episode 074
「話は分かった」
同刻、夏純の部屋で同じような話をしていた秋希は、彼女が頷くのを見ていた。
「今、次に狙われそうな生徒のリストを出してる。多分5人位まで絞り込めると思う」
「……そう」
秋希の表情には元気がない。
研究室の一件以降、彼女の身体はずっと、直感的に何かを感じ取っているように思えた。
「夏純ちゃん」
「ん?」
「今日、ここに泊まっていってもいい?」
「構わないけれど、なんで?」
不思議そうに聞いた夏純に、秋希は小さく笑って答えた。
「ちょっと、一人になりたくない気分なんだ。なんだか、嫌な予感がするのよ」
数時間後
消灯時間が過ぎた銀閣5号棟の廊下を、衣擦れの音をさせて歩く影があった。
足元は相当暗かったが、影の歩調はしっかりとしている。
目的地は、最初から決まっている様子だ。
突き当たりの手前の部屋で、影は足を止めた。
一息付いたあと、ゆっくりとドアノブに手を掛ける。
当然施錠されているはずだが、次の瞬間、ドアはスッと半分ほど開いた。
部屋の中に消えた影は、数秒後すぐに姿を現した。
一瞬、廊下の窓から差し込んだ月明かりに、鋭い瞳が映し出される。
「……」
そして、影はそのまま廊下の来た道をゆっくりと戻っていった。
日曜の静寂な朝は、女生徒の悲鳴によって破られる事となった。
銀閣の中央花壇に、少女の死体が一直線に突き刺さっている。
首から上は完全に地中に埋まっており、そのアンバランスさと残酷さに、駆けつけた野次馬達は固まってしまった。
もっとも奇妙だったのは、死体の胸元に残された紙片に書かれてある言葉だった。
『汝決して我に追いつけず』
警察を呼べなど周囲が騒然となっている中、冬流はその貼り紙をじっと見つめていた。
「……挑戦状かよ。だが、それが命取りとなるぜ」




