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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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87/87

episode 086

 ドアの上部には、『視聴覚室』と記されている。

 そこは、冬流も授業で何度か訪れたことのある場所であった。


「真夜中のピアノ」

「やめんか」

 夏純の茶化し言葉を一喝した彼は、手元にあるダーツの感触を確かめながらドアノブに手を掛けた。


 半分ほど手前に引き、身体を滑り込ませる。


「あたっ!」

 間髪入れず中に入った夏純は、目の前で立ち止まっていた彼の背中に、しこたま鼻をぶつけていた。


「馬鹿、何で止まっているの……」

 彼女の悪態は、そこで止まった。

 冬流は、まるで金縛りにでもあったかのように、動きを止めていた。

 彼の視線は、真っ直ぐに前方を向いている。


 2人の目の前に広がっている光景。

 そこには、100人以上の『北野鍾子』が在った。


 そこからは、生命らしきものを感じることは出来ない。

 あるものは、机に突っ伏している。

 あるものは、壁にもたれて座っている。

 そのどれもが、物体としては存在しているのに、生命が集合している独特の雰囲気は皆無であった。


『汝、決して我に追いつけず』


 黒板一杯に記されたその文字は、冬流たちを嘲り笑っているように見えた。


 そこでようやく緊張の糸が切れたのか、夏純が発した叫び声が、大部屋全体を揺さ振ったのだった。

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