episode 080
「だからって、今すぐ出動しなくてもいいじゃないか!」
蔵敷が、今にも飛び出そうとしている春都の身体を、必死になって食い止めていた。
「るせーッツ!それより粒子ビームガンはどうした?中性子砲は?」
「いま聞いたばかりで出来るか!第一、そんな物騒なモン作る気無かったわい!」
「じゃあ、今の装備で行く!」
頭に血がのぼった春都は、全く譲る気がない。
「拝島の野郎、秋希ちゃんに手を出したらただじゃおかねえ……おい、ナタリー」
『ハーイ』
「まずは学内をしらみ潰しにサーチだ!ソナー機能を全部こっちに回してくれ!」
『ソノ前ニ、ヒトツイイ?』
「ん、何だ?」
『コノ服、似合ッテルカナ?』
画面の中で、ナタリーはくるりと一回転した。
向日葵の刺繍が入った濃紺のワンピースが、ひらっと揺れている。
居を突かれた春都は、言葉を失った。
勢いを削がれている彼を見て、蔵敷はブハッと吹き出した。
「ケビンが見とれているくらいだ、似合ってるぜ、ナタリー」
『ン、アリガト』
サービスなのか、再び回転している彼女を見ていた春都は、ようやく冷静な自分を取り戻す事が出来た。
「……すまん」
「ここで焦ったって、しょうがない」
蔵敷が、優しくそう言った。
「何事にも、準備が一番大切だ。違うかケビン?」
「ああ」
「それに、アキちゃんのあの日にはまだ期間がある。おそらく人獣交換は行われていないだろう」
「……そうか」
微かに表情を緩めた春都を見て満足した蔵敷は、立ち上がって言った。
「今日は帰って休め、明日以降本格的に捜索に入る」
「蔵敷、どこに行くんだ?」
尋ねた春都に、振り返った彼はこう言った。
「これから、何故か第5工場で接待なんだよ」
さあて今夜は徹夜かなぁ、と言って出ていく彼の心意気を察して、春都は暫く胸が一杯になっていた。
(……ん?)
春都は、先ほどのやり取りの中で微妙に引っ掛かった内容を思い出した。
「おい蔵敷……お前、なぜ秋希ちゃんのあの日を知っているんだ?こら待て変態野郎ッ!!」




