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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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102/121

episode 101

 春都の取ったルートは、一見したところ一番危険なルートに思えた。

 しかし、結果としてそれが敵の心理を逆についた事になる。


 改装中である昆虫館を難なくパスした彼は、アフリカ園へと続くゲートを登った。

 夜間の動物園に、明かりは殆ど無い。

 赤外線スコープの機能によって視界は良好なのだが、底知れぬ闇は人間の恐怖心を誘い、神経を確実にすり減らしていく。

 春都は、睡眠学習により会得した上級ヨガの呼吸法により、精神安定を図っていた。


(獣祠道は、昆虫には通じないんだな……)


 受け入れる脳の側に問題があるのだろうか、などと考えながら、彼はアフリカ園の敷地に降り立った。


(さあ、ここから本番だ)

 彼は、左手に装着された無線通信機を見た。

 電波の受信状態は三本柱エクセレントである。


(インベンションモード、オン!)


 思考下でコマンド入力した彼の手首で、通信機の画面がぼうっと光る。


(ナタリー、AA戦闘装備でイマージングだ)

『リョウカイ』


 数秒後、春都の身体が虹色の光に包まれていく様子を、鉄柵に止まったワライカワセミがじいっと眺めていた。


 秋希は、深い眠りから目を覚ました。

 しばらく意識を無造作に漂わせていた彼女だったが、数分後、ようやく周囲の輪郭がはっきりしてくる。


「……ここは、どこ?」

 薄暗い辺りを見回した秋希は初めて、自分が一糸纏わぬ姿でベッドに寝かされている事に気がついた。


「やだっ!」

 真っ赤になった彼女は起き上がり、足元にあった白衣を手早く着込んだ。

 目が慣れて来たのか、まわりの状況がだんだんと分かってくる。


 そこは、6畳ほどの小さな部屋だった。

 四方をコンクリートに囲まれ、上のほうに明かり取りの小窓が一つあるのみだ。

 気のせいか、そこから漏れてくる不思議な匂いが、彼女の鼻に妙に引っ掛かった。


(何か、野性的な感じ……)

 そこで、彼女はベッドの上に登り、爪先立ちで小窓を覗き込んでみた。

 しかし、そこから見えたのは、窓枠一杯に広がったグレーの絨毯らしきものであった。

 おそらく、外の風景を見せないため意図的に被せているのであろう。


 意地になった彼女は、強引にそれを引き剝がそうと手を掛けた。

「えっ?!」

 ぐにゅっ、という妙な音と感触に、その絨毯がブルブルと震えはじめる。


 秋希が慌てて手を離したことで一瞬視界が開けたが、次の瞬間、窓枠一杯に大きな瞳がヌッと広がった。

「!」

 いきなり現れた異様な光景に言葉を失った彼女は、再び意識の底へと落ちて行った。

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