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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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98/121

episode 097

 さすがの怪物拝島も、炎の力には敵わなかったらしい。


 やがて黒い塊となったそれは、力なく床にゴロンと転がった。


「あれは、ただの聖水じゃ無かったのですか?」


 気絶してしまった絵理花を介抱しながら問い掛けた愛唯に、冬流はニッと笑って言った。


「正解、あれはガソリンさ」

「ああ、そうでしたか」

 納得した彼女は、頭をスパッと切り換える。

「あっ、早く証拠写真を撮っておかないと、またガセネタとか言われちゃう!」


 彼女は懐から愛用のカメラを取り出して、パシャパシャと撮影を始めた。


「証拠写真……か」

 夏純は、その物体を凝視していた。

 既に風化が始まっているのか、微妙に輪郭が縮まってきている。

「怪物も、燃えてしまえばただの灰ね」


「編集長、左尾さん。明日の見出しは『たまみらい相談室の最強コンビが連続殺人事件の犯人に大勝利!』というキャッチコピーでどうですか?」

 愛唯の問い掛けにも答えずに、冬流は一点を見つめていた。

 彼の中で、何かが引っ掛かっている。


 厳重な警備の所為で食事を摂取出来ずに、体力が落ちていた事を差し引いても、今日の拝島は驚くほど弱かった。

 前回の下着泥棒と同じ……いや、それ以下の力しか無かったのだ。


(まるで、脱け殻のよう……ん、抜け殻?!)

 そのワードが浮かんだ冬流は、はたと思い至っていた。


(そうか……こいつは拝島であって、拝島ではないのだな)


 彼の頭の中で、少しずつ謎が繋ぎ合わさっていく。


 おそらく、脱け殻の拝島は獣祠道によって生み出された『失敗作』なのだろう。

 そして、一連の吸血鬼事件は不完全な肉体を維持するために、被害者の血を摂取していたと考えれば辻褄が合ってくる。

 そしてそれは、獣祠道本来の儀式とは全くの別モノだ。


「道理で、話がややこしくなる訳だ」

 冬流は、ぐっと唇を噛んで言った。


「新聞やテレビでは、犯人死亡のまま事件は解決したと報じられるだろう。しかし、その裏では……」


(まだまだ、何も解決していない)


 同時にそれは、冬流や夏純といった一介の高校生が出来る範囲はここまでだ、という事も示されている。


「悔しいけれど、仕方がない」

 ゆっくりと身体を起こした彼は、夏純達に向かって歩き始めた。


(……頼んだぞ、発明家)

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