第21話 開き直るふっくら美少女。 「あんな質素な食事で耐えられるわけないじゃない!!」
「うぅぅ……」
昨晩は興奮のあまり、寝つきが悪い……と思いきや、さすがに日中の重労働が効いたのか、納屋の筵に寝転がったと同時に寝落ちしていたらしい。
俺は遠足前の小学生ではない。
肉体の限界をしっかり自覚している、十二分に大人なのだ。
――ガサガサガサ。
お世辞にも寝心地が良いとは言えない枕元で、妙な雑音が響いた。
(ん? 何かいる……? 動物か? もしかして熊とかじゃねえだろうな……)
この納屋の鍵は壊れている。
それどころか、ちょっと蹴飛ばせば簡単に突き破れそうな薄い板壁で、しかもただでさえ隙間だらけなのだ。
人だろうが野生動物だろうが、侵入することなど至極容易だ。
――ガサガサガサ。
(怖い……。頼むから、早くどっかに行ってくれ……)
俺は気配を消すように全身をガチガチに硬直させる。
すると、緊迫した空気の中に、ふわりと甘い香りが漂ってきた。
(ん? これって……生クリーム?)
恐怖感はまだ残っていたが、極力気付かれないように薄目で音の方向を確認する。
(あ……)
俺は音の犯人に向かってゆっくりと起き上がり、あぐらをかいた状態で向き直った。
「何やってるの?」
音の犯人は――ユキホちゃんだった。
しかも、彼女の周りには、コンビニケーキのプラスチック製空きトレイと、「翼を授ける」でお馴染みのエナジードリンクの空き缶がいくつも転がっている。
俺と目が合ったユキホちゃんは、なんともバツの悪そうな顔をして口を尖らせた。
「だって……ここのご飯だけじゃ、全然足りないんだもん……」
どうりで……。
開墾作業の合間に、アイテム収集にも精を出していた俺だが、「獲得したアイテム数に対して、どうも在庫数が合わないな?」と首を傾げていたのだ。
その消えた差分は、ユキホちゃんが胃袋に収めていたわけだ。
ということは何だ。
ユキホちゃんは、この俺のインベントリに「同一アカウント」としてアクセスできるということなのか?
ファミリー共有アカウントかよ……。
「だって……! 私は向こうの世界に九十日近くもいたのよ! あんな質素な食事で耐えられるわけないじゃない!!」
開き直りやがった……。
しかし、これで謎が解けた。
数日間とはいえ、この時代の質素極まりない食事を続けていれば、普通ならすぐに元の体型に戻っていくはずだ。
だが、一向に変わらないどころか、むしろ最近さらにモチモチとしたふっくら感(主に頬や、ちょっとしたお肉)が増しているような気がしていたのだ。
夜な夜な納屋に忍び込んで、高カロリーな現代スイーツと糖分たっぷりのドリンクを密食していたのだから、そりゃあ痩せるはずがない……。
「うん、事情はわかった。でも、ほどほどにしようね。あと、このドリンクはものすごく太りやすいから、飲み過ぎには注意だよ」
俺はため息をつきつつ、彼女のモチモチした頬を眺めながら、優しく諭した。




