episode 082
「珍しいですね、坊ちゃんが作業現場に来るなんて」
大谷清治は、額の汗を手拭いで拭いながら、隣に座っている蔵敷に話し掛けた。
「ああ、今回はちょっとヤバそうなんでね」
蔵敷は、自ら引いた設計図と実際の寸法に生じた誤差を、丁寧に測っていた。
その真剣な表情を見た大谷は、これまで御曹司の道楽に付き合わされていると思っていた自身の認識を、改めることにした。
「その、源無君ってお友達」
「ん?」
「坊ちゃんにとって、かけがえのない親友なのですね」
「……よせやい」
軽く鼻をすすって、蔵敷が話を変える。
「それより大谷さん、『粒子ビーム砲』ってのは本当に開発出来るの?」
「うーん、理論的には可能なんですがね」
現場主任である大谷は、途端に難しそうな顔へと変わる。
「エネルギーをバカ食いしちまいます。並みのバッテリーでは一発も打てんでしょうな」
「うーん、それじゃあ何とか撃ったエネルギーを回収することは出来ないかなあ」
その時、大谷の瞳がギラリと光った。
「坊ちゃん、今なんと?」
「え、だからエネルギーの回収は出来ないかなと」
「それですよ!」
彼は、勢い良く力説した。
「エネルギーが無ければ、戻せば良い。成る程成る程、とても良き考えです」
ねじりハチマキを締め直した彼は、蔵敷に向き直る。
「久々に燃えて来ました。坊ちゃん、バックアップを宜しくお願いしますよ」
「おっ、了解!」
『伝説のクラフトマン』との呼び名も高い大谷の頼もしい姿を見て、蔵敷も自らに喝を入れて立ち上がった。




