episode 085
現在、旧小学校の1階は、昔の2階部分に相当している。
本来の入口は地中に沈んでいるため、二人は開いていた窓から中に潜入した。
途端に、外部からの光が遮断されたらしく、辺りが薄暗くなる。
冬流は、鞄から携帯用の照明灯を取り出して電源を入れた。
彼等の周囲数メートル四方が、再び明るさを取り戻していく。
「ところで、左」
愛用の木刀を構え、油断無く周囲を伺っていた夏純が口を開いた。
「お前は丸腰だけれど、大丈夫なのか?」
「ああ、違うよ」
冬流は、開いている右手を胸元で握り締めると、グッと前方に突き出した。
次の瞬間、指の隙間から長さ10センチ位のダーツ針が飛び出てくる。
「10メートル以内なら外さねえ」
「フン」
それが安心したという表現なのか、彼女はすたすたと非常階段の方へ歩いて行った。
地下1階となっている元1階は、全ての窓が土中に埋まっており、上の階以上に陰鬱さを醸し出していた。
「うーっ、気持ち悪い」
冬流が指し示す光を頼りに、牽制混じりで木刀を振っていた夏純は、ブツブツ呟いている。
「空気は湿っているし、ホントに何か出て来そうだ」
「……カラ元気は分かるが、ちょっと静かにしてくんない?」
「む、分かったよ」
冷静な冬流に嗜められて、少しムッときた彼女だったが、ここは彼の方が正論なので暫く黙っていた。
その間に、彼は手近なところから部屋を片っ端から開けて回り、不審なものが無いか探りを入れていく。
そして、十数分後。
最後に残ったのは、一番突き当たりに在った大部屋であった。




