episode 075
「被害者は蜷川早紀、偏差値学内第2位」
「畜生、先手を打たれてしまった」
夏純が、机を叩いて悔しがった。
彼女は昨晩、次期被害者リストを作成し、今日から警戒行動にあたろうとしていたのだ。
早紀も当然、リスト内に入っていた。
「まあ落ち着け、夏純」
冬流は珍しく彼女を力づけていた。
ここは、学園みらい10番地にある文化会館の中央会議室。
別名『プレスステーション』と呼ばれる建物内において、男子新聞部と女子新聞部が協定を結んでいる中立区域である。
「俺は、敵が相当焦って来ていると見た」
中身の無くなった紙コップを潰して、彼が話を続ける。
「犯行は、ほぼ一週間ごとに行われている。最初は事件の概要が全く掴めない且つ証拠も消されていたが、今回は違う。書き置きを残したまでか、ご丁寧に死体もそのままだ」
冬流は、先程迄行われていた警察の現場検証を思い出していた。
「既に警察沙汰にもなっている、北野鍾子とは違って、これは紛れも無く殺人事件だと断定されるだろう」
「そしてこちらには、次回のターゲットと時期が分かっている」
手元の紙をひらひらさせて、夏純が言った。
「私達が真実に迫って来た事で、精神的に追い詰められた犯人が、今迄にない行動を取っているとしたら……」
「勝機は充分ある、って事だ」
(でも……)
夏純は思った。
彼女の脳裏に、今朝、現場を眺めながら言った秋希の言葉が蘇る。
『こんな表沙汰にするなんて……もう、何かが完成しているのかもしれない』
あのとき、秋希の白い横顔は恐怖で小さく戦慄いていた。
体調が悪いと言って、彼女はまだ夏純の部屋で寝込んでいる。




