episode 099
「やはり、妨害電波か」
圏外を示す携帯電話の表示を見て、春都が言った。
「敵さんも、こっちの事を相当研究してきてるのだろうな」
先のオーガ戦のデータが敵に流れているとすれば、当然の対策である。
蔵敷は、大して慌てた様子も無く背負っていたバッグを地面に下ろした。
側面のボタンを押すと、把手の部分がスーッと上方に伸びていき、先端が五つに分かれてアンテナの形状となった。
「これで、半径2キロ以内は通信可能となる。もっとも、このアンテナを潰されたら一巻の終わりだがな」
「何とか死守してくれ」
「ああ、任せておけ!」
蔵敷はドンと胸を叩いた。
「それより、そちらの準備は良いのか?」
「ああ」
一通りの装備を確認した春都は、満足気に頷いた。
「強化バッテリーパック1個の耐久時間は通常使用で120分、イマージングは10分だ。無駄使いするなよ」
「分かってるって、じゃあな」
「ケビン」
手を振って行こうとした彼を、蔵敷が呼び止めた。
「ん、どうした?」
「これまでない戦いが予想されるが、生きてまた会おうぜ」
「……当たり前だ」
二人は笑って、がっちりと握手を交わした。
(さて、と)
特殊バリアードフェルトをONにした春都は、園内の案内図へと近付いていった。
事前に脳内で整理・記憶している情報と照らし合わせる。
これからの道は3つ。
一つは、右の山岳道を登り、昆虫園を抜けてアフリカ園へ行くルート。
二つ目は、正面のなだらかな道を進み、アジア園の中心部を目指すルート。
最後は、左の山道を入って行き、園内の最遠部まで一気に突き抜けるルート。
(どうしようかね)
思案していた彼は、ふと頭上に何かの気配を感じて顔を上げた。




