episode 039
月曜日の午後イチ。
2年E組の教室は、突如数学教師が持ち込んだ小テストのお蔭で、戦々恐々としていた。
昼食後で眠気一杯の脳味噌に活を入れて、生徒達は必死の表情で答案用紙に向かっている。
得意分野なので、いち早く解答を済ませた春都は、意識下でナタリーを呼び出した。
―異常は?
『イマントコ無イ』
―そうか
週末から何か起こるであろうと臨戦態勢を整えていたのだが、何の変化も無く今日に至っていた。
やはり、俺の考え過ぎなのか。
『ソレハソウト、けびん』
―ん?
『例ノ戦闘服、でざいんハ決マッタノ?』
ナタリーにそう言われ、春都はああと思い出した。
イマージングによる変身は、特殊バリアードフェルトを変化させるのに大量の電気を要するため、約5分間が限界であった。
その中で、いかに機能的で洒落たコスチュームにするか、春都は自分で考えると言っていたのだ。
ここ数日、柚香の事や新たな敵の出現に思考を割かれていた彼は、その事を今の今まで全く失念していた。
―もう何でもいいよ、格好悪くなければ。
『珍シク消極的ダナア、ショウガナイ、ワタシガ素敵ナ服ヲでざいんシテアゲルワ』
俄然張り切り出した彼女の声が聞こえたとき、5時間目の終業を告げるチャイムが鳴った。




