episode 115
暫くその場から動くことが出来なかった春都は、何かを引きずる様な音に反応し、面を上げた。
「……何、だと?!」
全身の血が、一気に逆流する。
視界の先では、瀕死の重症を負っていたはずの拝島が、ズルズルと身体を引き摺って、暗幕の掛かった大きな檻へと向かっていた。
何とか檻の縁に手が掛かった彼は、一気に幕を引きずり下ろすと、断末魔の悲鳴にも似た言葉を浴びせ掛けた。
「ヒャーハッハッハッハッハァ、ザコは死んだか。その女(秋希)の血は手に入らなかったが、代わりにこの身体を捧げることで、復活の儀式を行うとしよう!」
彼は、手にした短剣で自らの額をバクッと突き割り、そのまま息絶えた。
強烈な血飛沫と脳漿が、次々と檻の中へ注ぎ込まれる。
そのたびに、中にある黒い物体がドクンドクンと生命の脈を打っていくような振動が拡がっていった。
(……まずい!!)
春都は直感で、とんでもない危機が訪れることを感じた。
秋希の身体を離れた場所に避難させた彼は、物体に向けてスターバックを放つ。
エネルギー体が吸い込まれた瞬間、突如として辺りが強烈な光の球に包まれた。
光球をまともに喰らった春都は、一瞬にして五感を奪われるような感覚と共に、広場の一番端にまで吹き飛ばされて行った。
こみ上げる嘔吐感を必死で堪え、ようやく戻ってきた視力で前方を見た彼は……呆然とした。
そこに在ったのは、全長10メートル以上はある、大きな雄の孔雀であった。
更にその全身は、眩いばかりの黄金色に包まれている。
「不死鳥か……」
(これが、拝島の求めていた野望だったのだろうか?)
(彼は、一体何を求めていたのだろうか?)
春都が抱いた疑問に対する答えは、すぐ後に判明した。
『ゴゥオワアアアアアアアアアアアアアンンギュガァアアアアッツ!!!』
耳をつんざくような雄叫びを上げた怪鳥は、口元から巨大な質量を伴うプラズマの光線を吐いた。
それはもの凄い速度で谷間を突っ切り、西南東の一角に着弾する。
ドオオオオオオンッツという地鳴りと共に火焔が立ち上り、跡には直径200メートル強のクレーターが出来ていた。
「……やべえ」
復活の前には、必ず破壊がある。
(拝島の野郎、こいつを使って世界を掌握しようとしたんだな)
反射的に戦闘態勢をとった春都だが、まともに与しても到底敵わないと判断、冷静に状況分析を開始した。
先刻の強力なプラズマブラスターの第2弾は、未だ発射されていない。
おそらく、チャージに相当の時間が掛かるのであろう。
「つまり、今がチャンスなのか」
最後のバッテリーを携帯端末に装着した春都は、イマージングを行った。
ここで一気に片をつけるために、エアーハンドの連射体制に入る。
次の瞬間、信じられない事が起こった。
突然、不死鳥の全身から強烈な衝撃波が発射されたのだ。
「があッ!!」
まともにそれを浴びたケビンは、脳や内蔵にガツンと衝撃を受けたことで、一時的に思考がストップする。
次に意識が戻った時には、不死鳥の大きな嘴がこちらを向いていた。




