episode 100
案内板の柱の先に止まった一羽のワライカワセミが、じいっとこちらを見ている。
咄嗟にその場を飛びのいた春都は、油断無くそれを見つめた。
が、いくら戦闘態勢をとっても、カワセミは我知らずという顔をしたままだ。
(違う……な)
そう判断した彼は、ゆっくり警戒を解いた。
どうやら2000頭が全て人獣という訳では無いようだ。
しかし、こうして檻の中から出ている姿を見ると、その他の動物も放し飼いになっている可能性が高い。それはそれで脅威となる。
あれこれ考え込んでいる春都の前で、ワライカワセミはスッと頭を下げると、右方向の道路にパタパタと飛び立った。
地面に着地すると、じいっとこちらを見ている。
(……誘っているのか?)
ワライカワセミの動きがその様に見えた春都は、再び思案した。
このまま誘いに乗っていいものか、あるいはルートを再考し直すのか。
彼の逡巡を見ていたワライカワセミは、プイっと踵を返すと、そのまま奥に飛んで行こうとした。
「あっ!」
直前まで迷っていた事実をリセットした彼は、グッと一歩を踏み出した。
傾斜の強い坂道を登り、ワライカワセミの後を追う。
(果たして、これが正解なのだろうか……?)
春都が姿を消してから数分後、選択しなかったルートの先が、にわかに騒がしくなった。
正門から500メートル程行った場所の左手に、『水鳥橋』という橋が掛かっている。
そこから後方数十メートル程の道路が、異様に変色していた。
よく見ると、それは何千匹にもおよぶ鼠や兎など小動物の群れであった。
月明かりの中、皆一様に瞳が赤々と光っている。
おそらく、何らかの改造を受けていることは間違いない。
暫くその場所で蠢いていたそれらは、一向にターゲットが現れない事に気が付いたのか、目標変更の指示が出たのか、一斉に道路を駆け降り始めた。
まさに蔵敷がアンテナを守っている、正面玄関に向かって……




