な生地で作られたもののようだった。訳ありの身上なのだろうか。
「先ほどの娘がツムギ。それと……」
志乃さんはそう言いながら、部屋のさらに奥へと視線を向けた。
そこには、床に敷かれた筵の上に、小さな人影が横たわっていた。
「あれは『織之助』です。もともと体が弱いうえに、今は立ち上がることもままならないのですが……」
志乃さんは俯き加減になり、声を詰まらせる。
「あの……。ちょっと見せていただいていいですか? 私、かつて京都で医師をしておりまして、もしかするとお力になれるかもしれません」
言った瞬間、強烈な視線を感じて横を向くと、ユキホがものすごいジト目を俺に向けている。
(……いいじゃん! 俺だって少しは役に立ちたいんだよ! あー……でも、また嘘をついちゃったな……)




