episode 116
(やられた!!)
無駄な抵抗と承知しながら、ケビンは両腕で顔面をカバーした。
このまま蒸発してしまうのだと観念していたが、一向にプラズマの火球は発射されない。
腕を降ろすと、不死鳥自身も光線が出てこない自分の嘴を不思議そうに眺めている。
その様子を見たケビンは、ピンと来ていた。
(未完成な拝島の術から生み出されたので、奴はまだ不完全なのか。おそらく、自分自身が受けた攻撃にしか反応出来ないのだろう……)
「となると、通用するのは物理的な直接攻撃のみか」
『その通り!』
どこかで聞いた声に、振り向いたケビンは思わず顔を強張らせた。
先ほどの声の主……ライオンキング『ダーハ』が、数十頭の手下を連れて階段を上がってきている。
前に大怪物、後ろに百獣の王。
(くそっ、ヘビーだなあ)
何度考えても不利な状況には変わりない。
ケビンはとりあえず、倒せる可能性の高い方からと思い、ダーハに向き直った。
「いざ、勝負!」
『いや、一寸待て』
戦闘態勢に入ろうとした彼を、ダーハは窘めた。
『今は貴公と争っている時ではない、戦う相手はあいつだ』
いまいち骨組みの固まっていない不死鳥を指差して、ダーハは言った。
「あいつ……何故お前が不死鳥を?」
いまいち腑に落ちていないケビンの質問に、ライオンの王は引き締まった表情でこう言った。
『我等は、榊原燕鼠様の命により動いていた。正当継承者である柚香様を殺めた裏切り者に、どうして従う必要があるだろうか』
「そうか」
今更ながら、ケビンは柚香の持っていた人徳……もとい、獣徳に心を打たれていた。
「分かった、それでは皆で奴を倒そう!」
こうして、正義の発明家とライオン軍団の共同戦線が誕生した。
『いいか、直接喉笛に噛みつくんだ!中遠距や遠距離の攻撃は、全て跳ね返ってくると思え!』
ダーハの指示が飛ぶ中、若いライオン達が次々と不死鳥に襲い掛かる。
「すげえ……」
彼らの統制は、ケビンが思わず感心するほど完璧に取れていた。
ライオン群の直接攻撃を嫌った不死鳥は、大きく身体を揺り動かす。
振り落とされまいと必死で噛みつく彼らの口元から、怪鳥の不完全な組織が剥がれ落ち、体液がジクジクと流れ出て来た。
彼らに遅れまじと、ケビンも不死鳥の背中に取り付いた。
懐から取り出したショートソードで、ズブズブと身体を切り刻んでいく。
傍目には地道な攻撃だったが、それは確実に怪鳥の生命力を奪っていた。
(……いける!)
このまま押し切れると皆が確信した……その時、不死鳥の紅い瞳がくわっと開かれた。




