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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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89/121

episode 088

 秋希は、夢と現実の間を彷徨っていた。

 目を開けようとする意識は在るのに、逆らう事の出来ない何かが、彼女の心を更に奥深くへと招き入れる。

 そんな中、彼女の頭の中に大きな声が飛び込んで来た。

 複数の人間が、何やら言い争っている様な感じだ。

 秋希は暫く、耳をそばだてていた。


「何故生かして連れて来た、あの場所で殺しておけば良かったのに!」

 吐き捨てるような口調で、低いほうの声がいまいましげに叫んでいる。

 男性の声だったが、秋希の記憶には無い。


「好都合だったからです」

 もう一方の、嗜めるように冷静な女性の声が続いた。

 薬を服用されているのか、中々思考が纏まらない秋希だったが、何処かで聞いた様な声だなぁと感じていた。


「……フン」

 その答えに満足出来ない先程の声の主は、益々苛立たしくなっていた。

「リスト外の人間など、大して価値はないだろうが」


「彼女が、『元特進クラスの人間』であってもですか?」

「なに?!」

 意外な事実に、男性のトーンが変わった。

「しかも、転籍するまでは常に学年トップレベルの成績だった」

「ううむ……」

 男性は唸った。

 それに向かって、女性の声がそっと近付いてきた。

「餌、ですよ」

 一拍置いて、言葉を付け加える。

「稀代の発明家『平賀ゲンナイ』の末裔をおびき寄せる為のね」


 平賀、ゲンナイ?

 聞き慣れない言葉に、秋希の思考は一瞬ストップした。

 それが、夢現のバランスを微妙に変化させる。


「必ず復讐してみせる、憎き源……」

 男性の声質に、じわりと憎悪が増していくのを感じながら、秋希は再び深い闇へと落ちて行った。

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