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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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99/121

episode 098

 都道154号線を、一台のバンが走っていた。

 八王子方面から来たそれは、頭上にモノレールの線路が合流した地点から、若干スピードを落としていく。

 やがて見えて来た駅の真下にあるスペースに、ハザードランプを点けて止まった。


 半分ほど開いた車窓から、一人の男性が顔を覗かせている。

「異常は……無さそうだな」

 振り返った彼は、車内にいる相方へ問い掛けた。

「エルビス、今何時だ?」

「23時を回ったところだな」

 重そうな機材を抱えた『エルビス』こと蔵敷が地面へと降り立つ。

 運転席の窓が開いて、初老の男が心配そうな顔を出した。

「春都君、ぼっちゃん。くれぐれもお気をつけて」

 春都と蔵敷はニッと笑って言った。

「大丈夫だって、大谷さん」

「じゃあ、後は宜しく」


 彼らは、駅の反対側に向かって歩き出した。

 なだらかに傾斜している地面を踏みしめて、目的地へと向かう。

 やがて、建造物が見えて来た。


(ここが、決戦の地だ……)

 春都と蔵敷は、お互い無言で頷き合った。

 身体に喝を入れ直して、正面ゲートをしっかりと見据える。


『東京都 T動物公園』

 この場所で、全てが決着する。


 総面積60ヘクタール。

 多摩丘陵の自然に恵まれた環境の中に在る国内最大級の動物園には、約300種類の生物が飼育されている。


 敷地内は、大きく4つのエリア(アジア園・アフリカ園・オーストラリア園・昆虫園)に分かれていた。

 自然環境を可能な限り活用しているため、緑が非常に多い。

 人獣を隠しておくには、まさにうってつけの場所であった。


 また、園内に居る全ての動物が、獣祠道の儀式を受けている可能性もある。


 北野鍾子のクローン数から見て、それ程ではないと思うが、真っ向から否定する事も出来ない。

 根拠の無い憶測は、時に命取りとなるのだ。


 人獣との交戦は出来るだけ避け、秋希を救出したあと、榊原燕鼠を名乗る者と対決する。


 門前に佇み、脳内で作戦行動をシミュレーションしている春都の横をスッと通って、蔵敷が前に出た。


「学生2枚、これで足りるかな」

 自動券売機に紙幣を入れようとした彼を見て、春都は思い切りズッこけた。


「おまえ、何しとんじゃあ!」

「いやぁ、警備員に見つかった時の言い訳にしようかなと」


「警備員を含めて、従業員は全員洗脳されているだろう。第一いまは時間外だから、券売機も止まっているだろう?」

「あ、いっけね」

 軽く頭を叩いた蔵敷を半眼で見た春都は、思わず抜け掛けた気合をしっかり入れ直した。


「さあ、早く中に入ろうぜ」

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